第4話 ジェリー狩り
マッピングクエストから10日、僕は一人でダンジョン1階層にジェリー狩りに来ていた。
ルーナさんはと言うと、ギルドの依頼で北の町近辺に現れたドラゴンの討伐に出掛けているのだ。着いて行きたかったんだけど、流石に危険だと断られ、ルーナさんが居ない間は1階層で修行するように言われた。
今日は何故ジェリー狩りなのかと言うのは、遡ること9日、以前お世話になった居酒屋にジェリーの核をお土産に持って行ったら店長に━━
「ジェリーって食えるのか? 始めて知ったぞ。新発見食材かも知れんからギルドで確認してみろ」
━━と、言われたので持っていってみると、店長の言った通り新発見食材で、ギルドからかなり高評価を受け、今ではちょっとしたジェリーブームが起きている。
青銅ランクに上がれる日は近いな、ふふふ
ちなみに、何故1階層のジェリーの核が新発見食材なのかと言うと、実は鑑定スキルはレアスキルで数百人に1人くらいの割合でしか発現しない上に、○○鑑定と言う風に種類が幾つもに分かれるので食材鑑定に限定して言えば数千人に1人の割合になる。この手のスキル持ちは、危険な冒険者より遥かに儲かる仕事があるので冒険者になることはないのだ。
つまりは僕自信が非常に希少な存在、戦闘向けのスキルはほぼないけど、冒険者には向いてないとか言われるけど、そんな事は関係ないんだ。目指せ二つ名持ち、目指せルーナさんの右腕!
あれこれ考えながら前回発見したジェリーの生息域へ向かっていると、スリンゴの木の手前辺りで三人組の冒険者パーティーを発見した。
一人はチャラそうな僕と同じくらいの体格の男の人、一人は寡黙そうな大男、一人は華奢な女の人。
あれ? 何処かで見たこと有るような?
「あ! 居酒屋で会った人!」
あ、また声に出してしまった。
「ん? 誰だ? おおー、ゴブリンにやられた奴か」
「その覚え方はどうかと思うんですが…」
「ははは、名前聞いてなかったからな今日は1人か? ルーナ様は?」
「今日はドラゴン狩りに行きました」
「なんだ居ないのか、残念……」
会いたかったのは解るけど、あからさまにがっかりし過ぎだろ……
「今日は1人で何を狩るんだ?」
「ジェリーです」
「新食材集めか、最近依頼が出回ってるよな」
「皆さんはどんなクエストですか?」
「俺達はクエストじゃなくて戦闘訓練だ。せっかく会ったんだから一緒にジェリー狩りに行かないか?」
「良いんですか? 宜しくお願いします。僕はアステルと言います」
「俺はサトス、そっちの大男がダナンで、この娘はメインだ宜しくな」
一人ずつ握手を交わしジェリー生息域へ移動を開始、移動しながらサトスさん達の事を聞いてみた。
サトスさん達は僕より半年ほど前に冒険者になり、パーティーを組み始めたのは60日ほど前から、グランセルだけではなく他の町にも行くことがあるらしく、サトスさんとダナンさんか基本的に近接武器中心の前衛戦闘タイプで、メインさんが魔法戦闘中心の後方支援タイプと役割を分けているらしい。
「ちょっと待て! そんなに走ってたらモンスターの警戒が出来ないだろ! もう少し慎重に進めよ」
「ルーナさんと一緒の時はもっと早いですよ?」
「馬鹿かお前は、今日はルーナ様は一緒じゃないだろ!? モンスターの群れに遭遇したら対処出来ねえだろ?」
「大丈夫ですよ。もうゴブリン10匹くらいなら1人でやれますから、今日は皆さんも居ますし」
「は? ちょっと前までゴブリンに武器奪われてた奴が何言ってんだ?」
「ふっ……昔の話ですよ。ルーナさんに鍛えてもらいましたから」
僕が自慢げに語ると、サトスさん達はどんな鍛え方をしたのか気になって仕方がない顔をしている。
「羨ましいな、ルーナ様に鍛えてもらえるなんて」
「やってみます? ルーナさん式戦闘訓練」
「おお、教えてくれ」
「じゃあ、進みながらやりましょう」
暫く進んだ先に15匹程のオークを発見
「良いのが居ました、あの数なら良い訓練になりますね。じゃあ、サトスさんからゴーです」
「……ゴー?」
「はい、あの群れに突撃して下さい」
「いやいやいや、死ぬだろ?」
「大丈夫、何とかなります。危なそうだったら皆で助けに行きますから、ルーナさんが居たらあの中心に投げ込まれますよ」
