212 行ってきます――
もっと趣味に没頭したい(願望)
二話目!
いきなり現れた少年に戸惑い、言葉に迷う。
大きなリュックを背負っている少年はこちらの言葉をじっと待っている。
「――……ひっ、人違いです」
ちょっと怖いな……新手の詐欺?
そう思いつつそう返すと、少年に手を思い切り引っ張られる。
「いいから! 黙ってついて来て!」
「え!? いやちょっ、痛い!」
「父上の隠してることでも何でも教えてあげますから!」
その言葉を聞いて、僕は抵抗する事をやめた。
必死に腕を引っ張ってきた少年も固まり、数秒の沈黙が流れる。
その時、木の陰から桜さんの蝶が現れたことに、僕と少年は気づかなかった。
僕は少年の腕をそっと離し、玄関に戻って靴を履き替えた。
「………………」
――行ってきます――。
その時白銀が、
「ッ―――!!????」
と、声にならない悲鳴を上げてたのが見えた。
◆
…………そう言えばこの子、めちゃくちゃ重そうなリュック背負ってるけど、よく息切れずに走り続けられるな……。
僕の隣で走る少年は、息も切らさずにずっと走ってる。
真夏の太陽の下で水も飲まずに走り続けるのは危険だし、そろそろ休憩したいな……。
「はぁ、はぁ……ねえ、そろそろ休憩しない? 熱中症とか……危ないよ」
「う……そう、ですね。そこの森林公園で、少し休憩を取りましょう」
◆
「……はぁ、大丈夫か?」
突然、少年は背負っているリュックにそう語りかけた。
するとリュックが突然動き始める。
え、リュックに何かいる状態であんなに走って今全然息切れてないの? 怖い。
と、僕は中にいる生物より、その生物を背負って走っても息の切れていない少年に恐怖を覚えた。これっておかしいのかな?
うーん、それにしても、動きが人間臭いな。
少年が子供だからリュックが大きく見えてるのかと思ってたけど、よく見ると他の物よりも大きいリュックだ。中に人がいてもおかしくない……。まあでも、僕は犬とか、ペットあたりだと信じて――
「ぷはっ」
人だった。
リュックの中から、もう一人の少年が現れた。
少年はリュックを背負っている方の少年と同じく赤い髪の赤い目で、よく見ると、父さんと似た顔立ちをしてるから、たぶん兄弟。
少年一、兄の方は多分小学五年生くらい。
少年二の弟君は多分……小学校低学年。
その時、地面にリュックを下ろし、弟をカバンから出していた少年(兄)がパッとこちらを向き、話し出した。
「申し遅れました。わたくし、媿野家三男、媿野生鏡と申します。で、こっちが――」
「ちょっと待って」
ウキョウ君が弟を紹介しようとしたとき、僕は彼を止めた。
「……ずっと気になってたんだけど君たちもしかして父さんの……隠し子!?」
少年は「は?」とすっとんきょうな声をあげると、ふう、とため息をついた。
「確かに、隠し子は間違ってないかもしれませんが、隠し子は兄上、あなた方の方です!」
「はあ?」
僕は驚きのあまり今度は僕がすっとんきょうな声をあげてしまった。
僕と兄さんの方が隠し子? どういう事?
「はぁー、説明めんどくさいですね。なんとなく察してくれないんでしょうかこの役立たず兄上――おっと失礼つい本音が」
もう手遅れだから、言い直さなくていいよ……。
「残念だけど、今のままだと僕の持ち札が少なすぎて、察する事なんてできないよ。あと、さっきは遮っちゃったけど、そっちの弟君の名前も、教えてくれないかな?」
出来るだけ優しく言うと、ずっと後ろにいた弟君の方がスッと前に出てきて、自ら名乗り上げた。
「……初めまして、兄上。僕は、四男の凪寽です」
”凪”寽に生”鏡”……父さんと母さんの名前からとられてる。
やっぱ母親も父親も僕と同じなのか……。
・・・
そして僕は、妖や鬼についていろいろ教えてもらったんだけど……。
「ややこしい……」
「でしょうね。こっちの世界はいろいろとやかましいですから」
説明は分かりやすいんだけど、後の方いろいろこんがらがってきたよ!?
頭を悩ませる僕の後ろで、弟のナギトくんが僕のスマホをいじっていた。
「ちょいちょいちょーい! 何勝手にいじってんの!?」
「すみません。ですが、もう一人の兄上の連絡先を持っていないので、今言ったことすべて兄上のスマホのメールでもう一人の兄上に送らせていただきました」
「ちなみにスマホパスワードは協力者から教えていただきました」
ナギトくんではなくウキョウくんにそう言われ、ついでとでも言うようにナギトくんが付け加えてくる。なんなんだこの兄弟!
もう一人の兄上って……兄さんだよね!? 今頃お目目真ん丸だよ!?
その頃のもう一人の兄上・・・
スマホを見てフリーズ。
陸の予想通り目はまん丸。
※勘がいいのでもしかしたら人間じゃないかもな~とは思っていたが、それが陸からメールで送られてくるとは思わなかった。
「では、さっさと移動しましょう」
「は?」
ウキョウくんは説明を終えてすぐ立ち上がり、ナギトくんをもう一度リュックに戻してチャックをしめた。
僕は驚いて脳がフリーズし、数秒固まっていた。
「え!? ちょ、ちょっと待って!? また移動するの!? なんで?」
「そりゃ、追っ手がいるからですよ。なんせ俺と凪寽は脱走して来たんだから」
「はぁ!?」
淡々と告げられ僕は声を押さえられずに叫ぶ。
「ほら、早く行きますよ。捕まってしまってはせっかく協力してくれた彼の働きが無駄になってしまう」
「え、協力者? 脱走するのに協力者いないと脱走できないくらい警備万全なの?」
急かすように言われても、僕は立ち上がれなかった。
それどころか協力者って……ねえ……? ………………ねえ!?
「その協力者の方ですが、おそらく兄上と知り合いかと」
「え……あ、この前の愛莉ちゃん襲撃事件で来た人たちの中にいたの?」
「いいえ?」
じゃあ誰……僕の記憶にないのに知り合いとか、こわっ。
「クラスメイトの、安藤啓介、もとい、鬼桜さんです」
数秒後・・・
「………………」
「………………え? っあ~……なるほどね? 佐藤とみょ~に連携が取れていたのはそういう……」
「反応が遅い割に軽いのやめてもらえます?」
昨日(8月19日)、漫画買いました。
作「何? いきなり」(もはや『昨日』の定義を投稿日に合わせない事にはツッコまない)
白「どんな漫画?」
うーん……少なくとも教育に悪いものではない……?
ナ「疑問形……」
ずっと欲しかったやつなんだけど、いつも行ってる本屋じゃ見つけられなくて。昨日行った別の本屋で見つけたんだ。
ナ「ヨカッタデスネー」
棒読みだなぁ~、ガムテープ付ける?(笑)
ナ「いやもうただのガムテープの狂人になっ――え何そのガムテープめちゃくちゃ粘着力高そうな音したんですけど」
うん! ……これをやっと育毛剤の効果が出てきた親父の頭に使えばお坊さんに成れるよ!
ナ「俺ハゲてねえから!」(泣)
白「うーん、一つちょうだい」
えっ?(使うの?)