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【第二ステージ:関ケ原戦い、必死の逃亡】

【第二ステージ:関ケ原戦い、必死の逃亡】


剣闘士達との勝負で勝利を手にした凛太朗達は、コロッセウムの観客から立ち上がっての割れんばかりの拍手、スタンディングオベーションで栄誉を称えられた。

だが、勝利の余韻を味わう間もなく、再び目の前が暗転、真っ暗になった。

気か付くとそこは、あちらこちらで鉄砲や法螺、太鼓が鳴り響き、雄叫びと地獄の阿鼻叫喚が聞こえる戦場の真っ只中だった。


「少し、僕としては面白くないが、第一ステージのクリアおめでとう・・・第二ステージは丁度、戦争の真っ最中だ。

今まさに、17万程の将兵が東西に分かれて覇権を掛けた戦いが行われている。

君達は、もう沢山の敵兵に囲まれ袋のネズミ状態、この戦場から逃げ切るのは至難の業だ。

今度は、この敵兵の囲いの中を逃げ切れば第二ステージの生き地獄はクリアだ。

だが、君達は僕の仕掛けた地獄のループから死ぬまで抜け出す事はできない。

死ぬか、戦い続けるかだ。

うふふ・・・気を付けないと、鉄砲の玉や弓矢が雨あられと降り注ぐからね・・・」再び悪魔が頭に直接、語り掛けて来た。


「凛太朗、どうしたらいいんだ・・・」


「俺にも分からない。

ともかく、今は向かって来る敵兵を倒すしかない。

奴は何処からか、俺達の様子を伺っている筈だ。

それさえ分かれば何か手があるかも知れない」


「凜ちゃん、こちらに騎馬隊がやってくるわ・・・」


「草むらに脱げ込むんだ」


騎馬に乗って向かって来る武者の具足は赤揃えだった。

彼らのなかには背中三つ葉葵の旗を背負っている武者もいた。


「・・・どこかで、そうだ、井伊の赤揃え、それに三つ葉葵は徳川の旗、松平の兵か・・・。

すると、ここはもしかしたら関ケ原・・・そうか400年程前に俺が住んでいる世界で行われた戦いだ」


「凛ちゃん、兵士が持っている棒から火がでているわ・・・。

あれって少しやばいんじゃない」


「あれは火縄銃という鉄砲だ。

矢はともかく、あの銃は初期のタイプだが、あたれば皮鎧はもちろん鉄鎧も貫通するから危険だ。

運の力を最大限に引き上げるが、何処まで力が働くのか分からないから、二人とも気を付けるんだ」


「おい、凛太朗、今度は長い槍を持ったのが、沢山、やってきたぞ・・・」


「ああ・・・分かっている。

奴らは雑兵だ。

武者としては弱いが、長い槍の攻撃は単純に突くだけでなく頭を狙って叩き付けて来るから気を付けるんだ。

三人で、この敵兵の囲いを抜け出すのは無理かも知れない。

この戦場が俺の知る関ケ原の戦いならば、確か西軍の島津の兵が、ここを見事に離脱した筈だ。

とにかく、今はこの近くで向かって来る武者と戦い、逃げるチャンスを見つけるのが得策に思える。二人とも俺から離れるんじゃない」


「ドドド・・・」


何処か遠くで、火縄銃が一斉に放たれたのが聞こえた。

すると山を下る武者の一団が後方の武者達を襲った。

時を置かずして、「小早川が裏切った」という声が聞こえて、後方の兵達が動揺して大混乱になるのが分かった。


「後方にいるのが、西軍だ。

これから裏切りで、総崩れになり、敗走が始まる。

島津軍は後方に退却するのではなく、正面の敵に敵中突破を試みたとされている。

俺達は「丸に十字の旗」を持った武者達が動きだしたら一緒に行動する」



凛太朗達は向かって来た東軍の武者達を切り捨て退けながら、後方にいる丸に十字の一団が動き出す時が来るのを待った。

後方の山に布陣していた「大一大万大吉」の旗、石田三成の一団が、総崩れになって大勢が決した頃だった。

数人の島津の鎧武者に声を掛けられた。


「わい達(お前達)何処から気もうした。

見たところ徳川の手の者ではなさそうだが・・・」


「いや、またれよ・・・島津様のご家来か・・・ならば辺りを見なされ・・・」凛太朗は、この時代の言葉は分からなかったが、過度に怪しまれない様に時代劇で聞いた侍言葉で受け答えした。


「・・・あい、分かったでごわす」


島津の家来はあたりに倒れている徳川方の武者を見て、西軍に組する者と判断したのか、足早に島津の本隊へ戻った。

そして、この後、島津義弘と先程の家臣との間で、次の様なやり取りがあったと後の世に伝えられている。


「敵は何処方が猛勢か」


「東寄の敵、以ての外、猛勢」


「その猛勢の中に、あいかけよ‼」


この話の掛け合いで、後の世に島津の退け口と言われた決断がされた。


「凛太朗、動きだしたぞ!」


「タイガー、チェリー、俺達も島津隊の生きて戦場を離脱するという強い気持ちに掛けるんだ」


三人は島津隊が徳川本隊がいる方向に突進するのを見るや並走し、また時には殿(しんがり)で向かって来る鎧武者を切り捨て遠のけながら必死で走った。

途中、徳川方から無数の鉄砲や矢を撃ち掛けられる。

的が大きいタイガーは鉄砲の玉や弓矢で、かなり傷を負い大量の血を流したが、驚いた事に平気な顔をしている。

意図した事ではないが、三人が東軍の兵から薩摩兵を守る盾の様な格好になった。

関ケ原を抜ける頃には全身が血糊で真っ赤になり息が上がった。

徳川方は関ケ原を抜けても追いかけて来た。

この時、薩摩の武者は、捨てがまりという戦法を取った事で知られている。

死を覚悟した兵たちを道中におき、鉄砲で敵を威嚇、その隙に主の島津義弘を撤退させるというものだった。

凛太朗達は関ケ原を逃げ切った後、島津から離れて逃げた。

途中で武者狩りにあったが切り捨て刀の錆にした。


薩摩は、この後、戦場から見事に離脱したが、もし凛太朗達がいなかったなら、どうなった事か?

凛太朗達が関ケ原の戦場からの薩摩の離脱に果たした役割は大きい。

だが、彼らの事を語った記録は歴史の史実としては何処にも残っていない。

それは悪魔が作った仮想世界の事だからなのか?

しかし、凛太朗達には関ケ原で戦った実感が残ったのも確かである。


凛太朗には戦場から逃げ切れた後も悪魔が仕掛けた地獄のループから抜け出せない無力感があったが、コロッセウムの闘技場で剣闘士達を、そして関ケ原では数えきれない程の鎧武者達の血と魂を吸った事で、命を預ける村正の剣の力が増していると感じていた。

そして、その妖しい光の揺らめきに根拠はないが、何故か凛太朗は一縷の望みを感じた。



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