第84話 ルーナの物語 ルーナパーティーを組む
「ねぇ、君、1人? 良かったら俺達と探索に行かないか?」
受付でクエストを受けていると、男2人、女1人の3人組冒険者パーティーがルーナに声を掛けてきた。
装備を新調してから数日、ルーナは他の冒険者から声を掛けられるようになっていた。
「…ん、良い…よ」
毎日、誰かに声を掛けられ、今回声を掛けてきたパーティーで4組目だ。ルーナは快諾して、3人組とダンジョンに入る。
「ねぇ、あなたも最近冒険者になったの?」
「…ん、20日くら…い前か…らやって…る」
「じゃあ、俺達より少し後輩だな。でもそのわりには高そうな装備だな、どっかの金持ちの家の出か?」
「これ…は、最近作ってもらっ…た。まだお金…は支払い…中」
「へぇー、借金持ちなんだ。大変ね、あなたも」
「ホントだな、鉄ランクの内はあまり稼げないからキツいよな」
「今日は何のクエスト受けたんだ?」
3人組は同じ新人冒険者ということで気さくに話をしてくる。
「今日…は、ラビットベア3匹…と、ハイオーク5匹、あと、パラライハーブ……etc.」
ルーナが受付で受けた8つのクエストを3人組に説明した。
「「「……」」」
「はい?」
その内容を聞いた3人組が首を傾げる。
「……ちょっと待って、どこまで行くつもりなの?」
「10階層…までだ…よ」
「「「えぇっ!?」」」
「ちょっと待て、なんでそんな深層でのクエストやってるんだ? まだ冒険者になって20日くらいだよな?」
「…ん」
「俺達、3人で組んでやってるけど、まだ2階層から先には行ったことないんだぞ。おかしいよ」
「おかし…い?」
「……『おかしい?』って、普通はそうだよ? ダンジョンは下の階層に行くほどモンスターが強くなるんだから戦闘に慣れるまで深層に下りちゃダメって始めに言われなかった?」
「…ん、たぶ…ん」
「でも、ルーナちゃんって確か、受付でクエスト紹介してもらってたよな?」
「そういえばそうだな」
「じゃあ、もしかしてそれくらいなら普通に行っても大丈夫って事なのか?」
ルーナの受けたクエストの異常さに、3人組があれこれ話し合いは続き、ルーナ達がダンジョンに入ってからすでに1時間ほど経過しているのだが、入り口から全然前に進めていなかった。
「なあ、10階層のモンスターって強くないのか?」
「…ん、ここと同…じくらいだ…よ」
「へぇーそうなんだ。じゃあ、大丈夫そうね」
「なら行ってみるか、俺達の受けたクエストはまだ期日先だし、今日はルーナちゃんの受けたクエストやろうぜ」
「OKだ」
「私も賛成」
「…ん」
━━と、3人組は軽く考えてルーナの受けたクエストの為に5階層より下に向かうのだが……
「キャー!」
「くっ! 放せこの野郎!」
「ぬぁー! し、死ぬ……」
第4階層辺りから全然戦力にならない……それどころか足手まといになっている。
ルーナは3人組がモンスターに攻撃を受けそうになる度、素早くモンスターの息の根を止め、なんとか誰も怪我をせず探索出来ている。
「はあ、はあ、ぜ、全然1階層と同じくらいじゃないじゃないか……」
「あなた、いつも1人でここまで来てるの?」
3人組はほぼ役に立っていないのだが、体力も精神も大きく消耗していて、肩で息をしながらルーナに尋ねる。
「…ん、そうだ…よ」
「い、異常だ……」
「わ、悪いんだけど……俺達は、これ以上先にはついて行けそうにない。戻らせてくれないか?」
「…ん、仕方ない…ね」
「それと、申し訳ないんだけど、第2階層まで一緒に戻ってもらえないかな?」
「…ん、良い…よ」
ダンジョンに入って半日も経たない内に3人組はの心は折れ、リタイヤ宣言。ルーナは3人組が安全にギルドに戻れる場所まで送り届けて━━
「ルーナちゃんは俺達の事は気にしなくて良いから自分のクエスト終わらせて」
「また機会があったら一緒にやろうよ」
「ごめんね。付き合わせちゃって」
━━と、そう言われ、その場で別れ、1人深層に戻った。
こんな感じに新人冒険者に声を掛けられては別れるを繰り返し、新人冒険者の中で噂は広まり、暫くすると、ほとんど誰も一緒にやろうと誘ってこなくなった。
そして、ルーナが冒険者になってから60日が過ぎた頃。ルーナは冒険者史上最速で青銅ランクにランクアップした。
「おめでとうございますルーナさん。今日から青銅ランクですね。って本当はもっと上でもおかしくないんですけど、規定だから仕方ないですね」
「…ん、ありが…とう」
「この調子で上を目指しましょう」
冒険者になってから毎日、受付でクエストを紹介してもらっていたルーナ。受付嬢はすっかりルーナの担当気分になっており、自分の事のように喜んでいた。
