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睡眠学習

力を使って眠っている間。

私は夢の中で主上と母様にあっていた。


「久しいの真白。問題は無いか?何か望みはあるかえ」


主上に頭を撫でられるが、触覚は避けてくれているのかこそばゆくはなかった。無かったが、どこか物足りなかった。


「……おしゃべりしにくいのが、こまってます」


そういえば主上はそうかそうかと笑って、それからうんと沢山お喋りに付き合ってくれた。主上が居ない時は母様がお喋りに付き合ってくれた。


主上の優しい力に包まれて、たくさんお喋りの練習をして。


「そういえば銀流がご飯食べないと、神力がって言ってて」


「ああ、そなたは食事を取らないのだな。では妾たちと同じ術式を教えてやろう。起きたら銀流にも教えてやるのだよ」


「はい」


色々な術も教わった。

その中のひとつが、信仰を神力へと変換する術。

信徒を持つ多くの神が覚えている術のようだ。

なるほどこれがあれば安全だね。

そう思いながら、主上の膝枕で夢の中なのにうとうとと眠くなる。


「真白、お前は飛ぶことも歩くことも苦手だけれどならば術で飛べばいいのよ」


母様の声もどこからか聞こえてきて、なるほどと納得をする。

どうしても…とべ…な…


『真白、真白、そろそろ起きて』


ぎんりゅ…よんで………。







「なるほど。この術があれば真白も安心だね」


「銀流が頑張っていてくれたおかげです」


「真白も頑張ったよ」


夢の中の主上はおそらく夢枕にたって色々としてくれていたのだろう。

おかげでよどみなく喋ることができ、しかも銀流に術も教えることが出来る。術を教えると銀流はまた目を消して笑い、頭を撫でて触覚がこしょばゆくなった。でも、これだと感じる。


ニコニコ笑って撫でられていると、何故か銀流は困った顔になった。でも首を傾げると、こほんと喉を鳴らして銀流は気を取り直したようだ。


「じゃあ真白、今度は妖精(フェアリー)植物妖精(ドライアド)と虫人に祝福を与えたいのだけれど良いかな?」


「分かりました。でも銀流の背中を一度綺麗にしたいので待ってもらっても良いですか?」


「ああ…うん…糸、綺麗に取ってね…本性になった方がいいかい?」


「うーんと…ああ、こちらでも取れますね」


一瞬無の表情になったけれど背中を向けた銀流。服を脱いで上半身裸になった彼の背中の真ん中には小さな繭の残骸がへばりついていた。


のでそれをーーーーーぺろっと舐める。


「!?!?」


端の方の繭と皮膚のへばりあった所をぺろぺろと舐めて、繭を柔らかく溶かし「真白さんっ!?」


ていたのに、急に振り向いた銀流に何故か両手を掴まれた。


「なあに?」


「いやそれはこっちのセリフですけど!?なんで急に舐めるんですか!?」


「えっと…繭を柔らかくする液体をつけてるだけだけど…」


べえっと舌を見せてそういえば顔を赤くさせて白くさせた銀流はうなだれた。

尻尾も元気なく項垂れているので、とりあえずいつもしてくれるように頭を撫でておく。


「痛くてもいいので、べりっと剥がしてください」


「ええ…でも結構ガッツリへばりついて「大丈夫。ひっぺがしてください」」


今度は笑ってるのに威圧感がある。痛いことを望むなんて悪趣味だなあと思いながらべりっと繭を引き剥がすも…想像以上に抵抗なく取れた。これは舐める必要無かったなあ。中から出る時は舐めないと出れないんだけどねえ。


大物をとって、残った糸をこねこねと練りながら取る。


だけど、なんか銀流がぴくぴくしてる。


「銀流どうしたの?」


「くすぐったいんです」


「そっか。痛くないなら良かった」


糸を全部取り終わる時、銀流は上半身まで赤くなっていた。



まあ、とっても。


『行きましょうか真白』


「はい」


また付けるんだけどね。

本性になった銀流の背にこびりついて移動をする。

そして新しい祝福を作りながら……唐突に気がついた!!



