244 神谷先生って意地悪ですよね
「ヨー! このマイクもってみんなの前で三分間即興ラップヨー!」
僕は、戸惑いながらもマイクを持つ山本さんを見ながら絶対に三分黙らないようにしよう、と心に決めた。
ところで先生はその恰好なんですかーー!?
サングラスにハーフアップって、チャラいよ! ホントに学校の先生!?
そして、山本さんのラップが、バスの中に響き渡る。
『えー……その……山本紅夜です……。……はい……あの……三分黙ってたら……罰ゲームって……聞いてなくて……。……いや、聞いてたけど……忘れてて……。……で、今……ラップ……してます……はい……』
これは……ラップ……か? それともただの語りか?
『本は好きです……。人は……まあ……苦手です……。喋るの……得意じゃないです……。でも……黙ってたら……罰ゲームって……。……なんでラップなんすか……? ……罰、重くないすか……?』
僕は若干顔を赤くしながら言う山本さんを見ながらその考えに同感する。
『えーと……好きなジャンルは……ミステリー……。でも今の状況が……一番ミステリー…… 俺がマイク持ってるのが……サスペンス……。……誰か……ページめくってくれ……』
(間)
『……あと何秒ですか……?』
いやラップしろよ!
心の中でそう突っ込みながら、平然とした顔で隣の神谷先生に聞く山本さんを見ていた。
『……まだ一分? ……うそでしょ……。あと二分あるの? ……じゃあ……えっと……。俺は……紅夜……』
さっきも聞きました。
『無口で……クール……? で……。でも今……汗だくで……。……ページの中に……帰りたい……』
(そしてもう一度、間)
『……あの……ラップって……韻踏むんですよね……?』
先生に聞いてないで韻踏努力をしろよ?
『……踏めてます? 俺……。……踏んでないですよね……。……でも……踏まれてるの俺ですよね……。罰ゲームに……』
(本日三回目の間)
『……あと30秒……? ……よし……じゃあ最後に……。俺は……山本紅夜……』
それしか言うことないのか?
『本の中では……饒舌です……。でも現実では……沈黙の王です……。……罰ゲーム……終わったら……。……もう黙っていいですか……?』
(終了)
うん……これはこれで……面白かった……よ?
山本さんはマイクをそっと先生に預けた。
うつむいていたから顔は見えないけど、彼の耳は真っ赤だった。
でも先生はそんな山本さんの気持ちなんか知ったこっちゃないという変わらない笑顔でマイクを受け取っていた。
バスに響くまだらな拍手が、彼に追い打ちをかけた。
ヨー、ヨー、わたしの名前は狐塚キキ! 義務教育真っ最中! 小説創作ドハマり中イェイ! 静か、に沼っていけこの世界の重き社会の闇! イェイ!
ナ「地味に居ん踏めてそうなのムカツクね」
作「共感求めないでね」
ナレちゃん・作ちゃん・白銀て、白だけ仲間外れ感、満載!
白「あ、今気づいたけど悲しい」
ナレーターさん性癖ヤバいし? 作ちゃんまん、名前気に、入ってくんないし? なんなの? このメンツ。マジ最悪ヘイ!
ナ「お前が一番性格悪いだろ!」