王子、混乱する
婚約破棄した王子視点です。
一体何者だったのだ
先ほどまでフィナイースのいた場所を見ながら、そう思う。
アンヌは目を皿のようにまるくしている。驚いたのだろう。安心させるよう腕に力を込めた。
消えたということは、高位精霊との契約者だろうか。人だけで空間魔法は使えない。
精霊の嫌われ者を助ける契約者か。おかしなはなしだ。
私からは顔が見えなかったが、上質なドレスと磨かれた薄紫の髪を見るに、どこかの国の
貴族だろう。ならあいつと接点があってもおかしくない。
「フィラン、フィナイースとさっきの女の関係を調べてくれ。」
「かしこまりました。」
「エルドルド様ぁ。アンヌは疲れてしまいましたぁ。」
!!アンヌの疲れを見逃してしまうとは、私もまだまだか。
「ではここでお開きにしよう。皆の者、どうか新たな私の婚約者を祝福してほしい」
会場中で拍手が起こる。ああ、アンヌがここにいて、フィナイースもいなくなって、私は
本当に幸せ者だ。
『祝福、か。』
その呟きが耳に届く。言ったのは、アンヌの契約精霊、上位精霊のヨモギ殿だ。その隣には
私や側近たちの精霊もいる。
他の者たちの精霊はふわふわと浮いており、しかし違和感があった。
皆一様に、怒ったような顔をしているからだ。
『するわけないだろうが!!』
ヨモギ殿が叫ぶ。それを皮切りに精霊たちは己の契約者や我々に罵詈雑言を放ち始める。
『彼女を傷つけるなんて!』
『無実の罪で国外追放?馬鹿じゃねぇの』
『祝福したお前らも同罪だ!』
『最後に至ってはあのお方に[貴様]!?』
『何様のつもりだ!』
なぜだ、私たちは精霊の嫌われ者をおいだしただけなのに。
『もういい!』
『お前と契約したことが一生の恥だ!』
『最悪!ホント最悪!』
そう騒ぐ精霊たちの中、私の契約精霊、ユニーク精霊のシラカバがいう。
『我ら、彼女を傷つけた者の契約精霊は、今この場で、契約を破棄する!』
「っ!待て!」
宣誓したシラカバはそのまま転移する。
精霊たちは続けて転移し、できない者たちも窓から飛び立っていく。
貴族たちが精霊を引き留めようとする声を、呆然としながら私は聞いていた。
そして残った精霊は、最後までフィナイースに味方して捕まえていた
3人の、契約精霊だけだった。




