230 七番の心配事
「それでそれで? 七番様の悩みは何ですか?」
桜子が身を乗り出してワクワクしながら彩華に聞いた。
彩華(七番様)は一度目を伏せ、語り出した。
俺の悩みは、さっきの五番……瑞祥の事なんだが……。
まずその前に、桜、なぜ七不思議がそこの白銀や、彩華や清華のように、自分の力の一部を使って……私益獣? を作るかわかるか?
「――なの」
七番こと彩華に聞かれた桜子は、首を横に振った。
「いいえ? 分かりません。でも、たまに話し相手になってくれますし……あ、私は何度か、白銀が彩華さんみたいに喋れたらいいのになと思ったことはあります」
まさにそうだ。七不思議というのは基本孤独だ。まして、小学校ならともかくレベルが高めの中高一貫校となれば、いたずら半分で呼び出す奴もいないだろう。
だから、七不思議は孤独になり孤独が引き起こすデメリットで精神に異常をきたし、人間を襲うという例も昔は多かった。
そこで、私益獣を作ると、状況は変わる。
孤独になるケースが少なくなるため、人間を襲わない。狂わない。祓い屋に祓われない。そんなメリットがある。
「――なの」
その説明を聞いた鏡は、なるほどとうなずいた。
「そうなんですね。それはいいと思います。でも、それのどこが悩み何ですか?」
「確かに。それが何でさっきの瑞祥さんにつながるの?」
筮も疑問を口にした。
それが、通常、人型怪異一匹につき、獣は一体だ。
(匹……)
(人型って言ってるのに、単位は『匹』なんだ……)
獣が多ければ多いほど、より孤立を深めていると言えるだろう。
そこで、筮がバッと手を挙げた。
七番は「挙手制じゃないんだが?」と心の中でつぶやいた。
「なら、先ほどの話を聞くに七番さんの私益獣は彩華さんと清華? さんの二人。……孤独なんですね」
筮が彩華越しの七番に哀れみの目を向けた。
つられて、凪と鏡も。桜子だけは「考えたことなかったです!」と驚きの声をあげた。
……ゴホン。俺の話はしていない。俺の心配事は五番だ。
桜、五番の私益獣の名前を知ってる限り言ってみろ。
「――だそうなの」
「ええ!? えーっと、私の知ってる限りでは……」
急に話を振られた桜子は、指を折って数えだした。
「えーっと、まずはさっきのアルバトロスさん、ミラージュさん、ホープさん、フェザーさんシャドウさんノックスさん……」
指を折りながら数える桜子は、思い出すのに必死で気づいていないが、他のメンバーは気づいた。
瑞祥の私益獣が、圧倒的に多いという事を。
「クロウ、レイヴン、オルフェウス……って、え? 五番の獣の数だけ……」
桜子は彩華の方を見た。彩華は七番の動きを真似するようにうなずいた。
五番の私益獣はまだいる。本人曰く、街の中にもまだいるらしい。どうやら、カモメなども。
……学校に出る事すらできない桜子すら白銀一匹なのに、学校に出れる五番が、数えられないほどの獣を使役している。それに加え、なんだか最近、獣の召喚頻度が上がってきている。
――それが俺の心配事だ。
七番は、自分の異世界でひとり呟いた。それは、彩華にも伝わっていないひとりごと。
「私益獣の数を知るのは、五番本人、ただ一人だけ――」
白「はあ……最初っから不穏な空気だったけど、何とか終わってよかったよ。聞いてるこっちまで背筋が伸びた」
ナ「白銀、キキがいない今のうちに、俺に杠のこと教えてくれないか?」
白「え? いやそんな事言われても――」
ナ「お願い! 誰にも言わないから! せめて特技だけ! あっ、あと得意なこと……」
白「う……ごめんなさい。私には好きな人がいるので」
ナ「告白してるわけじゃないからね!?」
白「いやだとしてもそんなことしたら――」
ダメに決まってんだろうがーーーい!!!
ナ「ゔっ! 猛烈な開幕飛び膝蹴りぃ!」
作「こんな事だろうと思ったよ。ナレーターさん、ナンパはほどほどに」
ナレーターさんにお仕置きしたいのに尺が足りない! もーナレーターさん!? これ以上詮索進めるんだったら今度の後書きでナレちゃんの恋愛事情語るからね!?
ナ「それはやめて!」
作「次回、231話、嘉瑞の案内による帰宅」




