206 操り人形の笑顔、再び 章終わり
章終わりだから短いです。
もともと、妖は夜行生物だ。
それでも、知的生命体には変わりない。
夜に寝る、その習慣が体に染みつけば、人間のように暮らすことは意外と簡単だ。
あとは、妖の敵である祓い屋にかかわらないようにするだけ。
だからなるだけ、夜に動くのは避けたいんだけど……。
「夜風が気持ちいいね……でも、ちょっと暑い」
夜の自然公園の中で、陸がそうつぶやいた。
「そうだね。たまには夜散歩も悪くないかも」
自然と笑みが浮かんでくる。
夜の風が吹き、木の葉が心地よい音を立てる。
「木があるから暑さもちょっとはマシかな……。それより陸、どんな夢見てたの?」
少し気になって聞いてみた。
すると陸は少し眉を下げて考えた。
「え? それは………………思い出せない」
その言葉に、佐藤は思わず首をかしげる。
思い出せない? なぜ。
いくら陸が記憶喪失だとしても、さっき見た悪夢まで忘れるのか?
「……陸、俺が転校してきたときのことは覚えてる?」
不安になって聞いてみると、陸は困ったように笑う。
「え? そりゃ覚えてるよ。あの日に兄さんが洗濯機爆破したせいで遅刻したんだよ」
違う。陸はちゃんと覚えてる。
悪夢の事だけ、忘れてる。
少し眉をひそめてしまったらしく、陸は不安そうな顔をした。
「あ、ああ。いや、何でもないよ。そうだな……悪夢ってどのくらいの頻度で見るの?」
「え? うーん、わかんない……あ、でも今日以外、ここ数年悪夢を見た記憶はないな……」
それはおかしい。数年も?
そこらへんには詳しくないから分からないけど、ちょっとおかしいと思う。
もしかしたら今日の悪夢も、しばらくすると忘れてしまうかもしれない。起きてすぐ聞いておくべきだったか?
「ご、ごめんね……?」
申し訳なさそうに謝る陸に、少し、違和感を覚える。
……なんだ? なんだこの違和感。
歯に挟まるニラのように気持ち悪い感じがする。
「あー……。そうだな、もうそろそろ戻ろうか。寝不足はよくない」
嘘だ。人間でない陸は、一日二日寝なくたって問題はない。
作り物の笑顔を浮かべて促す。
なぜだろう。今の陸からは、どことなく愛莉と同じような雰囲気がする。
まるで、昔の自分に戻ったみたいだ――。
操り人形のように笑みを作って、したがって。
その薄っぺらさに、相手は気づかない。
もう、戻らなくていいと思ったのになぁ……。
朝・・・
なんとなく、気持ち悪さが残ってた。
佐藤曰く、悪夢を見たらしいので散歩に連れて行ってくれたらしいけど、寝ぼけていたのか覚えていない。
筮さんももうすっかりいつもの調子に戻ってた。
だから気持ち悪さの事を話すと、貧血じゃない? と返ってきた。
朝ごはんを作りながら、紗代さんがまだ起きてないことに気づいて、上に向かって声をかけたが、返事はなかった。
どうしたんだろう。心配だなぁ……。
一方その頃、紗代は自分の膝を抱いて何かを怖がっていた。
夢の内容を覚えてはいない。覚えていないが、何か悪いものを見ていた気がする。
(えみさんのせいだ。鬼ごっこで捕まったから、後遺症が残ってるのかもしれない……!)
そのことに、江見さん本人も気づいていなかったのは、また別のお話・・・
ナ「えみさんポンコツだなぁ……」
白「え? 何? 気持ち悪……」
ちょっとちょっと。シンラツだね(笑)それと今回の後書きはネタバレ防止に物語とは関係ない話をさせていただきます。作ちゃんまーん?
作「作……っ! そ、そんなことよりキキ、夏休みの宿題の進み具合は?」(セリフ)
う、うーん、わかんないなぁ……(作者が怒ってる……)今年の宿題はあんまり進捗が目に見えないんだよ。でもまあ、読書もやったし、ドリルも七月中に全部終わらせた。7月31日に家庭科の宿題もやったし、あとは……。
ナ「おお、結構やったんだね」(台本破り捨て)
ちょ!? ナレちゃ……ゴホンッ、ちなみに、弟の長男くんは宿題を後回しにしているよ。夏休み最終日間近になって焦り出すのが目に見える気がする。ま、そのことは最終日が近づいてきたら後書きで話すよ。
ナ「楽しみにしてるぅー」