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第75話 ルーナの物語 ルーナ、エルフと別れて冒険者に出会う

とりあえず作品の見直しが終わったので、今日からまた、コツコツ書きます。

 近くで動く何者かの気配を感じてルーナは目を覚ます。


 ガバッと体を起こし素早く警戒体勢で構えると━━


「あら、ごめんなさい。起こしちゃったわね」


 ━━其所に居たのはエルフの女性だった。


 ヴィオラはルーナ達を起こさないよう、そっと布団を出たつもりだったのだが、自然の中で警戒心が鍛えられたルーナは僅かな気配でも直ぐに対応出来るほどの気配察知能力を身に付けていたため、気付かれて起こしてしまったのだ。


『そうだった……昨日はグリシナの家に泊めてもらったんだ……』


 ルーナは目の前に居るヴィオラと隣で寝ていたローゼを見て昨日の事を思い出す。


「おはよ…う」


「おはようルーナ。でもまだ早いし、ご飯が出来たら起こしてあげるからもう少し寝てても良いわよ」


「…ん、手伝…う」


「そう? ありがとうルーナ。じゃあ、お願いするわね」


「…ん」


 まだ寝ていたローゼに布団をかけ直して2人は寝室を出ていく。


 ルーナは先ず、マジックバッグを取りに行き。ヴィオラの後を追ってキッチンに向かった。


「これ、使っ…て」


 キッチンに入るとルーナは、マジックバッグから海で作った大量の干し肉を取り出しテーブルに置いていく。


「まあ、こんなに沢山どうしたの?」


「海…で作っ…た。塩…もあ…る」


 驚くヴィオラの前に、海で作った塩も置く。


「凄いわね。じゃあ、朝はこれを使って何か作りましょうか」


「…ん」


 そう言ってヴィオラはルーナから干し肉と塩を受け取り、塩指に着けて1舐め味見をした。


「……!? ルーナ、ひょっとして塩も自分で作ったの?」


 塩を舐めたヴィオラが、一瞬何とも言えないような表情を見せ、ちょっと涙目な笑顔を作ってルーナに尋ねる。


「…ん、海の…水、煮…て作っ…た」


「途中でちゃんと濾した?」


「……?」


 ルーナは濾すの意味が解らず首を傾げてヴィオラを見つめた。


「そっか……なら、ちゃんとした塩の作り方を教えてあげるわね」


 ヴィオラはそんなルーナの姿を見て察し、笑顔を見せると、海水から塩を取り出すちゃんとした方法を丁寧に教え、ルーナは自分の塩の作り方が間違っていた事に初めて気がつき感動するのだった。


「ありが…とう、ヴィオラ」


 ルーナはエルフの村で生活をしている間に様々な生活の知恵を学んだ。


 食べられる植物や逆に食べてはいけない植物。症状によって効果の有る薬草や危険な毒草。美味しく食べられる獣やモンスターや毒を持っていて食べてはいけない獣やモンスター等、ルーナも父から学んでそれなりの知識は持っていたのだが、エルフの教えてくれた知識は比にならないほど多く、詳しかった。


 流石に全てを覚える事は出来なかったものの、グリシナを始めとするエルフ族はとても親切で、ルーナの為に、それらの知識を紙にまとめ、1冊の本のようにして渡してくれた。


 共に狩りに出かけ、採取をし、ローゼ達子供とも一緒に遊んだ。


 初めて目にするエルフの大人が使う魔法や、エルフが作った魔法薬にも驚かされ、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。



