242 紅夜流告白の断り方、永来、一番勇気を出した瞬間
紅夜・・・『告白されたけど断った話。どう断った? どう思った?』
「難しい……。というか、俺は告白されたことなんて……」
紅夜がカードを見てそうつぶやいた瞬間、漣が紅夜の肩にポンッと手を置いて言った。
「そうか、お前には告白された自覚がないのか。ほら、あれだよ。あの……増田さんの告白を断った時の……」
「え? 鈴が言うならそうだろうけど……あれ告白だったっけ? 好きな犬の種類の話じゃないの?」
はぁー、と、その場にため息が響き渡った。
彼が増田さんに告白されたのは、彼が一人で放課後の誰もいない図書室、夕日を浴びながら本を読んでいた時……。
「紅夜くんって、なんだか……ゴールデンレトリバーみたいだよね。静かで優しくて、でも時々見せる表情がすごくあったかくて……私、そんな紅夜くんが好き。ずっとそばにいたいって思ってる」
彼女の表情は、夕日に照らされもっと赤く染まっていた。
……が、本から顔をあげた紅夜はそれに気づかず、シンプルに驚きの表情を見せた後、フッと笑った。
「……ゴールデンレトリバーか。ああ、わかる。あの穏やかな目と忠誠心、いいよね。俺も好きだよ。犬の話なら、柴犬も捨てがたいけど」
そう言って彼はまた、読んでいた本へと目線を落とした。
そして……
(……え? 今の、告白じゃ……? 犬の話で流された……? いや、待て、紅夜、お前それはさすがに……。天然すぎるだろ)
⇧たまたま席を外し、本を探していた鈴木漣。
「いいわねぇ、こういう告白と……さっきの紅夜くんの笑い方! かんっぺきな受け顔だわ……!」(小声)
⇧BLの匂いを感知し駆けつけてきた馬場輪音。
そして漣は驚きで本を頬り投げ、ひっくり返って机の角で頭を打った。
「……俺は増田さんがかわいそうで、もっとはっきり言えよってアドバイスしたけど、二度目をいう勇気は出なかったみたいだった。そして、二度と忘れないよ。あの机の角に頭を打つ痛さは」
そう言って漣は、窓の外を眺めてフッと小さく笑った。
永来・・・『今までで一番“勇気を出した瞬間”は?』
「……ああ、これは……入学式ですかね?」
迷わずそう言った永来に、赤鞠澪は口を開いた。
「どうして? 馬場君」
「いや、もしかしたら受かっていたのは俺の夢で、本当は受かってないかもしれないっていう恐怖心があって……。それで、入学式の会場に入るのに勇気がいりましたよ」
その言葉に、その場の全員が納得したように見えたが、桜井捌夢だけは、「……そうなんですね」と平坦に返し、正確な感情は読み取れなかった。
ナ「天然すぎる……」
そしてヤムくんは謎すぎる……?
作「馬場さんのBLセンサー働きすぎ! 図書室に鈴木さんの悲鳴が響き渡った後、増田さんはどうしたんだろう」
白「乙女ゲーム風に言うと、橘さんは怖がりで弟感ある幼馴染として、大和さんは熱血、学園で出会った王子の友達、山本さんは頭が良くて本好き、魔法が得意な王子の側近、鈴木さんは王子様って感じかな」
攻略対象だったらだけど……。じゃあヒロインは誰?
白「……馬場さん?」
本末転倒じゃん?