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第19話 ナレフカのブレイズ彫り師(1)

あれから2日後


 アリーシャとタケミはナレフカの街を散策していた。

翌日はアリーシャが教会へ行きたいというのでクエスト受注をせず、タケミは一人でのんびり街を散策した。その時露店の並びで「武器屋」「防具屋」などを眺めて居た時に「ブレイズ屋」を見つけたのだ。


 ブレイズは、トライバルなどとも呼ばれ、要するに魔力の込められたタトゥーを入れる事で能力を強化出来る紋様なのだが、タケミは日本人なのでいわゆる「イレズミ」のイメージがあって、ちょっと抵抗があった。ブレイズは彫り込む時に魔力の抵抗と抗体反応で激痛が起こるので、【針を肌に突き刺して皮膚の下をトゲの魔力が波打つ感じ】と表現される。そんな話を聴いてタケミは怖気づいてしまっていた。


(永続バフが手に入るのは凄いけど、、、そこまでして、、、って感じだよな)


 しかし、行列の出来ているブレイズ屋を見かけて、店の方を覗き込んでみたら、

数人の彫り師がチラッと見えた。多くの場合、起業秘密とかでなかなか見れないそうなのだが、一般向けに広く流通しているデザインの場合は、隠す必要も無い。ということだろうか。そんな活気ある露店街を見て、タケミはアリーシャを誘って買い物に来たのだった。


「シノスと違ってやっぱ人が多くて活気があるね」

タケミも上機嫌だ。

「ついつい食べ歩きが止まらないですね」

アリーシャも機嫌が良さそうだ。


 バムージャンと言う氷菓子のわたあめのようなもの、森の奥で狩る事が出来るというオオクズリ(イタチ熊のようなやつ)の肉のサイコロスーテキ。

まるで祭りの屋台を見て回っている気分だった。


「武器屋もちらっと見たけど、似たような武器が店によって価格がまばらなんだよね」

タケミは武具に関しては昨日のうちに見て回っていたのだが、やはり防具を購入することは無かった。

(動きやすいしな。防御力に不安があるわけでもないし)

Lvが7になった時にSPも割り振って、水、風、重力、無属性の魔法のLvも上げておいた。

MPもHPも増え、単体の強さではDランクの冒険者と同等だろうと思われた。


 しかし、森で見かけた冒険者の一党はDランクのタグを付けていたが、強そうだった。竜人と虫族の戦士、人族の弓使い。それに石化魔法を使う人族の魔導士。


 いっぱしになればあんな感じなのかな、と思ったが、あのパーティにはヒーラーは居なかった。

「ねえアリーシャ。そういえば、先日エルクを狩る時に見かけたパーティには、回復術士って居なかったよね。後衛アーチャーと、前衛戦士二人。後衛魔導士一人。で」

タケミはアリーシャに尋ねた

「そうですね、そもそもヒーラーは数が少ないです。シノスのギルドにも120人の冒険者のうち4~5名だけでしたよ。」

アリーシャに言われて気づいたが、そういえばアリーシャ以外の回復術士をタケミはまだ見た事が無かった。


「虫族、獣人族、竜人族、それにドワーフなどには、ヒーラーはほぼ居ないんじゃないでしょうか。人族とノーム族、エルフ族には居ますが。戦向きの種族にはそもそも回復職になろうという者が少ないですよね」

さらっと言っていたが、つまりアリーシャはけっこう貴重な存在だったのだ。


「確かに。でもそんな貴重な回復術士なら、やっぱりパーティに一人は欲しいのでは?」

タケミは続けて言葉を投げかける

「そうですね。魔道具やアイテムでは限界がありますし。でも、結局蘇生などの高等術を使えるのは司祭クラスですし、冒険者として外を出歩く事はありません。万能ではないですから。。。多くの冒険者が、火力で押し切る戦い方を選ぶんですよね。」


 確かに。以前ホブゴブリンに頭をまるっとかじられたディックは、もはや救う方法は無かった。死んでもレイズやザオリクで生き返るなんて事が出来ないなら、ケガをしない様にするか、ケガをする前に敵を倒すか、だろう。


「それに、タケミさんのように強ければ、滅多にケガをしませんし。そうなるとヒーラーはただのお荷物ですから・・・・」

アリーシャは少しうつむいて言った。


 タケミはまだケガをしたことが無い。確かにそれならヒーラーは不要だ。しかし毒や精神攻撃魔法など、力だけでは押し切れない相手と出くわした時、どうしても必要になる。なんというか、生命保険とか、シートベルトみたいな存在だよな、と一人で考えていた。

「アリーシャが居てくれるから安心して戦えるんだよ。一人だったら、どっかで毒を受けたり、ホブゴブリンみたいに雄叫びで耳をやられていたかもしれない。お荷物なんかじゃないさ」

タケミの言った言葉は本心だ。


「ありがとう」

アリーシャは笑顔に戻った。

しかし、タケミはいずれもっと西、魔王の領域に近いところへ行きたいと思っている。

シノスやナレフカの動物相手はもう飽きてきている。もっと強い魔物とも戦ってみたいという欲求が出て来ていた。


 ブレイズ屋を見ていると、片腕前腕部の小さな紋様だけでも、最低でも銀貨50枚からだった。高いものだと金貨100枚とか。有名な彫り師ともなれば片腕分で家が買えるというが、そのレベルになると、どんな強化効果が得られるのか。それには興味があった。


先日見かけた弓使いの男が、ブレイズ屋に並んでいた。

竜人や虫族は鱗など表皮の問題でブレイズは入れられないのだとか、、、


他の冒険者たちの日々の営みを垣間見た気がした。


明日はギルドで仲間を募り、大森林の奥にも行ってみよう。

この世界で何が出来るのか。もっといろんなものを見てみよう。


信仰ポイント・・・10


そうだ、武神タケミナカタから「名を挙げ信仰を広めよ」という話をしていたはずだが、すっかり忘れていた。

ステータスウィンドウに表示された信仰ポイントとやらを一瞥し、ウィンドウを閉じた。

(別に、、、これをやらなきゃ死ぬとか、そういうペナルティとか無いんだよな)

タケミは普通にこの異世界での冒険を楽しんでいる。


他にも居るのだろうか。


なんとなくそんな事を考えながら食事をしていたら、味わうのを忘れていた。

そしていつものように宿の部屋に戻る。


「この世界で家を買うって選択もあるけど、まだまだずっと先だよな。

まさか魔王討伐なんてガラじゃないし。これから何をしていくか、考えないとな」

天井を見上げながら独り言を言っていた。


耳栓を外すと、まだ遠くでガヤガヤと冒険者が騒ぎながら酒を飲んでいたりする喧噪が聞こえる。


娯楽も少ない、ゲームもスマホも無い世界。

しかし、人の営みはこちらの方がずっと活気がある。


・・・合ってるかもな、こっちのが。


眠りに入り、遠のいていく意識の中で、タケミはそんな事を呟いた


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