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X3-25『瞳の星羅~End of May~』

 そこはどこまでも続く、広大な花畑だった。

 天には暗い星空が輝き、爽やかな風が、花々を躍らせる。


 目を開いたメイとイルは、美しい香りに満たされた辺りを、見回した。


「ここは……天国?」

「かも知れないけど、少なくとも僕は地獄行きが確定してそうだし、たぶん違うかな」

「そっか……」


 花畑に座り込む二人。

 彼女達の背後には、見上げても見上げきれない、女神だったモノの残骸が、朽ちた遺跡、太古の山のように、花に包まれて鎮座していた。

 朽ち果てた女神像はもはや動く気配もなく、ただひとつのオブジェクトとしてそこにある。


「抜け出せたのかな、終わらない、五月から」

「きっとそうだろう。もう、見飽きた未来が再び訪れることもない。ここからは、まだ見ない世界が続くんだ」


 不思議に輝く蝶達が、花畑を飾るように舞う。

 三つの命を再生したこの世界でも、新たな生命の息吹が感じ取れ始めていた。

 それは、どこまでも続くこの平でも、球体でもない世界でそれだけの多様性が生まれ始めていることの現れだった。


「ねぇ、この花畑の先には何があるのかな」

「どうだろう、森かも知れないし、海かも知れない。ひょっとしたら火山かも」

「火山だったら面白いかもね」


 立ち上がったイルが、メイに手を差し伸べる。


「それじゃ、行ってみようか。この花畑の先に、何があるのか確かめる為に!」

「そうだね……きっとこの世界は、まだ見た事ない場所がずっと広がってるはずだから……私と、あなたの新しい旅路だね」


 イルの手を借り立ち上がったメイは、軽く伸びをした。

 そんなふたりの下へ、走り寄ってくる一人の影。


「おーい!あたしを忘れて置いてかないでよー!」

「悪いなリオ!どこにも見当たらなかったから宇宙の果てに放り出されたのかと思ったよ!」

「ったく相変わらず酷いわ!酷すぎる!」

「ふふ、リオちゃんも一緒に行くでしょう?」

「そうね。こんなところ、ひとりで居てもつまんないし!あんた達と一緒に居ると、やっぱり飽きないもの!」


 追いついたリオは、二人の隣で息を切らしながら、ゆっくりと深呼吸した。


 散った花びらは宙へと舞い、色とりどりな風となる。

 ここから始まった新たな旅路を歩む、三人の背中を押すように。


「それじゃ、行こうか……星羅の果ての、その先まで!」


 決して終わらない五月から脱出した三人。

 それでも、彼女達の命が終わる訳ではない。


 無数の星羅の如く存在する数多の世界の軸であるこの大地は永遠に続く。

 しかしそれは見飽きた輪廻に囚われた世界とは違う。

 全てが今まさに創造されていく、まだ見ぬ世界の連鎖なのだ。


 少女達の瞳には、星羅の如く輝く無数の未来と願いが映るだろう。

 来る日も、来る日も。

 日々が過ぎ去っていくという事が、如何に彼女達にとって幸せなことなのだろうか。


 そんな少女達の気持ちを知るのは、この旅の往く先を知るのは。

 きっと、そこらに連れている、小さな花たちだけなのだろう。


 終着点のない旅路は、まだ始まったばかりだ――。

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