 ━━そして、種の季節が終わり、暖かい芽の季節がやって来る。


「そうか、もう行くのか……」


「…ん、ここは楽し…い。ずっと居た…いと、思った…けど、お父さん…と、お母さん…の行きた…かった所に…も行きた…い。だか…ら」


 エルフ族は優しく、ルーナは短い間に本当に、この村が好きになっていた。しかし、両親への思いを忘れる事が出来ず、旅立つことを決心する。


「そうか、ルーナがそう決めたのなら止めはすまい。無理はするんじゃないよ?」


「…ん、ありが…とう」


 寂しそうにしながらも送り出す事を受け入れたグリシナは優しく笑顔を作り、ルーナを抱き締め、ルーナは抱き締められながら静かに一筋の涙を溢した。



 ━━そして、出発の朝がやって来る。


「ルーナ……元気でね。私の事、忘れたらダメだからね」


「…ん、お姉ちゃ…ん。ありが…とう、忘れ…ない」


「「「「「「「ルーナぁ」」」」」」」


 ローゼと涙ながらに別れの挨拶をしていると、仲良くなった他のエルフの子供達も駆け寄って来て、泣きながらルーナの名前を呼ぶ。


「ルーナ、気を付けて行ってらっしゃい」


「…ん、沢山ありが…とうヴィオラ」


 ヴィオラはそっと優しくルーナを抱き寄せ、頭を撫でて最後の別れを済ませる。


「ルーナや、これを持って行きなさい」


 みんなとの別れを済ませると、村長が合わせて20本の数種類の魔法薬をルーナに手渡す。


「どんな時に使う物かは瓶に括り付けているタグに書いてあるから必要な時に使いなさい」


「…ん、ありが…とう…村長」


「あまり長くなると余計に別れが惜しくなるから、そろそろ行くとしようか?」


「…ん」


 魔法薬をマジックバッグに詰めると、グリシナがルーナに声を掛け、2人は一緒に森の外へと向かった。


 ルーナは村が見えなくなるまで何度も振り返り、見送るエルフ達に手を振る。



 ━━森の外にやって来たルーナとグリシナ。


「俺が送ってやれるのはここまでだ。たぶんもう会うことは出来ないだろう。でも、俺は……俺達はずっとルーナをもう1人の家族だと思っているよ」


「…ん、ありが…とう。私も…思って…る」


 通常、エルフの村は他の種族に発見されないように、認識阻害結界や誘導結界等で隠されている。そして、数年~数十年に1度、別な森に移り住む。そういった理由からグリシナ達エルフはルーナとはもう会えないと考えていた。そして、ルーナにもその事は説明している。


「ここから(向こう)に暫く行くと人間族がよく利用している道がある。それを辿って行けば人間の集落にたどり着くだろう」


「…ん、沢山…ありが…とう」


 グリシナが指さしルーナに進むべき方向を教え、ルーナは最後の礼を言って歩きだした。


「縁があればまた会おう」


 15mほど歩いた所で小さく呟くグリシナの言葉が聞こえたが、ルーナが後ろを振り返った時には、もうグリシナの姿はなく、ルーナは思い出を胸に街道を目指した。



 ━━グリシナに教えられた方角へ歩くこと3日、まだ街道は見あたらない。


 ここまで、これと言って危険なものとの遭遇はなく。出発前に持たされた食事を食べながら順調に旅は進んでいる。


 大きな木の葉に包まれた最後のお弁当を食べ終わり、暖かい陽射しと、柔らかな風に吹かれながら村の事を思い出していると━━


「「「「うわあぁーーー!!」」」」


 数百mほど離れた森の辺りから誰かの悲鳴が聞こえてきた。


 悲鳴の主はルーナの位置からでは見えなかったが、間違いなく誰かが居る。


 ルーナはお弁当包みをマジックバッグにしまうと、それを背負い、声のする方へと駆け出した。



「な、何でこんな所にミノタウロスが!?」


「ちきしょう、誰だよ? 薬草採取の簡単なクエストだって言った奴は……」


「私の所為じゃないわよ!? こんな所にミノタウロスが居るなんて情報に無かったんだから」


「しゃべって無いでしっかり戦え! 死にたいのか!?」


 ルーナが駆け付けると、森に入って直ぐの所でガタガタ振るえながら赤茶けた牛頭の2足歩行モンスター2匹と対峙している4人の男女を発見した。


 ミノタウロス。頭は牛、体は人間に近い形のモンスター。体長は2m~3m程で、手足は短めの筋肉質。草食だが性格は狂暴で、好戦的。グランセルダンジョンの10階層クラスに匹敵する。



『……狩りの途中? 獲物の横取りはダメって、お父さんが言ってたから、手を出したらダメだよね?』


 そうは思いながらも先程の悲鳴と、4人の様子を見る限り助けないといけないのでは? とも思うルーナ。


「俺まだチューもしたこと無いんだぜ? こんな所でしにたくねぇよ」


「バカ野郎! 俺だってしたことねぇよ」


「死にたく無かったら戦え!」


「でも私達じゃ、どの道無理だよ……」


 半泣きになりながら情けない言葉を発している3人を焚き付ける様に4人組のリーダーらしき男が発破を掛けるが、3人は弱気な発言をしながら必死に守りを固めて動かない。


『……とりあえずモンスターやっつけて、怒られたら謝れば良いかな?』


 そう、自分に言い聞かせ、ルーナは父の形見の斧を両手に持ち、ミノタウロスの背後から一気に距離を詰め、ジャンプ1番、脳天へと振り下ろした。


「グモオォォーー!!」


 斧はミノタウロスの頭を一撃の下に叩き割り、ミノタウロスはそのまま前のめりに倒れ込む。


「ンモオォォーー!」


 倒れた仲間を目にしたミノタウロスが振り返り、その斧を持った少女を睨み付ける。


「今だ!! せやぁー!」


「「「うわあぁーーー!!」」」


 ミノタウロスが自分達から目を離した瞬間。4人組のリーダーらしき男がミノタウロスの背中から剣を突き立て、それに続いて他の3人も悲鳴を上げながらミノタウロスに攻撃を仕掛ける。


