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【秘宝と契約の箱】NO4 ソウルイーター(soul eater:魂喰い)

【秘宝と契約の箱】NO4 ソウルイーター(soul eater:魂喰い)


この星を覆う赤茶けた砂漠には驚く事に風を受けて砂を掻き分けて進む帆船が走っていた。

更に海にいる筈のシャチが砂漠を泳いでいる奇妙な世界だ。

何処までも続く砂の海と、そして、太陽から降り注ぐ熱波は加護が無い者達にとっては死と隣り合わせの過酷な環境だ。恐らく数多の旅人の命を奪って来たに違いない。

ここで偶々通り掛かった帆船に乗せて貰う事が出来た。渡りに船、俺達は運がいい。多分、女神の加護が働いているのだろう。

船長は伝説でも登場するドワーフという種族だ。彼は典型的なドワーフのずんぐりした体型をしている。名前をバハラという船長は気さくな感じの男前だった。

逃げる廃墟の謎を「あれこそが幻の墳墓と呼ばれている遺跡だ。この星では10年に一度、日食がある。その時が幻の墳墓が現実の物になる合図だ」と俺達が喉が出る程に知りたかった情報を教えてくれた。

遠くに見える蜃気楼と思われた廃墟は実は古代墳墓であり、その実体のない遺跡は10年に一度だけ幻から現実の物になるという。

船長達は幻の墳墓に口ぶりから宝探しに来たらしい。

夢のある話だが、俺達の今回のミッションは禁呪魔法の魔法書を見つける事だ。

宝探しじゃない。だから宝探しに付き合う必要がないのだが、バハラは俺達の知らない情報を持っている。それに情報収集に放っていたバグから遺跡に向かう船が複数あり、その船の中には魔族の気配があったとの報告を受けた。

『魔族の目的は宝探しではあるまい。恐らくは俺達と目的は同じ禁呪の魔法書だろう。

契約の箱を奴等が先に見付けられては厄介だ。やみくもに探し回れば遺跡の情報や土地勘のない俺達は遅れを取る。だから、それらの状況から判断して、船長に力を貸し、情報を、こちらにも貰う事で、古代遺跡の秘宝、契約の箱に早く近付けるのが得策ではないか』と考えを巡らし用心棒に雇われる事にした。


船に乗って間もなく不運にも、この世界で恐れられている魔物、砂シャチの群れに襲われた。

船長はツキがないと言っていたが、それはタイガーがいるからかも知れないと口が裂けても言えない。

タイガーは凶運を抑えるブレスレットを首からぶら下げている。

だが、何せ彼は宇宙が始まって以来初めて最凶を引いた男なのだから不運が漏れ出しても驚く事はない。

俺の強運が無ければ、うふふ、奴の不運は最悪だ。

多分、巨大クラーケンや海竜でも引き寄せたかも知れない。


この世界でS級魔物と恐れられている砂シャチ達を俺とタイガーは狩猟をするかの様に楽しみながら簡単に仕留めた。

先程まで逃げ惑っていた船員や冒険者達は俺達の闘いぶりを見て呆気に取られている。

この星で恐れられた砂シャチも魔族や邪神相手に死と隣り合わせで戦っている俺達、抗魔執行官の脅威には成り得る筈がなかった。

絶対的な捕食者である筈の砂シャチ達も餌だと思っていた人間から思わぬ反撃に合い驚いている事だろう。

「ギヤーギヤー」悲鳴に近い鳴き声を上げながら生き残った砂シャチは帆船の囲いを解き我先に逃げだした。

無理もない狩る者から狩られる者に立場に逆転したのだから・・・。

砂シャチに恐怖という感情があるのかどうかは別にして、彼らが持つ本能が、危険を知らせたに違いない。


「おー、砂シャチが逃げて行くぞ‼

・・・ふぅ、助かった」


生き残った船員達は皆、安堵の表情を浮かべた。

船長のバハラは砂シャチの襲撃にあっている時は姿を隠していたが、危険が去った事を知るとワイン樽から顔を覗かせ樽から出て来た。

余程、恐ろしかったのだろう。ズボンから少し尿の匂いが漂っている。

ドワーフは種族的に鍛冶や工芸技能が得意であり、一方で大きな斧で盾を打ち破る勇猛な戦士としても知られるが、バハラは例外らしい。


「まったく、雇った冒険者達は役立たずの腰抜けばかりだ。

肝っ玉は、この小指の先程もない」

バハラはそう言って冒険者達を攻め立てた。


凛太朗は生き残った冒険者を小心者のバハラが腰抜けと罵倒するのを見て、『船長もじゃないか・・・』と思ったが苦笑いした。


「凛太朗さんのお陰で助かったが、いなければどうなったことやら情けない。

凛太朗さん、この働きに見合った報酬は必ず払いますよ!」

船長はそう言って小袋を投げて来た。


「それは前金だ‼」


投げられた巾着には馴染みがない山吹色に光る金貨が入っていた。


「これは、もしかして、金貨?」


「よいか、皆の者、あの墳墓には、その昔、王家が残した秘宝が隠されている。

宝石や金銀の財宝、それに珍しい魔道具の類まであるという話だ。

それが手に入れば俺は働きに見合った報酬、一生遊んで暮らせる金をお前達に分け与えるつもりだ。だから分け前が欲しい者は励むんだ‼」


「オー」冒険者達は脳キンなのか先程の船長から受けた罵倒などどこ吹く風、船長の甘い言葉に歓喜の声を上げた。だが、金銀に目を輝かしたのは彼らばかりでは無い。

何時の間にか人間体形に戻ったタイガーも冒険者や船員と同じ様に船長を取り囲んで声を上げていた。

欲深いタイガーの事だから、きっと、金銀で異世界に行って酒をたらふく飲むか情婦でも買うつもりなのだろう。

そうして船上で騒いでいる時だった。突然、赤く輝いていたこの星の太陽が欠け始めた。


「皆既日食だ」誰かが欠け始めた太陽を指さし叫んだ。


「おー、太陽が欠け始めた‼

待ちに待った時が来た。いよいよだ。

幻の遺跡が、現実の物になるぞ‼」


「船を進めろ‼声をあげよ‼

それ取舵一杯‼」バハラが指示を出して浮かれた様に踊る。


「とぉぉりかぁじいっぱい」船長の声に呼応し、舵を取っている船員が通る声で元気に返した。

バハラは船員達の恐怖を取り除くために金銀という飴で欲望を引き出したのだ。

魔物に襲われている時に震えていた舵手も何時の間にか逞しい海の男になっていた。


だが、この後、待ち構える悪意を彼らは知る由もない。


この古代遺跡は何千年に亘り秘宝を求めてやってくる欲深い者達を引き寄せていた。

それは例えるなら甘い蜜で蟲を誘う食虫植物の様でもある。

未だ嘗て古代遺跡から生きて帰った者はいない。

何故なら古代遺跡は巨大なソウルイーター(soul eater:魂喰い)なのだから・・・。


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