248 焔狐さん、億が一とは?
焔狐(ほむらこ、と書かなきゃ出て来ないのだるい)
「……あんたら、なんか、呪われてるッスね」
はぁ?
僕は思わずそう思ってしまった。
あんだけ溜めておいて『呪われてる』? 期待してた分裏切られた気分。
男性は桜井さんに目線を動かし、「あんたは」と口を開いた。
「なんだか、代々続く一族の呪い……祟り? 的な感じがします。そしてそっちの……陸さん、あんたはなんだか……大量の怨霊が……前世で大量殺人でもしたんスか? まあ前世なんてあるわけないけど」
なんだ? 詐欺師か? そうやってお金をだまし取る戦法か?
僕は男性を警戒し、睨んだが、桜井さんは心当たりがあるとでも言うように、目をそらした。
その場に気まずい空気が流れ始めたその時、男性の後ろからにゅっと、しなやかで細い女性の腕が伸びてきた。
「「!?」」
僕と桜井さんは彼の後ろの腕に驚き、珍しく桜井さんの無表情の仮面がはがれた!
男性は後ろの腕に気づかず、頭に疑問符を浮かべている。
すると、その腕は男性の頭を思い切り殴った。
――ゴン!
大きな音が聞こえてきた。
男性はその場にしゃがみこみ、頭を押さえた。
「~~~~~!」
男性の頭もいたそうだが、男性を殴った腕も痛そうだった。
「こら霖真! 今までどこ行ってたのよ何時間探したと思ってるの!?」
「っつ~~~~! いってえな姉貴! 殴んじゃねえよ!」
僕と桜井さんは混乱してその場に立ち尽くすしかできなかった。
「今は天照家の方がウチにお祓いに来ているのよ!? 我が斎宮家の中であんたが一番霊力が高いんだから、あんたがいなきゃダメなのにどこ行ってたの!?」
「この森林公園に来てたんだよ! アホ! それになんで俺がやんなきゃならねんだ姉貴がやりゃいいだろ!?」
「アホとは何ようちの神社を継ぐのはあんたなんだからあんたがやらなきゃいけないに決まってるでしょ!?」
「姉貴が継ぎゃいいだろ!? 俺は上京して大手企業に勤めるんだ今の成績なら問題ねー!」
「正確に問題大ありなのよバカ!」
部外者は姉弟げんかに口を出すべきではない。わかってはいるが……が、このまま見ていても状況は変わらない。迷子のまま。
「あの……」
そう声をかけると、女性はハッとしたようにこちらを見て、「あ、ああごめん遊ばせ? おほほほほ」と言った。
「あの……僕たち迷子なんですけど……」
「白鳳中高の人たちね。なら、ここに来る途中にあっちの角を右に曲がって、四つ目の信号であなたと同じ服を着た人たちを見たわ」
「あ、ありがとうございます!」
僕は女性に頭を下げた。
「え、っと、お名前は……?」
僕は男性に聞いた。
こんだけ図々しいんだ。もう一度会ったときに忘れないように覚えておこう。
「縁……。焔狐縁です」
その名前を聞いた瞬間、ズキ……と頭が痛んだ。
縁さんの隣に立つ女性が縁さんの頭を思い切り殴った。
「あんたの名前は斎宮霖真だろうが! 何どさくさに紛れてゲームの登録名教えてんの!?」
「う……万が一にも覚えていてくれてるかなと思って!」
「は!? この学生とは初対面ですけど!?」
「でも……万が一……いや、億が一にも本人かもしれないじゃん! 約束したんだよあの人と!」
「夢の中の架空の彼女とでも約束したんですか!?」
そんな会話の後、その姉弟は去って行った。
私昨日の夜考えたんだけどさ?(キリッ)
ナ「うわっ、また始まったよキキのダル語り」
作「昨日の夜ってことは、パパイヤの後?」(諦め)
そう。それでね? 私ぬいぐるみ四つ持ってるんだけど、その名前が独特なの。
白「自分で名付けといて?」
うん。エビフライの人形の名前が『バタフライ』、白と黒の子猫のぬいぐるみは『黒田』、ピンクの熊は『唐辛子』、青緑の兎は『青梗菜』。
ナ「バタフライ、クロダ、トウガラシ、チンゲンサイィ……?」
作「ヤバイナレーターさんの言語能力が急激に低下している!」




