228 長男・嘉瑞 次男・瑞祥
「さて! 次はあなたよハトさん! ……ではなく五番さん! 聞いてるんでしょ?」
筮は、彩華の肩にとまるアルバトロスを指差した。
すると、通訳の彩華が話し出した。
「『いや俺に何せえっちゅうんじゃ。恋バナは基本的に女子がやるもんちゃうの?』と言いたいそうなの」
「いいえそれは偏見です! さあ、お名前、年齢、初恋の、相手をどうぞ!」
すると、凪が手をパンと打って言った。
「いいわね! 私も五番さんの初恋も……名前も気になるわ」
「確かに。ずっと五番さんと呼ぶのもなんだしね」
鏡までもが五番に期待の目を向け、五番はついに話し出した。
「『……ど、どうしても話さなあかんの? う、初恋? 初恋はなぁ……」
「ちょっと待ってください? 名前を言っていませんよ? それに年齢も」
「『う! さすがに押し切れんかったか……。ここでは言いたなかったんやけど……」
皆はワクワクしながら五番の話を聞いていた。
・・・
「え? 俺の名前?」
都市伝説の男性は佐藤に聞き返した。
佐藤は頷く。
「はい。名前を知らせていただかないと呼びずらいので」
佐藤は男性の横を歩きながら冷たく言った。
「うーん、怪異ってあんまり自分の名前覚えてるもんじゃないんだよね……」
「何の話ですか? あなたの名前ですよ?」
「……兆喰だよ」
「嘘ですね。それは都市伝説時の名でしょう。本名は?」
「うっ……何でそこまでして知りたいのさ!」
男性は佐藤に聞いた。だが佐藤の表情は変わらなかった。
「別に……何かあるかなと思いまして。暇つぶしですよ。最近暇なので」
「ただの暇つぶしかよ……」
男性は呆れたようにため息をついてから、自分の名前を言った。
「……俺の名前は”鵺野”。鵺野嘉瑞! ……これで満足?」
・・・
「『あの……ほんまに、名前言いたないんやけど』」
「言え!」
「『場所が悪いねん! ――まあそんな睨まんといてや。言う言う! 言うから! もう睨まんといて!』やれ筮さん! もっと睨め……なの! の? お前は敵なんか見方なんかはっきりせい? 命令するんじゃないの!」
「ま、まあ、いったん落ち着きましょうよ。ね?」
五番と彩華と筮の間で喧嘩が起きそうになり、急いで桜子が止めに入る。
「『はぁ……しゃーないなあ。俺の名前は瑞祥。鵺野瑞祥や』」
・・・
嘉瑞と瑞祥は続けた。
「世界的に活躍していたマジシャンと――」
「『その幼馴染の間に生まれた双子の息子の――」
「長男です」
「次男や』」
鏡は少し驚いた。
なぜなら、世界的マジシャン鵺野の二人の息子はすでにいないから。
長男は三年前に行方不明になり、その三か月後、山の中で死体となって発見された。
次男も七年ほど前に行方不明になり、死体も見つかっていない状態だった。しかし、次男もすでに死んでいた。
「えーっと、なんで名前を言いたくなかったんですか?」
凪は小さく手を挙げて聞いた。
「『ここは兄貴の死んだ山やから、もしかしたら兄貴の霊が居るんちゃうか思たんや。俺が生きとるころだけで計算しても半年は会ってないから、顔合わせずろうて……すまんのう』」
瑞祥はケラケラと笑った。
・・・
一方その頃、嘉瑞は佐藤に問われていた。
「なぜ名前を言うのを渋ったんですか?」
「いやあ、さっき弟の瑞祥が親父にもろうとったハト……なんやっけ? アルバトロス? が見えたような気ぃして……。全然あってへんさかい、顔合わせずらいんだやんなぁ……」
嘉瑞は頭の後ろに手をやってアハハと苦笑いした。
方言が出てきているのは、隠す必要がないと思ったからか?
「陸」
僕は佐藤に急に名前を呼ばれて顔をあげた。
「……何?」
「もうすぐ森の外につくらしいから」
「あ、うん……わかった」
そう言って僕は笑った。正直、ずっとそこらへんに虫がいて気持ち悪かったんだよねぇ……。
227話で話した後書きのネタ、思い出しました。
ナ「すげえ。思い出せるなんて。一生思い出せないパターンだろ」
でも思い出したんです。あれは、数年前の出来事……。
作「ふんふん」
白「それで?」
まだ何も言ってないよ? タイピングのできない弟が、パソコンを使って適当に書いていました。そして私は姉と一緒に弟が書いた適当で日本語として成立していない文を読んでいると……すると、そこに、ある人名が書かれていました。
ナ「なにその偶然」
ご丁寧に名字と名前が一緒に。男性の名前で、「〇〇〇〇〇 △△△って誰やねん」って姉と笑いながらその漢字をコピペし調べてみると……なんとその当時推していた歌い手のメンバーのリーダーだったんです! なんという偶然!
白「推しって何? いやいやそうじゃないね。その姉が仕組んだんじゃなくて?」
いいえ? 弟の文には漢字に変換された場所もあったので、たまたまそうなったんだと思います。それに、姉もあの場で初めてその名前を知ったそうなので。
作「読者の皆さんはこの偶然をどうとらえる? 運命か、偶然か、必然か……? よかったらコメントに書いてみて!」