悪役令嬢、仕事する。
精霊王ルミリアの執務室には、大量の書類がやってくる。
いや、持ってくるのほうが正しいだろう。
精霊たちは書類をルミリアから引きはがそうとしている。
何故ならルミリアは、ほかの文官(もちろん精霊)たちでもできる仕事も
全部自分一人でやろうとし、その結果倒れる。
やめさせようとしても、「次はがんばるね」と明後日の方向に努力を始める始末。
前最上位精霊が全員いなかったときなんて、食事、睡眠忘れること、実に一か月。
慌てて最上位精霊が机から離れさせ、書類から目を離した瞬間気絶。
城で働く精霊はもれなく大号泣。
『やっどはなれだ~~』by精霊一同
翌日いつも通り仕事するルミリアを見た最上位精霊らは全力で怒った。
ライト様はキョトンと首を傾げるルミリアを見て、宿敵(ライト様視点)の力を借りようか
とすら考えたらしい。
よって、精霊たちにとって、ルミリアを休ませることは、最重要事項となっている。
無理やりでも机から引きはがせ。それが城全体の共通任務だ。
、、、、ということをライト様から切々と語られた私は、
アミレーナさんと一緒にルミリアの執務室に向かっている。
なにやってんのよルミリア!倒れるまで働くとか馬鹿じゃないの!?
しかも環境超ホワイトじゃん!このワーカホリック!
「というわけで休めえええええルミリアァァァ」
「ぅわっ!?一体何が!?と、フィナ?どうしたの?」
「し・ご・と・し・す・ぎ・」
「・・・・へ?」
「子供らどんだけ心配させてるとおもってんのさ!」
「えぇ?でも子供たちにこんなメンドクサイ仕事させるのはちょっと」
「過保護か!仕事ぐらいできるよ!何百年いきてるとおもってるの!」
「いや、皆最初からあんな感じ」
「それはそれですごいわ!?って違う!そうじゃないやーすーめー!」
本っ当に動かないわね。仕事より貴女のほうがメンドクサイわ!なら最終手段よ!
「ルミリア、私、家に帰ろうと思うの。
でもしょうがないよね。仕事ばっかで構ってくれないルミリアが悪いんだもの」
「・・・・・・・・・」
要約:家出してやる!
ルミリアが無言で立ち上がる。
「ごめん。私の負け」
完全勝利!思わずガッツポー……
「やったあああああああああああああ!」
うわびっくりした!アミレーナさん、急に大音量で叫ばないで!
ルミリアもビクッてなってたよ!
でもそんな私たちの様子など関係ないように私の手を取って、
「ありがとうございます!ホントにホンっトウに!」
思わずジト目でルミリアを見やる。
ルミリア、そんな“どんな表情すればいいか分からない”
みたいな顔するぐらいならちゃんと休め。
まさか今気づいたとかじゃないよな?
あ、ほんとに今気づいたんですかそうですか馬鹿ですか?
『馬鹿じゃないもん』
頭の中にルミリアの声が響きます。幻聴を聞くとは、疲れてるんですかね。
『念話だよ、頭に直接語りかけてるの。聞こえてるからね、思ってること。』
あら聞こえているなら丁度いい。
こんなになるまで気づかなかったの?
『仕事中は集中してて、仕事終わりは疲れてたから』
なにやってんのよ。ともかく、これから仕事は自粛すること!
『仕事を自粛って何そのパワーワード』
返事
『はい!』
あれ?私の仕事、即終了?
いいのかしらこれ。
ものすごく心配かけてるルミリアでした。