表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/26

別の話③ あたし ひとつめ

 カードを引き、表返して、テーブルの所定の位置に置く。

 やっぱりだ。何度繰り返しても、同じ卦がでる。

『すべてを手放せば、得ることもあらん』

 う~ん…… どういうことだろうか?

 すべてを手放せとはどういうことだろうか? あたしの持っているものをすべて捨てれば、あたしがノドから手が出るほどほしい、あのドラゴン・ティアーズを手に入れられるのだろうか?

 ドラゴン・ティアーズ、龍の涙。伝説のドラゴン、すべての精霊の支配者にして、大地の神の息子の化身とも言われるドラゴンの、その涙が何百年もの歳月が経って、ゆっくりと結晶化した石。

 ドラゴン自体、出会うことが稀な希少な生物なのに、そのドラゴンが流す涙を集め、結晶化するまで保管し続けるなんて。だから、そうしてやっとこさでできるドラゴン・ティアーズは、とても、とても貴重で手に入れることが不可能に近いほど困難な代物だ。

 それを手に入れるには、すべてを手放せというのか。

 カード占いの卦に頭を抱え込んでいるあたしの横を、あたしのしもべがヒョコヒョコと通り過ぎていく。あたしがずい分昔に命を与えてやった存在。どんな命令にも忠実に従う下僕。悩みこんでいるあたしの気を散らすまいとしてか、足音を極力立てないようにして家の中を歩き、玄関の方へ向かい、ドアを開いて外へ出ていった。たぶん、裏の畑の植物の世話をしにいったのだろう。

 そんな忠実なしもべをも捨てていけというのだろうか、この卦は?

 いくら考えても結論なんてでない。

 当たるも八卦、当たらぬも八卦というが、なんど占っても同じ卦が出るというのは、それだけで異常なことだ。そうするしか、あたしの望みがかなうことはないのだろう。

 ドラゴン・ティアーズさえあれば、それを材料にして、永遠の若さをもたらす薬をつくり出すことができる。今みたいに多くの魔力と労力をつかって定期的に作り出さなきゃいけない若返りの魔法の薬に頼るのではなく、なにもしなくても、老いさばらえて醜くしわくちゃになるなんてことはない。

 でも、それを手に入れるには、今までに、あたしが築き上げたすべてを捨てさらねばならない。

 ああ、どうすれば……

――ゴゴゴ……

 突然、遠くで低い音がした。

 次の瞬間、あたしの視界が二重にぶれる。激しい震動が襲う。つかの間の浮遊感。そして、


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