別の話④ あたし ふたつめ
次の瞬間、すさまじい轟音とともに、突き上げるような衝撃があたしの小屋を襲った。
なにか、異常なことが起きているようだ。
小屋の屋根の方からは、メリメリと物騒な音が聞こえて来ている。あたしの小屋がつぶれるのも時間の問題かもしれない。
あたしは、手の届くところにある書き物机の引き出しに何かのときのために入れっぱなしにしておいた魔法のアイテムのことを思い出した。
あわてて飛びつき、引っ張り出す。白い粉の入った瓶。蓋を開いて、あたしの周囲の空間に、その粉を撒き散らす。
瞬時に、その粉が、あたしを大きく包み込むように拡散し、次の瞬間には、周りの空気が固まった。そして、ゆっくりと色を変じていく。
まだ、空気の名残で透明なうちに、見ている目の前で、小屋の中に大量の土砂と泥水が押し寄せるのが見えた。
なにが起こったのだろう?
普通の土石流なんかで、あたしの小屋の周りに張った結界が破られるはずなんてない。にもかかわらず、土石流があたしの結界をやぶり、小屋を押しつぶしたようだ。一体、なにが……?
あたしの周りの空気、固まり、しだいに灰色に変じていく。
今、外から見れば、巨大な岩に見えるだろう。もちろん、見た目だけでなく、その強度も岩そのもの。土砂が押し寄せても、あたしは、この空気でできた岩に守られて、安全なのだ。そして、空気でできているだけあって、この岩、水に浮くことができる。
そのためだろう。なんだか足元が弾むようにして揺れ始めたようだ。今は、水の上に浮かんでいるのだろうな。きっと。
そのまま、しばらくは水に流されて、この場所を離れることにしよう。