256 片頭痛
その次の日・・・
カーテンの隙間からぽつぽつと振り続ける雨が覗いている。
「ん……」
雨が気持ちいい音を奏でるのとは反対に、僕は、気持ち悪さと共に目覚めた。
・・・
朝食を作り、味噌汁にみそを入れて味加減を確認した。
「……まだ足りないかな」
僕は追加のみそをスプーン一杯分すくった。
頭痛い……重い、ズキズキする……。
まあ、雨降ってるし、片頭痛かな?
僕はかすかに聞こえる雨の音に耳を傾けた。
・・・
「おはようございますぅ……」
「ああ、おはよう。桜さん、白銀さん」
疲れていたけれど、無理に笑顔を作って返事をした。
僕は汁椀にお玉ですくった味噌汁を入れる。
「熱っ!」
味噌汁が手に垂れて熱さで汁椀を手放してしまい、味噌汁がすべてこぼれてしまった。
「あ……」
「大丈夫ですか? 手伝います!」
「ありがとう、桜さん」
・・・
「桜さん、もうご飯だから、兄さん呼んできて」
「はーい!」
そう言って桜さんは階段を駆け上がる。
とたとたとたとた、と軽い足音が響く。その軽い足音が、今日はいつも以上に大きく聞こえた。
「おはよー……」
「早く、早くしてください! 六時四十分ですよ?」
「桜さんは今日も元気いっぱいだぁ……」
そうして、少し眠そうな兄さんも降りてきた。
「いただきまs――」
「いただきまーす!!」
兄さんの声に遮って、桜さんが食べ始める。
「ちょっ、桜さんついてるよ?」
「え?」
「逆だよ? 右じゃなくて、左についてる」
「あ、ホントだ! えへへ~」
そう言って二人は微笑んだ。
僕はと言うと、あまり食欲がなかったから数口食べて席を立った。
椅子から立ち上がった時、桜さんと兄さんが味噌汁を飲んだ。
「っ、しょっぱ! どうしたの陸、味噌入れすぎだよ?」
「辛いですぅ~。あ、あと舌火傷しました」
兄さんが僕を心配そうに見てきた。桜さんはガタッと席を立って水で舌を冷やすために台所に駆けて行った。
「そう? ちょうどいいと思うけど……」
兄さんが心配そうに何かを言っているが、全く頭に入らなかった。
あー、頭痛い。でも、兄さんの話ちゃんと聞かないと。
聞かない……と……――
…………………………………………………………………………………………………………………。
「陸!?」
気づけば視点が揺れていて、下がって行った。
手に何かが当たっている感覚があるから、きっと壁に手をついて座り込んでしまったんだ。
ぼやけた視界の中に移ったのは、駆け寄ってくる兄さんと、ようやく事態に気づいた桜さんが台所の台から降りたところだった。
ナ「俺さ、うらやましいって思った」
うらやましい?
作「どうしたの? 人生相談乗るよ?」
ナ「風邪ひいたら看病してくれるの、うらやましいよ」
いやナレーターさんにはちゃんと専属医師が付いてるでしょ。
ナ「だけどぉ……。家族! 家族に看病してほしいの!」
白「なんかダメなの? お医者様の方が確実じゃん」
ナ「ただの風邪だよ!?」
………………でも、ナレーターさんにとってはその専属医師も親友(?)なんだし、家族みたいなもんじゃないの?
ナ「……………その通りです」




