第43話 アレン目を覚ます
今回も三人称視点になります。
アステル達がアレン達を連れ転送魔法陣で家に帰った後、1人残ったエリーは倒れている盗賊達に視線を向ける。
盗賊は誰1人死んではいないが、全員瀕死の重症を負っていた。
全員の手足を土魔法で拘束し回復魔法で傷を癒し、続いて高さ2m幅10m程の岩壁を作り、そこに盗賊達を磔にする。
ゆっくりと磔にした盗賊達に近寄り、アレンの傷付いた姿を思い返し、エリーはこれまでに感じたことのない感覚を覚える。それはルーナ達と出会うまで知らなかった他者の為に感じる怒りの感情。
竜族以外と深い交流のなかった頃には、他の種族がどうなろうとほとんど感情を揺さぶられる事は無かった。竜族は最強ゆえに理不尽な暴力には力で対抗出来ていた為、自身の家族とも思える相手が、理不尽に嬲り殺しにされそうになるなど初めての経験なのだ。
エリーはその感情を内に抑え込み
「いつまで寝ておる」
そう言って気絶している盗賊に弱い雷魔法でショックを与え目を覚まさせる。
「「「「「ぎゃああぁぁぁーー!!」」」」」
悲鳴と共に盗賊達が目を覚ます。
「さて、いくつか質問に答えてもらおうかのう」
エリーは感情の圧し殺した冷たい視線を盗賊達に送り淡々と話始めた。
「子供を拐ったのは金の為じゃな?」
「んだぁ!? てめ━━ぎゃああぁぁぁーー!!」
エリーの質問に威圧的な態度で返そうとした盗賊達のリーダーらしき大男の右腕が一瞬にして灰に変わる。大男は痛みに耐えられず意識を失った。
「誰が質問の答え以外を口にして良いと言った?」
「そ、そうだ金の為だ」
エリーの殺気を帯びた視線が盗賊達に刺さり、青ざめた盗賊達、傷の男が直ぐに質問の返事をする。
そこからの盗賊達の態度は大人しく、恐怖に体をガタガタ振るわせながらエリーの質問に答える。
デイジー達に目をつけた経緯、町への侵入経路、アレンを嬲った理由等を聞き出し最後にエルフの売り先を聞き出す。
エルフ族を買い取っている所は幾つかあるらしく、この盗賊達はイルムの町から西へ数kmにある森の古びた屋敷に連れて行く予定だった。他の場所は知らないらしい。屋敷の詳しい場所を聞き出し質問を終えたエリー。
「さて、己らの処遇じゃが」
「た、頼む殺さないでくれ」
「助けてくれ」
「案ずるな、殺しはせぬ。死などという生ぬるい許しは与えぬ」
質問を終えたエリーに命乞いを始める盗賊達。エリーは冷たい目付きのままそう言い、盗賊達の目の前に魔法陣を展開させる。
「これは4000年ほど前に滅んだ国で開発された、呪術と言うろくでもない術の1つでのう。己らは痛みの感覚が常人の1000倍になる変わりに、致命傷や重症は瞬時に癒されるようになるのじゃ。じゃが傷は治るにつれ通常より治りは遅くなり中々完治はせぬ。余程の事がない限り死ぬことは出来ず、意識を失う事も正気を失う事もない。アレンの苦しみの数分の一でも味わうがよい」
盗賊達の全身に黒い複雑な模様が刻まれ、エリーが盗賊を拘束していた土魔法を解除したと同時に、風魔法を放ち全員の足が切断される。
「「「「「ぎゃああぁぁぁーー!!」」」」」
足は切断された瞬間に繋がり、傷が治るにつれ治りが遅くなり、通常の1000倍の痛みが盗賊達を襲う。
痛みでその場に崩れ落ちる盗賊達。手を地面に付くと普通なら気にもならない小石の感触が、激痛になって盗賊を襲い倒れのたうち回り、のたうつほど全身奥深く小石が食い込む様な痛みを与える。
「1つだけ忠告しておいてやるのじゃ。なるだけ水場には近付かぬ事じゃ、溺れても死ねず、気を失う事も出来ぬからのう」
薄笑いを浮かべそう言い残し、エリーはオーキッドが書いた転送魔法陣を消し、その場から飛び去った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
アレン達を連れ家のリビングに姿を現したアステル達。
突然現れたアステル達に一瞬戸惑いを見せるユミリア、アイリス、ヴァイオレットだったが、アステル達の腕に抱かれている、アレン達に気が付き一斉に駆け寄り、無事を知ると涙を流し喜んだ。
助けに行った時のアレン達の状況をあらまし説明し、暫くして落ち着くと、オーキッド夫妻はデイジー達エルフの子供をエルフ村へ連れ帰る。
ユミリアとアイリスは血塗れのアレンの服を脱がせ、全身をキレイに拭いて着替えさせ、その間にアステルとルーナはユミリアに促され順番にお風呂に入る。
アステル達も、いつ目を覚ますか解らないアレンが心配で、その場に居たかったが、返り血で染まっていた為、仕方なく先に洗い流す事にしたのだ。
アステルが戻って来ると、ユミリアが着替えさせたアレンを優しく抱いてリビングのソファーに座り、その横でアイリスがアレンの手を握っていた。
「ん……うーん……ん?」
アステル達3人が見守り、ルーナがお風呂から上がりリビングに戻って来たタイミングでアレンが目を覚ます。
「あれ? 何でお母さんに抱っこされてるの?」
「「アレン……」」
やっとアレンが目を覚ましたことに安堵したユミリアが再び目に涙を浮かべアレンを強く抱きしめ、アイリスも同じように目に涙を浮かべアレンの手を強く握った。
「痛いよお母さん、お姉ちゃん」
アレンは少し照れたような表情で嬉しそうに笑う。
「気が付いて良かった。アレン何があったか覚えてるか?」
「うん……覚えてる。デイジー達は無事?」
「ああ、無事だ。って、死にかけといて人の心配かよ。本当にお前は……」
アステルは優しく微笑みながらアレンの頭を撫でる。
「アレン、頑張った…ね。もう、痛いところはな…い?」
「うん、大丈夫。なんともないよ」
そう言ってなんともないところを見せようと床に下りようと体を動かすが、ユミリアとアイリスが離してくれず、動くことが出来ないアレン。
じたばたしていると、アレンのお腹が大きな音を鳴らす。
「えへへ、そう言えば朝ごはん食べてからなんにも食べてないや」
少し照れながらアレンが笑う。
「直ぐにご飯準備するわね」
「うんと美味しいの作るからね」
元気にお腹を鳴らすアレンの姿に安心し、ユミリアとアイリスが微笑み、アレンから離れキッチンに向かった。
食事の支度が出来る頃に丁度エリーが家に戻り、皆揃って食事を済ませると、ユミリアとアレンの寝室にアイリスも混ざり今日は3人一緒に眠る。
アステル、ルーナ、エリーはアステルとルーナの部屋に集まり、今後について話し合いを始めた。




