247 考えが読みずらい人が二人に増えた……だと!?
「で、この図々しい大学生どうする?」
「そうですね……まあ、先輩の好きにしてください」
「じゃあ煮ようか」
「うーん……それは、ダメではないかと」
僕が腕をまくると、桜井さんに無表情で止められた。
さっきから全然表情かわらないから意地でも変えようと思ってボケてるけど、全然変わらないなぁ……。
じゃあ普通に起こすよ。そうつぶやいて男性に近づき、彼の体を軽くたたいた。
「起きてくださーい」
「んん……? あとい……ん」
「同じ手は通用しないので起きてください!」
耳元で叫ぶと、男性は飛び起きた。
すると、少し後ろでこちらの様子を見ていた桜井さんが言った。
「あなた五日間も寝続けられるんですか?」
その言葉に、男性は頭を掻きながら答えた。
「あー、さっきの『い……ん』が『いつかかん』だったことバレちゃったんっすね……」
そう言って、男性は眠そうな顔で笑った。
男性は一度真っ黒い雲に覆われた空を見て、「んーぁー……ッス……」と考えてから、
「じゃ、三度寝しまース」
「待て待て待て待て」
もう一度ベンチに横たわろうとする男性を、僕は急いで止める。
「三度寝とは???」
「おわっ、圧すげぇ。分かんねぇの? 白鳳の学生なのに? つまり、さっきのが二度寝だったってことッス」
そういう意味じゃ……。
もう呆れしか浮かんでこない。図々しい超えてクズの域に達してない? 言いたかないけど!
「んで? 何あんたら、迷子? いい年して?」
決めつけるなよ、と言いたいところだが、その通りなので僕と桜井さんは黙る。
男性はマジか、とでも言うようにジト目でこちらを見てきてから、ダルそうに立ち上がった。
「ついて来いよ、道は大体覚えてる」
大体かぁ、心配だなあ。
そう思いつつも笑顔を保つと、男性は僕の考えにに気づいたのか、
「まあ……地元だし、道は完全に覚えてる……ッスから」
と言い直した。
僕は桜井さんに向き直り、桜井さんに聞いた。
「この人でよさそう?」
「え? ええ、まあ……」
桜井さんは公園の水道で顔を洗う男性を見ながらそう言った。
僕は顔を洗う男性の後ろから話しかける。
「あの……僕は、西村、陸です。白鳳中高三年の――」
「妖、媿野家のお子さんっすね。陸さんでしょ? あんたは最近、良くも悪くも情報が手に入れやすくなったんで、知ってるッス。驚きました、あんたに起こされた時には」
図星を突かれて思わず一歩下がったが、驚いたそぶりは見られなかったが? という考えがすぐに来て混乱を隠せない。
「ぼくは二年の桜井捌夢です。道案内、よろしくお願いします」
「あー、桜井……桜井さんね」
そう言って男性はポケットからハンカチを出し、顔を拭いた。
男性は顔を洗い終わってこちらを見た瞬間、「うわっ」とつぶやいて後ずさった。
「……? どうしたんですか?」
「いや……」
男性は数秒目線を泳がせた後、神妙な顔をして口を開いた。
そういえば、私昨日の夕飯の時考えたんだけどさ?
ナ「どしたん? 急に」
『パパイヤ』って、『お父さんが嫌いな食べ物』っていうなぞなぞで有名じゃん?
作「うん、そうだね」
白「それがどうしたの?」
その『パパイヤ』って、どこからがお父さん判定なんだろう。子供が生まれた瞬間からなのか、それとも母の体に子が宿った瞬間なのか……。
ナ「なんでそんなどうでもいいこと考えてんの!!?」
いやどうでもよくはないでしょ。