悪役令嬢、救われる?
パーティ会場になぜか強風が吹き荒れる。
私を拘束していた2人を突き飛ばし
食器は吹き飛ばされ
なのに、中心にいた私には一切の影響はなく。
殿下が強風の中、皆に精霊を呼べと指示する。精霊契約できていない私には無理だけれど。
精霊契約が何より重視されるこの国じゃ、私は本当にお荷物だったんだなあ。
一連の流れを経て、自嘲気味にそう小さくつぶやくと、
『ごめんなさい』
どこからかそう声がした。
その声に安心し、懐かしく思う自分に驚愕する。
聞いたことのない声のはずだ。なのに、
とてもここちよかった。
「いいえ、ありがとう。」
無意識にそう答える。
すると、彼女は私の目の前に、驚いた顔で現れた。
『どうして?私がいたから、貴女はこんな目にあっているでしょう。
貴女は私のせいで傷ついたの。』
後悔を顔に浮かべ、俯く彼女に歩み寄り、目線を合わせる。
「いいえ。それが最善だった。あなたはなにも間違っていない」
すらすらと口から出た言葉。でも私自身はその意味を分かっていない。
なぜか頭に浮かんだ言葉を、そのまま述べただけだった。
『……ありがとう』
彼女はそう言って、私に手を差し伸べる。
『迎えにきたの。一緒に行こう。でも、行きたくないなら断っても構わない。これは、罪滅ぼししたい私の自己満足だから』
迷わずに答えた。
「一緒に行くわ。もう居場所もなくなっちゃったもの。」
言った後、(あっ)と思う。後半口に出しちゃだめだった。ああもう、彼女、また暗い顔になっちゃった。なんとかフォローしないと
「待て!何者だ貴様!」
……は?
え、殿下?それは彼女に言っているのですか?だめでしょうそれは。彼女は、あれ?何者
なんだっけ?でもだめだった気がします!
「不審者を侵入させるとは、そこまで腐っていたのか。」
「さてはアンヌ嬢を妬むそいつにやとわれたな!」
「全く、金だけのお前にならできるだろうが、本当にやるとは、心底軽蔑する」
「ひどいな。精霊もお前と契約なんてしたくないだろう。」
わお、すごいいわれよう。突き飛ばされたはずの2人までいつのまにかアンヌ嬢を囲んで
いるし。
でも一つだけ言わせてください。
察してくださいませんか!
ほら、私も思い出せなかったですけど、周り見たら直ぐわかりましたよ!?
気づいて!? 今スグ気づいて!? この国の未来の為に!!
『もういい。行くよフィナ』
「え!?ちょっと待って、なんかまずいことになっているでしょう!?」
『関係ないよ。自業自得だ。』
「いやよくないでしょう!国が!」
『フィナ、もういいでしょ。国は大丈夫だよ、きっと。』
「確約して頂戴!」
『はい。約束する。関係ない人やいい人は助けるよ』
「…ごめんなさい。私の我儘だった。」
『全然いいよ~。』
なんとか国は大丈夫そう。陛下や両親はいい人だし。
「じゃあ、行きましょうか。」
彼女の手をとる。彼女はその美貌に純粋な笑顔を浮かべ、そして
私たちはその場から消えた。