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旅人 白鳥 恵子 Lv.17 大混乱②

たった一度、攻撃を交わしただけで、機械の蟻──マシンアントの能力値が高いことがわかる。

日本の技術でも再現できないんじゃないかというほど、流れるように動く関節部。金属に思えた全身の素材も、少なくとも私は、見たことがないものでできているようだった。


初撃、私の方から襲いかかり、私の方が先に攻撃モーションに入ったはず。なのに回避を先に強いられたのは私の方だった。

幸いに私の回避スキルは高い。

半身になって──それでもギリギリで──避け、そのまま太刀打ちで叩く。

今までに何度も何度も攻撃を食らってきた感覚から、私の防御力が競り勝つことを予感させた。そして……急所にくらうとどうなるかわからないことも。

ああ、やばい。死にたくないなぁ。死にかけた恐怖が蘇ってきた。



槍を構え、距離を詰める。まずは機動力を削ぐためにも、足払い。胴体の下へと穂先を進めると、斜め上へと振り上げる。

ガチン、と音を立てて三叉槍は止まる。きっと筋力差とか、重さの関係でダメだったんだと思う。

なんにせよ足払いはできなかった。


マシンアントの頭突きのようなタックルを受けるも、軽く後ろへ飛ぶことで勢いは殺せた。ダメージを受けることなく着地。


クルリと槍を回すと、火花が舞う。機械とはいえ、視線はその火花を追い、一瞬だけ私から逸れた。

目を狙って突き出した穂先は、僅かに逸れ、眉間にぶつかる。穂先は弾かれ、滑り、傷をつけることもない。


顎が噛みつこうと迫る。攻撃してるのに、意に介さず進まれると避けるに避けれない……。

ただ、マントを掴んだ腕に衝撃が加わるけれど、傷を負うこともない。


ダメだね。お互いに攻撃が通らない。

私は素直に引くことを決めた。槍をクルリと回してポケットに収納。そして槍を速射で2射、射ちながら後退。

蟻は追ってこなかった。攻撃が通らないから、諦めてくれたのかもしれないね。


「倒すなら、リザードマンかな」


あれなら一方的に攻撃できる。私は急所狙いの攻撃だけを避ければいいのだし、当てるときはとりあえず当ててればいい。

囲まれたり、羽マンがいなければどうとでもなる。

そう思いながら森をさ迷う。蟻に遭遇しないように、それ以外の生き物を探すように。




最初に見つけたのは、やっぱり機械の蟻。冒険者と戦っているようだった。

私に気づいていないようだったので、遠くから『無音』を発動させた矢を放つ。そうして援護なのか邪魔なのかわからないことをして、逃げた。

矢はまだまだ、50本くらいあるから、気にしなくても大丈夫そうだね。アイテムボックスって便利。


リザードマンの鳴き声が聞こえて、ふらふらとそちらへ向かう。戦うにしても逃げるにしても、蟻の蔓延るこの森にいると精神がガリガリ削られていく……。

倒せる敵が見つからないっていうのも、倒せない敵が多すぎるってのも。こんなにキツいものなんだね。



弓に矢をつがえる。それも同時に4本。

さすがに4本も片手で持つなんて無理だから、魔力をわっか状に押し固めて、矢を固定する。微妙な位置調整を行いつつ、引き絞り、放つ。無音の発動している矢を避けるのは相当厳しい。不意討ちだしなお厳しいはずだ。

4体のリザードマンへと矢が飛び、突き刺さる。偶然にもこちらを見たリザードマンが1匹、曲刀で防いだみたいだけど、他の3匹は負傷した。


魔力を使うし矢もたくさん必要になるものの、大幅な時短になるこの複数射ち楽しい。

4本の矢を……いや、2本だけをつがえる。だいぶ慣れてきたからか、ポケットに手を突っ込んだ瞬間にアイテムを取り出せるようになってきた。



矢が刺さったまま、リザードマン2体が剣を振り回し駆けてくる。

ぐった弦を引いて、放つ。吸い込まれるようにそれぞれの胸へと矢が突き刺さる。

本当に狩人になったみたいで楽しい。

……リザードマンは矢2発、と。


興奮を抑えつつ、ポケットから矢を1本取りだしすぐに射る。ほぼゼロ距離まで近づかれたものの、攻撃は私の方が早かった。

リザードマンは刀を振り上げたまま、倒れかかってくるのでしゃがみつつ避ける。

っ!? 最後の一体も、予想より近くにいた!

矢を取り出していたけれど、このままだと放つ前に攻撃されることを悟る。そこで、弓から手を放すことにした。

右手に持った矢を上へと突きだし、矢のお尻の方に左手を添える。鏃がリザードマンの顎下にめり込んだのを見ると、容赦なくそれを蹴り上げた。


「頭貫通してるのに生きてるとか…… さすが異世界だね」


ガキィィン!

脳天をぶっ叩かれる痛みと衝撃。

リザードマンの降り下ろす曲刀が私の頭を直撃し、弾かれた音がした。死んだと思い込んで避けようとしなかったのは、私のミスかな。

ほんと、いつになったら油断しないようになるんだろう。


リザードマンの腹にヤクザキックをかまして転ばせる。そのまま接射でとどめ。

至近距離で、しかも骨を抉ったようで、矢は折れてしまったけれど、リザードマンも死んだから良しとしよう。



ああ、久しぶりに戦えたって気がする

次回更新は13日の19時予定!!

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