ルーナが最速でランクアップ出来たのは、ルーナがギルドに行く時間、行く受付に居る、この受付嬢が、ルーナが淡々と紹介したクエストを誰よりも早くクリアする事に調子に乗って、普通鉄ランク冒険者が受けるのは危険だと判断されるクエストを紹介し、ルーナがそれも難なくクリアした為、更に調子に乗って青銅ランクでも普通はやらない難度のクエストまでルーナにやらせていたのが要因である。
ある意味、お手柄なのだが、このお調子者の受付嬢、他のギルド職員にこの事がバレた時に、上司から、かなり酷く怒られたのは言うまでもない。
ルーナが青銅ランクになり、武具の分割払いも終了し、ほぼ誰からの誘いも受けなくなり、ソロ探索が定着したある日の事。
ルーナは今日もクエストをこなす為、ダンジョンで探索をしていた。
「おい、おかしいぞ。ダンジョンに子供が居る」
ダンジョン第11階層のとある場所で、聞き覚えのある話し声が聞こえてきた。
「またかよ。ダンジョンに子供が居るわけないだろ?」
「じゃあ、あれは幻覚か?」
ルーナが声の方を見てみると、狐目の男があの時と同じようにルーナを指差し、騒いでいた。
「…ん、久しぶりだ…ね」
ルーナは4人組に近づき、声を掛ける。
「……んん? お前、どっかで……?」
「あっ! あの時の迷子のガキ」
「おおっ! そうだ、思い出した。あの時の新人じゃねぇか、装備が変わってるから気付かなかったぜ」
「もう、こんな所まで下りて来てるのか? 凄いな」
男達はルーナの事を思いだし、少しテンション高めに騒いでいた。
「いや、また迷子なんじゃね?」
「迷子…じゃ、ない…よ」
「なんだ、違うのか。また稼がせてもらおうと思ったのに」
「って事はもうここのクエストを受けてるって事だよな?」
「…ん」
「凄いな。鉄ランクのクセに」
「鉄じゃない…よ」
「はい?」
ルーナは不思議そうにしている4人組に冒険者タグを見せる。
「はあっ!?」
「おいおい、こいつ青銅ランクになってるぜ」
「嘘だろ? まだ冒険者になったばかりでもうかよ……」
「そういや、冒険者史上最速のランクアップって噂になってる奴が居たな、お前の事か」
4人組はそれぞれ驚きながら噂を思いだし、何やら4人で話始めた。
「なあ、あのクエスト、こいつ連れてったら良いんじゃねぇか?」
「なに言ってやがる。いくら最速ランクアップしたって言っても青銅に上がったばっかの奴じゃ邪魔なだけだろ?」
「いや、冷静に考えてみろ。それだけの実力があるからこの短期間でランクアップしたんだろ。試しに組んでみるのも良いんじゃねぇか?」
「そうだな、実力みて使えそうなら良いかもな」
少しの間話し合いは続き、4人組はルーナの方を向く。
「なあ、お前。今から俺らと一緒にやってみる気ないか?」
「…ん?」
ルーナは少し首を傾げ、男達を見つめる。
「だから今から少しだけ俺らとダンジョン探索しねぇか? って聞いてんの」
「…ん、良い…よ」
ルーナは快諾し、4人組と一緒にルーナの受けていたクエストをやることになった。
━━4人組と一緒にクエストをこなす事半日。
ダンジョン探索を終えてギルドに帰る道中、4人組はルーナから少し離れて歩きながら、小声で話をしていた。
「やっぱ強いな。あの時も思ったが、こいつの強さは俺らより上かも知れん」
「……強いのは良いんだけどよ……ちょっと気味が悪いぜあいつ」
「確かにな、人形と一緒に居るみたいだ。それに……」
ルーナの強さには目を見張るものの、その無表情に淡々とモンスターを倒し、返り血を浴びる姿は、血の通わぬ人形の様に4人組の目には映り、不気味に感じ始めていた。
その上、食事休憩に入った時、ルーナが倒したモンスターの肉を生のまま口にしたものだから全員が食欲を失い、食事が喉を通らなかったという事件が起き、気味の悪さに止めを刺したのだ。
誰も注意しなかった為、ルーナは自身が他の冒険者に声を掛けられなくなった理由を知らないのだが、他の冒険者とダンジョンに入った時にも同じように生肉にかぶりついていたのが1番大きな理由だった。
「良いじゃねぇか、多少気味が悪いのぐらい我慢すりゃ。あれクリアしたら俺達は、銀ランク冒険者だぜ? クエストが終わるまでの我慢だ。連れて行こうぜ」
話し合いは終了し、4人組はルーナを呼び話を始めた。
「なあ、暫くの間で良いから俺達と組まねぇか?」
「…ん、良い…よ」
「おおっ! 受けてくれるか、宜しくな俺はグウェンってんだ」
「…ん、宜し…く。私…はルーナ」
ルーナはこのあと十数日間グウェン達と行動を共にし、一緒に幾つかのクエストをこなす事になるのだが、グウェン達が銀ランクに上がった日に「お陰で助かったぜ。またな」と、グウェン達から一方的に別れを告げられ、再びソロ冒険者に戻ったのだった。




