224 Oh God! Please grant me a compass!
「撒かれた……」
「やっぱ強いわ、水上さん」
僕と佐藤は水上さんの後を追ってキャンプ場を後にしたのはいいものの、あの人は意外に足が速くてすぐに撒かれてしまった。
「つまり、迷子」
天を仰いで言う。
いったい、ここはどこですか?
というか水上さん、佐藤への信頼厚いな。
あんなにすごい人に信頼されている佐藤なら――と佐藤を見ると、完全に諦めモードだった。
「………………佐藤?」
「終わった……」
「え?」
僕が聞き返すと、佐藤は天に向かって叫んだ。
「Oh God! Please grant me a compass!」
(訳:おお神よ! 我に方位磁石をお恵み下され!)
・・・
「はぁ……いたいた。見つけましたよ」
一方、水上紀章は呆れていた。
キャンプ場の隣にある山に、鏡、凪、啓の三人が固まっていたからだ。
鏡はヘラリと笑う。
「やあ紀章、遅かったね。ところで、花って持ってない?」
「は、花……ですか? 申し訳ありません。すぐ買わせに……って、持ってきていなかったんですか」
紀章は崖のようになっている場所の下にいる三人のもとに飛び降りた。
冬場は雪があるため落ちただけでは死なないだろうが、深い新雪が落ちた物の体力を奪えば死ぬかもしれない。
冬にここで死ぬ可能性はもう一つある。
葉が落ち、細く、鋭い凶器のような枝だ。
ここに人は来ない。スキーのコースから大きく外れている。
そんな場所に、なぜ四人が固まっているかというと……。
「……もう、何年になりますか? 彼が、ここで死んでから」
「鏡くんと紀章が小六の時だから……23年ね」
紀章の問いに、凪が答える。
そして啓は、その彼が死んだという場所を無言で見つめていた。
彼は知っての通り中三だ。事故があった当時生きていない。
それでも彼は、ここにいなくちゃいけない。目をそらしてはいけない。
凪は鏡に聞いた。
「鏡くんは、悲しくないの? ――後悔とか、してない? そりゃ、『隠そう』とか言ったのは私だけど……」
鏡はしばらく黙った後、微笑んで答えた。
「そりゃ、惜しい人を亡くしたなとは思ってるけど……あの時の行動を、今は悔いてない」
裏を返せば、昔は悔いていた。
鏡の行動次第で、彼は今も生きていたかもしれないのだから。
「さて、ひとまず帰りましょうか。下に車がありますから。キャンプが終わって、本家に帰る前にもう一度来ましょう」
「うん」
「わかったわ」
鏡と凪はそう言って紀章の後ろをついて行った。
「啓さん? 戻りますよ?」
「あ、はい……」
啓は彼が死んだ場所を最後まで見つめながら、三人の後をついて行った。
ナレーターさん、英語、喋れる?
ナ「無理」
即答! まあ、時代を考えると白銀も無理だね。
白「そうだね。日本語ネイティブです」
作者も無理、そして私も無理。
作「いやそこは聞けよ! 私も無理って言いたいよ!」
でもここはファンタジーなので、『グーグル翻訳』使って英語をしゃべります。(しゃべらせます)
ナ「Next time, in episode 225, "By the way, Ayaka and Number Seven have gone close to Chitose, right?"(次回、二百二十五話『何なら彩華や七番様は千歳近くいってますよ?』)




