221 私は魔法使いですよ?
「うーん……」
鏡は自分が組み立てたテントを見て微妙な顔をした。
そこにあるのはちょっと風が吹いただけで壊れてしまいそうなテント。
「さすがにここでは眠れないな……」
「の?」
少し落ち込む鏡に、声をかけたのは彩華。
彩華は鏡が組み立てたテントを見て「の……」と鏡に哀れみの目を向けた後、テントに近づいた。
そして足をスッと上げ、テントの骨を思いっきり蹴った。
「フンッ!」
「そんなことしたら俺が組み立てた奴じゃなくたって壊れるよ!?」
※正論
もちろん彩華だってテントの組み立てなんてやったことないので、とりあえずそこら辺を歩いていた四歳児(桜子)を呼んだ。
「なんですか?」
「このテントを組み立ててほしいの」
「え? でも私、組み立てなんてしたことありませんよ? ねえちょちょさん……え、ちょちょさん?」
桜子は振り返って白銀が飛んでいた所を見たが、白銀はいなかった。
少しあたりを見渡すと、白銀はテントの骨の上に乗って鳩のアルバトロスと一緒に羽を休めていた。
「ちょっとちょちょさん!!」
「別に蝶が周りを飛んでいても組み立てるのに邪魔なだけなの。六番は現当主が組み立てたこのテントを崩すのを手伝ってほしいの」
「酷い! 頑張ってやったのに!」
鏡は仕方なく見学者席にまわった。
彼はブツブツと何か言っていたが、彩華の圧に負け、黙って見ていることにされた。
「当主の威厳は何処に……」
「六番、訳分からないこと言ってないで手伝うの」
「あ、はい!」
桜子はテントの組み立て方が書いてある紙を見て、「なーんだ、簡単じゃないですか」とつぶやいた。
「彩華さん、テントの組み立ては任せてください」
「の? 一人でできるの?」
「私の糸を使えばちょちょいのちょいです」
フンッと言って胸をドンとたたく桜子に彩華は「じゃあ任せるの」と返した。
桜子は両手を前に突き出して、深呼吸をし、指の先に力を込めた。
胸の内から湧き上がってくる力がある。それを、線のように細く伸ばす。
すると、視覚ではなく感覚で見える糸がテントの骨に張り、桜子が頭に叩き込んだテントの作り方通りに糸を動かすと、――ほら!
「あっという間にテントの出来上がりです!」
「糸を使ったせいでただならぬ妖気を感じるの……」
「ええ!?」
「悪霊がオアシスのごとく集まってきそう……」
「鏡さんまで!!」
彩華はただ単に結果を伝え、鏡は呆れ気味に感想を伝えた。
いじけて土をいじり始める桜子の頭を、五番の鳩、アルバトロスはくちばしで思いっきり突っついた。
「痛いですぅ……」
五番に対して言い返す気力もない桜子に、彩華は悪気無く注意した。
「六番、こんな人目のある所で力を使うんじゃないの。現にあそこの子供が……」
彩華が視線を向けた先にいる子供がこちらを指さし、大人に「ねえ、あれどーやって組み立てたの? まほー?」と聞いている。
「ご、ごめんしゃい……」
「そうなの。大体、魔法使いなんてどうせろくな奴いないの」
その言葉を偶然聞いた筮は、「ここに魔法使える人いるんですけど……」と恨み言のようにつぶやいた。
そしてその横で、笑顔の葵と光莉が無言の圧を出していた。
(魔法使い×3)
ナ「七不思議組、やっぱちょっとズレてるわ……」
でしょ? 私の自慢の子たちですよ?
白「私も?」
自慢の子! もちろん作者もね。
作「う? うん、ありがとう……?」
ナ「俺は? どうせ……」
ナレちゃんは……ねえ? 変態は、ちょっと……。
ナ「って言うと思ったよ! ワンパターンすぎるんだよバカが!」
なんだと? 何なら今ここの後書きコーナーにお前が執着してる『アイツ』を呼んでもいいんだぞ!?
ナ「やっぱ嘘ですごめんなさい」
作「パワハラ上司か?」
白「今一瞬キキにパワハラ上司の面影が……」