「無理無理無理無理! 無謀過ぎる。頭おかしいのか? 冗談じゃ済まねえぞ、そんな訓練あるかよ」
「そんな事、僕に言われても……僕はいつもやってますよ?」
「ははは、じゃあ、手本見せてくれよ」
「しょうがないですねぇ」
全く信じてないな、本当にいつもやってる事なのに……さて気合い入れるか
「うおーりやーー!! だあー! とあー! すりゃー! うきゃー!」
今日は結構動けてるかも……
「んなー! わきょー! ちえりゃー!」
十分程のの格闘の末、半分のオークを倒し、残りのオークは何処かへ逃げて行った。
「はぁはぁ……み、見てました? 何とかなりましたよ」
「「「……………………」」」
「お前……いつもあんな事やってんの?」
「はい、今日はまだ楽な方ですよ、初めての時はゴブリンジェネラルの前に投げ落とされましたから」
「……うん、凄いなアステルは、俺達はやっぱり自分のペースで鍛えることにするよ、はははは……」
サトスさん達は乾いた笑い声を上げながら、ルーナさんに弟子入りするのだけは止めとこうと心に誓ったと言う。
その後サトスさん達のペースに合わせて進むこと数時間、僕達は前回マッピング中に見付けたジェリーの巣に到着した。
やっぱりまた湧いてるぞ、これだけ居れば納品分の倍は取れるし、ルーナさんが帰ったら新作料理作って喜ばせてあげよう。
「さあ、狩りますよ」
「「「おう!」」」
手分けしてジェリー狩りを始めるとサトスさん達は魔法を使って遠くからジェリーを倒している。
「わぁ! ダメですよ魔法使っちゃ!」
「へ? 魔法使わないと倒せないだろ?」
「剣で倒せますよ、魔法で倒すとジェリーの核に麻痺成分が入っちゃうんで剣で1突きにしないとダメなんです。依頼受けた事無いんですか? ちゃんと書いてありますよ?」
この発見をしたのも僕……と言うより、たまたま他の冒険者さんが持って帰ってきたジェリーの核を目にした時に食材適正が無かった事で気が付いた。正式に認定される前に気が付いて良かったよ。
「アステル、切っても倒せないんだけど?」
「核を突いてください」
「どこだよそれ? あっ! ヤバいダナンが麻痺って喰われそうだ」
慌てて僕が駆けつけジェリーを倒し、メインさんが麻痺消しを飲ませ事なきを得た。
「良いですか? よく見て下さいここですここ。せいっ!」
「全っ然解らん」
僕も最初は解んなかったよな、鑑定スキルに反応しなかったらあんな状態になったんだろな……
「よく見るとジェリーの体内で動いてる物体が見えますんで頑張って下さい」
今はスキル無しで核の位置を掴む事が出来る様になったけど、あれからもう500匹はジェリーを倒しているし慣れだよな……
僕達はジェリーを倒し終え核を拾い集める。
「それは麻痺毒入ってるからダメですよ」
サトスさん達が魔法で倒したジェリーの核まで拾っている
「どうやって見分けるんだ?」
「普通に見たら見分けつきませんけど、僕食材鑑定スキルがあるんで」
「マジで? 何で冒険者やってんの?」
「好きだからです。子供の頃からの夢だったからです」
「いやいやいや、何が悲しくて特殊技能持ちが命懸けの仕事選んでるんだよ。冒険者ってのは俺達みたいな戦闘系スキルしか持たない奴がやるもんだぞ普通」
「良いじゃないですか」
「マゾだ」
「マゾだな」
「マゾね」
「今日からお前はマゾのアステル、Mッテルとよんでやろう」
「いやっ。ホントに止めて下さい……泣きますよ」
なんだよMッテルってそんな恥ずかしいアダ名付けられたら呪うよ? ルーナさんみたいなカッコいい二つ名が欲しいのに、決めた四等分するつもりだったけど歩合にしてやる。
とは思うものの、そうするとサトスさん達の分が無くなるので6割は自分で収納、残りはサトスチーム内で均等割りにした。
ギルドに帰還し納品を済ませギルドをでると━━
「じゃあまたな、Mッテルはははは」
「Mッテルって言うなー!」
すっかり仲良くなった? 僕達はまたクエストを一緒にやる約束をして別れた。
不名誉なアダ名を付けられたらけど面白い人達だったな、今度はルーナさんも一緒にやれたら良いな、さて帰るか。




