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ダンジョンコア 魔宮 日向 lv.1⑧

 説明しよう。

 ちんもぎさんとは、俺が前世……地球にいた頃に一度だけ見た夢で出てきていた女の子だ。

 美少女で、ニコニコとしながら俺の股間を握りつぶしたあげくにもぎ取って激痛を与えてくれた子。俺は彼女のことをちんもぎさんとなずけ、特級の駆除命令を出したのだ。

 犯人は猫。股間をふみふみするのやめて。クリティカルヒットすると痛いんだから。



「おい、ハウル……大丈夫か……?」


 俺はまだ痛む下腹部を押さえながらハウルに近づく。ハウルは……パッと見気絶しているだけに見える。俺は医者でもなければ魔物を詳しく見るのもこれが初めてだ……。

 そうか、ステータス見ればいのか。ダンジョンマスター権限でハウルのステータスを『表示』!



────────────

 名前:ハウル

 種族:ホブゴブリン

 状態:気絶


 体力:48/120

 魔力:30/30

 攻撃力:75

 防御力:85

 敏捷:70

 精神力:40

 幸運:15


スキル

 棒術5

 回避3

 砲声1

────────────



 こいつのステータス初めて見た気がする。ナズナよりも強い、のか……?

 そしてダメージは……72か。まだ50近くあるし死にはしないだろうが、それでも休ませないといけないだろう。

 しかたないのでハウルはボス部屋に転がしておこう。


 オオバコの胞子によって狂戦士化したハウルの姿がよぎる。


「ハウルは大丈夫そうだ。特殊罠についてはわかったし活用法も思いついた。さてナズナ、部屋に戻ろうか」

「……うん」


 ハウルの小柄な身体を小脇に抱えて、ナズナへと手を差し出す。

 元気の無い返事のあと、ナズナは俺の手を握り……少し寄りかかってきた。

 やっぱりか。という少しの呆れと、ナズナの息の荒さに対する劣情を黙殺する。


 俺にのみ見えるようにナズナのステータスを『表示』。



────────────

 名前:ナズナ

 レベル:1/10


 体力:100/100

 魔力:3/100


スキル(SP:0)

 戦略家1

 生活魔法1

 水魔法1


特殊スキル

 特殊罠作製1(ペコちゃん)

 バベル知識1

────────────



 魔力が残り3か……つまりは魔力切れの症状だな。

 実際になったことはないから知識だけだが、吐き気や眩暈なんかの体調不良といったところか。魔力が0でその症状になるファンタジーもあるが、この感じだとこの世界では魔力0で気絶だろう。


 確か、ナズナを召喚した際、自分の服の生成で魔力を使っていた。確か、ぴったり50。

 そして今回は47? いや、3時間の間に自然回復したことを考えると50~80か? つまり自然回復の量は……1時間あたり1か10のどっちか?

 前者なら、きっついな……あの神々ならやりかねないが。




「ナズナ、少し横になったらどうだ?」

「うんう、だいじょうぶ……それよりベッドはハウルに使わせてあげて……?」


 ダンジョンコアが浮かんでいる部屋を素通りし、住居エリアへとやってきた。

 ナズナをベッドに座らせようとしたところで、素直に従ってくれない彼女に思わず苦笑い。ハウルは地面で良い気はするが……気絶した理由を考えるとなぁ。


 てか、ハウルに持ってきてもらってた投げナイフ回収すんの忘れた。オオバコに『命令』する。俺が回収するまで……その部屋に保管しておいて。

 そして、ちょっと思いついたので追加でやっておこう。ゴブリンをボス部屋に『召喚』。そしてそのゴブリンには投げナイフを持って扱えるように訓練するように『命令』する。


 ボス部屋っていうか、特殊変化待機部屋じゃね、これ?


