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6-14『願い、魔術』


「爆……破!」

「くっ……これが魔術……っ!」


 連発し、ばら撒かれる爆発の嵐。

 容赦のない破砕の連続の間を、セイラは切り抜け接近の機会を伺う。


「お姉ちゃんに言われた通り……私は私が信じたものの為に戦うって決めたから、だから容赦は出来ない!」

「それは偉いが……ちゃんと相手は選んで欲しかったな!」


 繰り返される爆発は建物を滅茶苦茶に破壊し、逃げ場をなくしてゆく。

 数発が体をかすめながらも銃撃を加えるセイラだが、その弾丸はインナの周囲を覆う透明の膜のようなものに阻まれるように弾かれた。


「どうやったらこんな事を生身の人間が……」

「それはポラリスやカノプスなどのサンプル血液を投与したから……本来この力は、この次元に存在するモノじゃない」


 走り込んで接近したセイラが手鎌を取り出し、切りかかる。

 しかしその連撃すらも膜は弾き、インナは翻すように身を引きつつ、距離を取っていく。


「人の思考、脳波を一定のリズムとして感応して、その性質や形質を変えたり、現象を再現する……まさに人の願いを叶える力。多くの人の脳波を探知すれば、神の再現すら可能とする、祈りの具現……」

「だがお前達はそれを人の願いの為なんかじゃなく、破滅の為に使ってるじゃないか!」

「メイさんの扱っていた力も、同じものだよ……その原因を造り出した、お姉ちゃんの『黒血』こそが、そのオリジナル」

「なんだって……うわっ!」


 動揺し隙を生んでしまったセイラの胸に、爆撃が炸裂する。

 胸部の肉を抉られ、骨を折られ、血を噴き出したセイラが吹き飛ばされ、地面を転がる。

 地面に打ち付けられ大量の血を流したセイラは、それでも動き続ける事が出来た。


「お姉ちゃんの、メイさんを救いたいという願い……執念が、無意識にその血の力を証明している」

「ぐ……うっ……僕が……なんで……」


 ぽっかりと開いたはずの胸の穴。

 しかしそれはみるみるうちに修復され、気付けば綺麗に、傷一つ無くなっていた。


「それは……お姉ちゃんが……っ!」

「なっ、なんだ!?」


 インナがそう言いかけた時、グラグラと地面が激しく揺れる。

 その状況を感じて、インナは何かを確信したように頷いた。


「どうやら最終段階に入ったみたい……これ以上ここで争っても無意味」

「くそっ……メイ!」


 インナの横を駆け抜け、階段へ向かおうとするセイラ。

 しかし突如、彼女の体にズシリと何かがのしかかるような感覚が走り、地面に打ち伏せさせられてしまう。


「体が……重い……っ!」

「行かせない……ここでそのまま朽ち果てろ」

「お前は……本当にこれでいいのかよ……インナ!」


 重力さえ操る魔術の前にひれ伏せさせられながらも、セイラは必死に立ち上がり、先へ進もうと強引に体を起こそうとする。

 内臓が牽き潰されそうな重さの前に、無意味だと分かっていてもセイラは友人の下へ急ごうとしていた。


「このまま人類を滅ぼして……お前はそれで……納得なのかよ……!」

「……私の信じたモノの、お父さんの為だから」

「お前の造り出したその力は……魔術は……人類の為に作ったんじゃないのか!」

「それは……」


 非情な重さに血管がうっ血し、眼から血を流しながらもセイラは地面を這いつくばって先へ進む。


「その力、技術があれば、もっと多くの人が救えたはず……インナ……その技術は人類の願いを実現できると言ったのはお前だ……それがお前の本心なんじゃないのか!」

「……私だって……そんな事は……」

「なら……人類の願いの為に……その技術を使ってくれよ……破滅なんて事の為じゃなく……自分本来の……願いの為に!」

「……っ!」


 歯を食いしばるインナ。

 直後、急激にセイラの体が軽くなり、今まで踏ん張っていた力が解放されバランスを崩しながら立ち上がる。


「インナ……!」

「……私は、マナミお姉ちゃんが信じた人類の未来に……自分の願いを使ってみたいって少し思っただけ。だから……止めてきて、レンゲを……この財団を」

「あぁ!分かってる……ありがとう、インナ。僕たちを信じてくれて……!」

「……いいから、早く行って。私の気が変わらないうちに」


 インナに向けセイラは頷くと、扉を開け放ち、階段を駆け下り始めた。

 そんな姉の背中を見て、インナは床にへたり込む。


「……私の願い……ただ、私は自分の造り出した技術の限界を試したいだけ……でも」


 頭上で争っていた二体の巨人も、ヤラガラス側の勝利で終わったようだ。

 地上はしばらくぶりの静けさを取り戻し始める。


「全人類の願いの成就……進化と覚醒を探究してみるのも悪くないかな、マナミお姉ちゃん」


 巨人が突き破った天井の穴からは、星羅の瞬きが覗く。

 インナは静かに、その夜空を見上げた。


「それにしても……身勝手に『神』だと自分自身を祀り上げられたあげく、利用されといて『邪神』なんかに貶めた人類の為に、よくあそこまで頑張ろうと思えるな……セイラお姉ちゃんは。もしかして……本当は人類なんかどうでもよくて、あのメイって人の為だけなのかも知れないけどね」


 少女の独白は、誰の耳へと届かずに、星々へと消えていった。

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