「ねえ銀流」


『どうかしましたか』


「主上に教えてもらった術式で神力回復してるし、術で飛べば移動も出来るから私へばりつかなくて良かったんじゃない?」


『はっ!』


案外銀流もドジっ子だなあ。

くすくすと笑いながら、背から降りると銀流はすぐに人型になった。

けれど耳まで真っ赤でそっぽを向いている。


「じゃあ銀流、私が寝ている間のことを教えて?一緒に歩いていこう」


歩くと言っても術で浮くんだけどね。

ふよふよと浮きながら、でこぼこの地面を難なく歩く銀流横に並ぶ。


「先に祝福を与えたもの達はだいぶ祝福を使いこなせて来ましたよ。そういえばエルフとドワーフは人とも交流していますね。」


「人と?襲われないの?」


「ええ、頼まれたのでこちらの食べ物を向こうに持ち出す許可を与えたからか、人の世では貴重な食料源としてもてなされてるようですよ」


「食料の持ち出し許可したんだ!」


「彼らに持てる範囲の物限定ですがね。結界は人の出入りを阻むだけのものなので、中の者が望むのならば交流は回避出来ませんし、そうなると食料不足で飢えている人々が哀れになってしまったのでしょう。と言ってもその傾向は近年産まれた若者だけで、大人たちは過去されたことを覚えてて恨んでますけど」


「複雑だねえ」


「まあ私たちは結界内を繁栄させるだけですけどね」


結界内の知恵の無い獣や虫なども、広々とした空間で伸び伸びと繁殖をしているそうだ。


数が増えれば領域内での狩り狩られももっと規模が大きくなり、強固な個体も増えてくるだろうけれど。


今はまだ、植物が増えてきている程度だ。


まずは基盤。植物の発展も進めなくては行けない。



そのためのドライアドやフェアリー、虫人達への祝福だ。



前と同じ開けた場所には三人の女性が待っていた。


そのうちの一人を見た瞬間ビシッと固まる。


「真白?」


緑色の女性と、羽の生えた女性と



6本の足と2本の手がある女性。


がしっと銀流背中に張り付いてその女性の視線から必死に逃れる。

恐らく戦えば一瞬で勝てるだろうが、理屈じゃないんだ。


理屈じゃなく、怖いんだ。



蜘蛛は怖いんだ…!


虫人の代表者は蜘蛛の虫人だった。


「どうかしたんですか?真白?え、ちょっ」


怖い怖い食われる食われる。

思考が真っ白になって本性に化けて銀流の髪を掻き分け、首の後ろにひっつく。そして全力で糸を吐いてへばりつく。


『蜘蛛、無理』


「あー…あぁ、そう言う……」


小さくつぶやくとようやく自体を把握した銀流が落ち着いて、目で見えるけれど離れた位置から彼女たちに祝福をかけるのを感じた。


「それぞれ繁栄に努めよ。何かあったら呼ぶがいい」



私と銀流が選んだこの選択は彼女達の運命を大きく変えた。


私の祝福を受けた私の眷属は獣人、耳長族(エルフ)小人族(ドワーフ)、鱗人。


銀流の祝福を受けた彼の眷属は妖精(フェアリー)植物妖精(ドライアド)、虫人。


逆じゃね?という眷属を持つことになったのだ。


また祝福の性能の違いも如実に出て、私の眷属は繁殖し数を増やし集落を作りどんどん繁栄していくのに対して

銀流の眷属は襲われないようにひっそりと、静かに静かに力を蓄えて行った。


眷属に関しては数の私と質の銀流になったのだ。




その痩せた少女は結界の外で、結界に触れて祈りを捧げていた。



「…こんなところで何をしてるんだい?」


「っ、かみさまですか!」


「いや、違うけど…こんなところで座ったら服が汚れるよ」


「構いません。私は神様に捧げられた供物なので」


「供物って…ああもうほらこれあげるから、こっちおいで。僕はエルフのリュターシャだよ。今から人の国に果物を持っていくところだったんだ」


手渡されたみずみずしい果物。

結界の外で生きる少女には、何よりも魅力的な食料だった。


青年はそんな食料を籠いっぱい抱えている。




飢えて、生贄に捧げられた哀れな少女。

そんな少女と豊かな結界内で生まれ育った歳若い青年が親しくなるのは必然の出来事だった。



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