 恐怖心の中、何度も何度もミノタウロスに武器を叩き付け、4人の攻撃はミノタウロスが動かなくなった後も止まらなかった。


「勿体な…い。もう死…んで…る」


 せっかく食べられる美味しいモンスターをぐちゃぐちゃに切り刻まれて、ルーナは勿体ない精神に駆られ、つい声を漏らしてしまう。


 その言葉で4人組は我に帰り、動きを止めた。


「はあ、はあ……た、助かった……」


「うわーん、怖かったよぉ」


「だぁー死ぬかと思った……」


「本当にマジでヤバかったな……って、君誰!?」


 3人は腰から砕け落ちる様に座り込み、リーダーらしき男はルーナに気が付き驚きの声を上げる。


「…ん、通…り…掛かっただ…け」


「助けてくれたのは君だろ?」


「…ん、狩り…の邪魔し…た?」


 ルーナは手を出した事で怒られないか考えながら首を傾げて男に返事をした。


「いや、邪魔なんてとんでもないよ。助かった、ありがとう」


「…ん、なら…良かっ…た」


 お礼を言われてホッとするルーナ。4人組はルーナの姿を見て少し頭の中がパニックになっていた。


 ルーナの現在の身長は127cm。どう見ても子供にしか思えない。その少女が自分達が、我を忘れる程恐怖したミノタウロスを一撃で倒し、自分達を助けてくれた事に驚きすぎて、受け入れるのに頭と心が付いてこないのだ。


「き、君はこんな所で何をしていたんだい?」


「…ん、町…探して…る」


 最初に落ち着きを取り戻したのはリーダーらしき男だった。


「町?」


「…ん、ずっと…旅…して…る」


「1人でかい?」


「…ん」


 リーダーらしき男はゆっくり深呼吸をして先ずは落ち着いて考える。


『うーん……子供に見えるけど子供ではないのか? 実はもう大人で、結構な実力者? 実は冒険者とか? いやいや、それなら有名になってるだろ……こんな子供にしか見えない冒険者なんて……』


「ちなみに年は?」


「……たぶん…もう12…才」


 それを聞いた4人組は一瞬、完全に思考が停止した。


「「「「……はあー!?」」」」


「12才!?」


「…ん、たぶん…そう」


「たぶんってどういう事?」


「8才…から、ずっと旅…して…る。今…いつ…か解らな…い」


「「「「なんだってぇー!!?」」」」


 驚愕の事実を知らされ目玉が飛び出さんばかりに驚き、顎が外れそうなほど口を開いて固まる4人組。


「……に、人間だよね?」


「…ん?」


 言っている意味が理解できず首を傾げるルーナ。


「いや……ごめん、ごめん。ちょっとビックリし過ぎて変な事言った」


 リーダーらしき男は、一生懸命心を落ち着かせようと深呼吸を繰り返し、少しずつ冷静さを取り戻す。


「ふぅ……よし!」


 リーダーらしき男は息を吐き、2度頬を両手で叩きルーナに目を向けた。


「助けてくれてありがとう。町を探してるんだよね?」


「…ん」


「じゃあ、俺達と一緒に来ないか? 俺達もこれから町に帰る所なんだ」


「ち、ちょっと、ルスカ? 大丈夫なの?」


「何がだよ」


「この子、危険なんじゃ……?」


「助けてもらっといてそれは無いだろ? ユウリ、この子に謝るんだ」


「ご、ごめんなさい」


 リーダーらしき男(ルスカ)が不安そうに意見した女の子(ユウリ)に向け厳しい表情で注意すると、ユウリはシュンとして、ルーナに頭を下げた。


「仲間がすまなかった。それで、どうだい? 一緒に町に行ってくれるか?」


「…ん、迷惑…じゃ…なかった…ら」


「良かった。俺は冒険者をやってるルスカだ。こいつはユウリ、それと、そこの2人がガイとダルだ」


 爽やかそうな顔のルスカ、大人しそうな雰囲気のユウリ、ちょっと怖い顔の無精髭のガイ、頬に傷のある笑顔が怪しげなダル、ルーナは4人の顔と名前を覚え自分も名乗る。



「…ん、私…は、ルーナ」


「宜しくな」


「…ん」


 ルーナはルスカ達と共に町に向かうのだった。

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