241 鈴木漣の恋、大和昴の即興CМ
鈴木さんは、お題のカードを引いた後、終わった……とでも言うように天を仰いだ。
いつものクールさはどこに行ったのかと一瞬驚いた。
漣・・・お題、『初恋の人の名前と、好きになった理由を語って』
そのカードを覗き込んだ昴は、言いたくない理由でもあるのか? と聞いた。
「いえ……その……」
「じゃあまず、初恋の人の名前は?」
昴に聞かれ、漣は顔を真っ赤にしながら小声で答えた。
「……輪音」
その言葉を聞いた紅夜は目を丸くし、志月と昴はやっぱりか、と頷いた。だが、何も知らない二年ズはただただ混乱した。永来は特にだ。
紅夜は恋愛面に関しては鈍感だった。そのせいで、今までのどんな女子からの猛烈なアピールも無垢な瞳でスルーし、何人もの女子を泣かせてきたことか……。
昴はニヤニヤとしながら、
「へぇ~、ちなみに、その恋は今も健在ですか?」
と聞いたが、漣が「カードにないことは教えません」とそっぽを向いた。
そしてごほん、と一回、咳ばらいをした。
「次は好きになった理由ですね。それは……その……いつの間にか。………………」
漣は真っ赤な顔で答えたが、その後に悲しげな表情になり、ぽつりとつぶやいた。
「……でも、少なくとも……………顔で好きになったのではありません」
(今まで、輪音に告白したいと恋愛相談して来た男子は、顔で好きになった人が多かった)
と、漣は思った。
昴・・・『“青春を取り戻す目薬”の使い方と注意点を説明して』
「さあ! 今回の品は『青春を取り戻す薬』! これは名前の通り失った青春を取り戻せる薬! このテレビを見ているあなたも、もう一度あの青春の日々を過ごしたいと思いませんか? 思いますよねぇ、永来アナウンサー」
昴はいきなり永来に話を振り、理解した永来も話を合わせて「はい!」と返事をした。
「今青春真っただ中だという事は置いといて……」という声が聞こえた気がしたが、全員がスルーした。
「でも薬という事は副作用などもあるのでしょう?」
「そうですねぇ……。メリットは周りにいる同年代と青春時代の時のように仲良く話せるようになるかもしれないという点ですが、デメリットは『取り戻す』というだけで、漫画のような青春を送れるわけではない事ですね(笑)青春時代風呂に入らず不潔だった人は匂っていなくとも周りに避けられるという点ですかね!」
「それはそれは……。まあ、俺は欲しいとは思いませんね(笑)」
「そうとは知らずにキラキラの青春を過ごそうとした陰キャは何万といます。ですので、それもご了承の上、お使いください」
「はい! 分かりました! でも、それだけすごい薬という事は、お高いのでしょう?」
「そうですねえ、本来なら六千円の所を、今から一時間以内であれば、ななななんと! 三千二百円!」
「それはお得ですねえ」
「今買わなきゃ損! 損損損ですよぉ!」
そうして、昴の番は終わった。
ナ「永来君すげぇ……」
ノリがいいね。鈴木さんの恋バナについては何もないの?
白「まあ……だろうなって感じだし?」
作「そうだね……まあ、想定の範囲内って感じだしぃ?」
うーん……。まあ、鈴木さんが馬場さんに告白すれば、アハハって笑って、「今まで通りお友達で」ってなるんじゃない? ……今はね。
ナ「え!? 今はって何!?」
ナレーターさん、触れてはいけないものに触れたね?
ナ「なに!? 怖い!!」