「『開始』、住居エリアを2回り『拡張』」


 マスは26マス。『掘削』と『領域化』併せて130DP。残りは2137DP。


「続けてベッドを『創造』」


 今あるものと全く同じなら、できるようだ。グレードアップする気もなかったしまあいいんだけどさ。

 消費は50DPって高くね……はいはい召喚。位置はこの辺で良いだろ。


「むぅ……無駄使いしないのっ」

「無駄じゃないさ。人数分のベッドは必要だろ?」


 新しく作ったベッドにハウルを寝かせる。特に汚れてるわけでもないし大丈夫だろ。

 これでナズナを休ませてやれるな。


「このベッドはマスターの──」

「日向君」

「……日向君のベッドだよね」


 ナズナが苦笑いを浮かべて言いなおした。

 俺は勇気とか理性とかいろんな物を総動員して、ナズナの横に腰掛けた。


「ナズナ、俺は少し横になって休む。……一人だと寂しいから、一緒に寝てくれないか?」

「えっ……」

「やっぱり、ダメか?」


 きっと体温があったらすごく熱さを感じていたんだろう。

 血液が流れていたら顔面にばっかり集まっていたはずだ。

 ……手の震えは、止まらないけど。きっと触れられないとバレはしないさ。


「それは、命令?」

「違う。お願いしてるんだ、断りたいなら断ってくれ」


 ナズナなら断らないとわかっている。彼女は命令されることを望んでいる節があったから、こういった真意を隠した『お願い』には。


「日向君はしかたないなぁ」


 彼女は断らない。




「……眠ったか」


 ナズナと背中合わせでベッドに入ってから数時間にも感じられた3分を過ごした。寝たふりをする俺と、魔力切れからもすぐに寝てしまったナズナ。彼女は抱き枕代わりにスライムを抱いていたが、そのスライムはベッドに入ってから数秒で寝たらしい。スライムって寝るんだ……?

 助けられた恩と、助けられてる恩返しと、死ぬかもしれない地下に縛り付けてる罪悪感……いろんな気持ちからナズナへの気遣いをしているが、俺の性分じゃないな……疲れた。


 体を一切動かすことなく、念と視線だけでダンジョン操作をしていく。

『掘削』を選択し、2階層の作成──エラー?


『ダンジョンコアのレベルが足りません』


 おいおい……もしかして2階層を作るには俺が2レベになることが必要ってか……?

 これで3階層を作るためには3レベが必要とか言われたらぶん殴るレベルだぞ? どこまで俺の邪魔するんだ。

 ………………いや、いい。今はいい。できないならできる範囲を弄るだけだ。




 5×10の長方形の部屋を『掘削』し『領域化』する。そして1行3列目から2×6マスをさらに下に『掘削』……領域化が必要ない分、掘削の必要コストが1マス2DPになっている。

 いや、構わん。4行3列目から2×6マスとあわせて『掘削』。

 これで1マス分の通路となり、その道から足を踏み外すと穴に落ちるわけだが……足りないな。10pt使っていい、機械音声さんに通話。


『あれだけかっこいいこと言っておいて手を出したんですか、ケダモノ』

『違う。『創造』タブに罠創造を実装しろ。そして割合ダメージの針山も追加しておいてくれ。出来る限り頼む』

『……。わかりました』


 通話が切れる。残り221ptか……3レベになるのはいくら必要なのかわからんが、121ptだと足りないだろう。あと2日半でなんとか侵入者を呼び込まないといけないが……斥候隊の働きに期待して今は待とう。


 ピコン、という音が聞こえると『創造』タブに『罠創造』が追加されているのですぐさま開くが……針山1つ(20DP)しかない。投石器もないか、ナズナの特殊罠をここで再現するのも無理か……。

 掘り下げた24マスに設置。残り1309DP。


 これを配置変更で森部屋とボス部屋の間に移動させ、繋げる。今まであった部屋は森エリアからボス部屋の前までの周り道にしておこう……マスが足りない? 追加で2マスの『掘削』『領域化』で繋げる。

 T字から∀みたいなマップになったが……まあいいだろう。一本道だと拡張性がないからな、これでなんとか今後の拡張もできるだろ。



 っとそうだ。死体放置所が通路のどまんなかになってしまってるな。これは移動させておこう。『配置変更』して死体放置所の移動、通路の再建、っと。

 これで残り1244DP。貯蓄しておくにしてもまだなんかあるだろ……。


 牢屋だ。捕虜を収容するために必要だな。場所は……住居エリアの近くにあっても困るな……脱走されてダンジョンコアを壊されましたとかな、それは避けたい。

 死体放置所の隣にしておくか。死体を見て引き返してくれる可能性もあるし。捕虜が死んでも捨てるの楽だし。

 2マス分の通路と3×5マスの部屋の作成。そして『役割変更』で牢屋──500DP──を選択!


 残りは629DP。これはそのまま貯蓄に回そう。いつ何が必要になるかはわからないしな。

 最後に特殊罠のぺこちゃんに『命令』する。新しくできた針山の部屋に移動しておいてくれ。……すげえこの無機物、命令したら浮いて移動し始めたぞ!?



「ふぅ……こんなものだろう……」


 小声で溜め息と共に吐き出すことで気を抜く。集中していたとはいえ、機会音声さんのジョークに対応できないってのは、ほんとうに悪い癖だよな。もう少し余裕持とうぜ、俺よ。


 あとはナズナに蝙蝠みたいな飛行系の魔物が召喚できないか聞くこととか、手の加えようはあるが……後にしよう。


 背中で感じるナズナの体温が、心地良い。寒さを感じているわけではないが、温かいものに触れるのは、なぜだか安心する。

 眠気も来ない。そもそも寝れるのかわかんないが、少し目を閉じてみようか。侵入者があればアラームがなるし、起きれるだろ。


 もし何かあれば、スライムも起こしてくれるだろ。大丈夫。

 少し目を閉じるだけだ……



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