第23話 敗戦
オークの土魔法で土中に生き埋めにされたタケミたち
アリーシャは咄嗟にタケミがかばって、タケミがアリーシャに覆いかぶさるような恰好になった。土の中で、アリーシャと密着する。
ふくよかな感触がタケミの胸に当たる。暗くて見えないが、Gカップはあるであろうアリーシャの胸が、そこにあった。
一瞬ドキッしたが、それどころではなかった。
ドンッ!!!
いきなりとんでもない衝撃がタケミの背中を襲う
ドンッ!ドンッ!!
二度、三度と激痛が走る
ドガンッ!!
土の上からオークが土中に埋もれたタケミたちを棍棒で殴っていた。
ドンッ!ドンッ!!ドンッ!!!
10倍強化で防御力がアップしていなければ、防具をつけてないタケミは一撃で潰れていただろう。
タケミが意識を取り戻した時には、どれくらいの時間が経過していただろうか。
「う、、、、痛てぇ、、、、土の中で息苦しい。タケミが空間を作って居なければ窒息していたはずだ。しかしもうそれも長くは続かない。タケミはなんとか力を振り絞って周りの土をどかした。
「ふう。。。」
一息つき、すぐにアリーシャを埋もれた土から抱き起こす。
「アリーシャ・・・」
声をかけるとアリーシャはうっすらと目を開いた
「タケミ、、、さん、、、」
どうやら大丈夫そうだ。
そこでタケミはハッと気づいて周囲を見渡した。
オークの土魔法で土中に埋められ袋叩きにされたのだった。
しかし、既にそこにはオークの姿は無かった。
先ほど一体だけ倒したオークの遺体も無い。仲間のオークが持ち去ったのだろう。
タケミは急いでブレイズ彫り師のトーマーシュと斥候魔導士のミリアを探した。
ミリアとトーマーシュも、タケミたちと同じように、トーマーシュがミリアを庇う形で埋もれていた。こっちはミリアの咄嗟の土魔法で空間を作っていたようで、どうにか無事だった。
しかし、トーマーシュもまたひどいケガを負っていた。
ミリアも右腕を骨折していた。
「ひどい有様ね。アタシたち」
アリーシャの魔法で回復しながら状況を確認していたとき、ミリアがぽつりと呟いた。
「でも、俺っち絶対アレ死んだと思ったわ。生きててラッキー!でしょ」
トーマーシュが反応する。
確かに、一人でも死者が出ていればこんな軽口も叩けない。
あの戦力差で囲まれて、死ななかったのはラッキーとしか言いようがない。
(レベルアップで割り振れるステータスに《運の良さ》ってパラメータが無いもんな、、、)
タケミはふと思った。
ゲームなんかとは違う。レベルアップして運の良さをアップできるなんて、あるわけなかった。
全員が回復し、野営をしながら今後について話し合う事にした。
「タケミさん、どうしましょう。この先。まだオークを追いますか?」
アリーシャは不安そうに言った。
それもそうだろう。ブレイズで強化されていたトーマーシュと、10倍能力のタケミが盾になったから無事だったが、アリーシャはLv6のFランク冒険者だ。
一撃でも喰らえば即死だろう。
「しかし、このまま引き下がるのはシャクだよ」
ミリアは悔しそうに舌打ちした。
「集団に囲まれたもんな。索敵も全力でやんないと、どうにもならんね。アレは」
トーマーシュも真面目に答えた。
「そうだ。奴ら、魔法も使ってきた。メイジが居るんだ。それにこちらを見つけて即座に囲ってきた。統率者も居る。索敵も出来る。ただの一介の魔物じゃない。知能のある集団が相手だと認識しないとな」
罠を用意し、集団であっという間にこちらを囲って追い詰める。
高度な集団戦術を使う種族。
ナレフカ近辺での被害がほぼオーク族だと言っていた意味をようやく理解した。
これは、危険な敵だ
だが、勝算はあった。
トーマーシュの電撃で麻痺したオークを、タケミが数発ブン殴って倒した。
あれで経験値は取得していて、タケミとアリーシャはLvが上がっていた。
それで得たSPを力に5ポイント全振りした。
これで恐らく急所直撃なら一撃。そうでなくとも顔面などを殴れば麻痺していないオークでも数発で倒せるはず。
「単独で行動しているオークを襲って、もう少しLvを上げよう。これで僕がLv8、アリーシャが7になってる。トーマーシュとミリアのLvは?」
タケミはトーマーシュとミリアに尋ねた。
「え?Lv8になった???何を言ってるんだオマエは」
トーマーシュは驚いた顔でタケミに問いかける
「だから、さっきのオークを倒してLvが8になったんだってば。」
タケミは普通に返答する
「アンタ、Lvの相場知らないのかい?」
横からミリアが口を挟んだ。
「Lvの相場?」
タケミはオウム返しに質問する
「ああ、だいたいLv20くらいまではF。50くらいまではEランク
Dランクはだいたい50Lv以上だよ。アタシもLvは60だ」
「俺っちはLv35だぜ」
ミリアとトーマーシュのLvを聞いてタケミは仰天する
「嘘、、、、そうか、クエストの成功回数じゃなくて、魔物の討伐数でEランクになったから、Lvは関係無かったのか。それに、僕の場合は10倍能力があるから強さだけで言えばDランク並みだけど、全然Lvは上がってなかった」
戦闘に参加しないアリーシャは、パーティで得られる経験値しかもらえないから、余計にLvアップが遅い
「にしても強すぎるだろ。足の速さなんて尋常じゃないし。」
トーマーシュはそれでも信じられないといった顔をしている。
確かに。視力、聴力などの能力も10倍というのは凄い能力だ。さらにLvアップで得たSPを素ステに振り分ければ、それも追加される。さっきSPを5P全部力に割り振ったおかげで、Lvアップ成長含めて6アップ。つまり60アップしている。
力は270となり、Lv6だった時の1,5倍だ。
力業でどうにかというのはカッコ悪いが、あと1か2Lv上げて力にSPを全振りすれば、オークも一発で倒せるだろう。
トーマーシュとミリアで足止めし、タケミが倒す。
戦闘となればアリーシャのライトの魔法での目くらましも有効だろう。
10倍能力でステータスがアップしているタケミの強さは、全身をブレイズで強化しているトーマーシュと比較してもLv8のタケミとLv35とで総合的には互角だが、タケミは圧倒的に力にステータスを割り振っている。素の能力値で言えばLv35のトーマーシュの4倍だ。
Lv60のミリアはブレイズなどでの強化は無いが、魔力と速さは突出している。
地の精霊の契約による加護で、地魔法の効力と素ステも向上しているらしい
こうしてみると、普通のFランク冒険者であるLv7のアリーシャは場違いなほどに弱い。
回復術士とは、それでもパーティに居て違和感が無いくらいに貴重な存在なのだと改めて思い知った。
アリーシャが居なければ、タケミとトーマーシュのケガも酷かったし、ミリアの骨折などは、もはや街へ戻るしか選択肢が無かっただろう。
戦闘になったら、アリーシャには隠れててもらおう。
攻撃がかすっただけで即死してしまいそうだ。
かくして一行は、再びオークへ逆襲することとなったのであった。




