226 凪の初恋、七番と白銀が抱いた疑問
「では早速。凪さん、お名前、年齢からどうぞ」
筮が凪に微笑みかける。
凪は少し困りつつも、言われたことをちゃんとやる。
「……媿野凪、32です」
「なるほど。では凪さん、本命の恋バナをどうぞ」
「えー……」
凪は苦笑いを浮かべ、周りにSOSを目で訴えたが、周りに見方はおらず、唯一の見方の鏡も彩華に『今逃げても簡単にとらえることができるんだぞ』と言わんばかりの目で見られていて動けない。
そうしてる間にも筮が「早く」と急かし、凪は諦めのため息をついた。
「初恋……初恋は、小、四の前半、です……恥ずかしい~」
凪は両手で顔を覆った。
しかし、筮はそんな凪を無視し鏡に聞いた。
「凪さんの夫の鏡さん、彼女の初恋に心当たりは?」
「え!? あ、ない……です。その時俺は小六……だったので」
「ほぉ? 小六……あ、受験で忙しかったんですね?」
急に話を振られた鏡は驚いていたが、戸惑いながら答えた。
筮はそれだけでは飽き足りず、凪にもう一度聞いた。
「それで? 相手は?」
「う、私が通いたいと頼んだ、個人でやってるピアノ教室の先生の、息子さんです……。お願いします、もう勘弁してください……!」
「ダメ。それで? 名前は?」
「朝比奈悠翔くん……!」
「悠翔! それで? どんな性格だったんですか? 好きになった動機は?」
容赦なく質問攻めにする筮に鏡は(取り調べか……?)と苦笑いした。
「動機? 動機は多分……私の事、『お姫様みたいだね』って言ってくれたこと……です! ひゃあぁぁぁ」
「なるほど、それで?」
「真面目に聞かないで! ……でも、すぐにレッスンどころじゃなくなっちゃって……」
「え? なんで?」
「………………小四くらいから、受験勉強をし始めなきゃいけないんですよ。凪の場合は、中盤から後半にかけて力を入れ始めてたよ。まあでも俺は、受験勉強二ヶ月しかしてなくても何とかなったんですけどね」
口を挟んだ鏡の『二か月しか勉強してない』発言に、白銀と、彩華越しになんとなく聞いていた七番様は違和感を覚えた。
(二ヶ月……? 答える前の妙は沈黙はなぜ起きた? 他の人は答えを待っていたからだろうけど、なぜ彼自ら発言したの? 事実だったら、凪の口からでもスッと聞けるはずなのに)
(掟に厳しい媿野家で、小四からではなく小六の終わりの二ヶ月しかやらなかった……それはおかしくないか?)
しかし、蝶は喋れず、彩華は聞くのに夢中で七番の疑問に気づかない。
よって、白銀も、七番も、自分が抱いた違和感を、口に出すことはできなかった。
作「彩華ちゃんも女子ですから、恋バナに興味はあります」
ですが、彩華を作ったのは七番様(男)なのでキャーキャー騒いだりしません。
ナ「俺は恋バナとか興味ないよ?」
白「私はあるけど、話す相手いないから……」
………………。
作、ナ「………………」
白「……何?」
かわいそうに。
作「うう……」
ナ「俺がいくらでも話し相手になってあげるよ」
白「いや大丈夫だけど!? でもありがと!」(キレ気味)
いや白銀、変態はやめといたほうがいいよ。
ナ「いや白銀、こんな奴の言葉聞く必要ないからね!!?」