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旅人 白鳥 恵子 Lv.10 ⑤

「ケーコさん、さっきぶりです」


ギルドに行ったらフェルさんが声をかけてきた。……暇なのかな?


「ギルド職員が多いから手が空いてるってだけで暇ではないんですよ?今も新人冒険者の育成中です」

「声に出てました?」

「顔にかいてました……」


そんなやり取りをしながら依頼掲示板へと近づく。さすがに夜になるこの時間に依頼を受ける人はいないようで空いてる。まあ、代わりに併設されてる食堂の方がすごい賑やかなんだけどね。

今、私の全財産はあの食堂の飲み物程度しかないんです……!


「ギルドランクを上げるためにも薬草採取は確定ですね。そうしたら……これとかどうですかね、スライムの捕獲」

「捕獲……?」

「ええ、スライムの体液は回復薬の材料になるのでいくらあっても多いということはないんです。ギルドの方で捕獲用の筒を渡しますのでその筒3つにそれぞれ1匹ずつ、計3匹の捕獲で依頼達成となります」


そういってフェルさんが取り出したのはテニスボールが入れられているような筒。ラベルがなく、半透明なそれは私の腕を肘の辺りまで仕舞える(?)くらいには大きいのでスライム程度なら丸々2匹は入りそうなものだった。


「薬草の生息地の近くにもスライムは居ますので同時に達成できますよ?」

「……それでお願いします」

「はい、ではギルドカードをお預かりします」


黒色のギルドカードを渡すとフェルさんが空いていたカウンターに座り、何かを書き込み始めた。途中でギルドカードを箱状の機械……じゃない、魔道具?に入れていたりするので何かしらの手続きがあるんだと思う。


「……はい、完了です。これがスライム捕獲用の筒3つです。魔物のドロップアイテムも買い取り致します。御武運を」


そうしてギルドを後にする。

門番さんにギルドカードを渡し、門を通してもらう。道具屋で買っていたカンテラに下級魔術で火をつけて森へと進む。

たしか……門を出て左手側の森がゴブリンの森。右手側が始まりの森。だったよね。

始まりの森へと足を向ける。さあ、薬草探し、頑張りますか。



森に入る前にポケットから弓を取り出しておく。基本的に出てくるのはスライムかゴブリンらしいので、弓のスキルアップを目指す。夜で視界が確保できないのが不安だけど、レベルさえ上がればそんなの苦になら無いと思うから。


「あ、スライムだ」


森に一歩足を踏み入れたところで、カンテラの光を反射するものがあった。刃物かと一瞬警戒したものの、それはゆっくりのそのそと這い寄ってきた。

スライムが1体。

捕獲用と言われていた筒を1本取り出す。弓は……仕舞っておこうかな。

ぷるるんっ、と体を震わせながら私の足へと突撃してくるスライムを片手で掬い上げる。


「おお、ゼリーみたい……」


手のひらに綺麗に乗ったスライムは、手を左右に揺らすとぷるぷると震える。そのまま逃げ出そうとしたので慌てて筒に落とす。

ちゅるりん、とその液体すべてが筒に収納されたのを確認して、蓋を閉じる。

スライム1体、確保完了っと。


スライムをポケットに収納して改めて弓を取り出す。どうやらスライムは森の入り口?浅いところ?にいるらしく、そう奥まで進まなくても良いみたいだ。薬草もこの辺で見つかってくれればレベル上げに専念できるんだけどなぁ。


「ギィ!」「ギギィ!」

「……この声は、ゴブリンかな」


口の中でそう呟くと声のした方へ第一射。

ヒュゥ……カツン、と肉に当たった音はしなかったし、ガサガサと草むらの揺れる音が近づいてくる。

もう一度弦を引き、狙いを定める。腰に吊り下げるようにして持ち運んでいたカンテラの光がゴブリンの顔を浮かび上がらせ──その額に矢が突き刺さった。

即座に弓を仕舞い、槍……ランスの方を取り出す。今までの癖で両手持ちしようとしたけれど、このランスは片手で持つタイプだ。急に実践投入したのは間違いだったかも?

ゴブリンが手に持っていた棍棒で殴りかかってくるが半身になって避ける。そのまま無防備な頭にランスを突き刺す。


──ギャリィッ!


あー嫌な音がした。

ランスを引き抜く。すると先端は無事なものの、一部が欠けてしまっていた。これ、買ったばっかりなんだけどなぁ。

鑑定すると、耐久が1減っていた。今までの武器はどれだけ雑に扱おうと耐久が減らなかった、だからこれからは武器の扱い方も丁寧にしないといけない……。

うん、耐久1で良い勉強が出来た。うん、これでいいんだ。完全に壊れていなければ多分直すこともできるはず。

ゴブリンの落としたお金を拾う。これで36ロト。やっぱりもう少し奥にいかないと、もっと強い敵を倒さないとお金が少ないなぁ。


薬草を求めてふーらふら。足下に向かって鑑定をしながら進んでるんだけど『ただの草』しか見つからない。

転ばないようにしながら、敵が来ないか注意しながら、進んでいたら後ろの方の草むらがガサガサと揺れた。そちらに弓を向けると……あ、懐かしい。ヘルメットにピッケルを持ったゴブリンだ。確か、レベル1の時辺りに倒したっきりだったよね?

グサリ、と嫌な音を立てつつゴブリンの喉に矢が生えた。青白い矢が消えると共にゴブリンも消えていく。

……持ってる棍棒がピッケルになった程度で強くはなかったんだね。たったレベル10上がっただけでこれほど圧倒的になるなんて思ってなかった。


森を進んでいると、地面に生えている草の種類が変わった。

今までは細くぴょこっとした1本の草だったのが、葉が大きい双葉に変わった。鑑定すると『薬草』と表示された。

うーん、2本しか無いけど、これはどうすればいいんだろう?


「群生地を潰さないように薬草は全て採集しないようにしてくださいね」


って言われたけど……どうなんだろう?これ、群生地じゃないと思うけど、群生してた残りだったら良くないよね。


「ギギィ!」

「──ッ!」


ストン、と小さい音を立てて私の放った矢がゴブリンの頭へと突き刺さる。声に反応して咄嗟に弦を引き矢を放ったが、当たったみたいだ。

けれど、音的にまだ2体もいるみたいだ。

ゴブリン2体が棍棒を振りかぶる。それをバックステップで避けながら矢を射る。

矢は僅かに狙いを逸れ、ゴブリンの耳を射抜くに終わる。……即死しない、ダメージ半減でもした!?

ゴブリンたちの追撃を避けるためにさらにバックステップして、次は魔力を多く注いで矢を2本生成する。そしてその2本を──いたっ!?

放った矢はどちらも綺麗にゴブリンの頭を捉えていたが、その代わりと言わんばかりに私の人差し指から出血していた。どうやら弦で切ったみたい。……手袋みたいなの、必要かもしれないね。

それだけじゃない。

足下を見下ろすと、薬草を1本踏みつけてしまっていた。鑑定してみると『傷んだ薬草』となっていて、これだと効果は見込めない、と思う。

ゴブリンの落としたお金、それと無事な方の薬草を1本だけ採集して次に進もう。



「ギギィ!」「ギィ!ギィ!」


数分ほど薬草を求めて歩いていたら、またゴブリンたちの声が聞こえてきた。今度は少し数が多いみたいだ。

弓を握り直して、木の影から覗き込む。

数は5体。そのうち2体が剣を振り回していて、他の3体が棍棒を引きずるようにして進んでいる。デスマーチしてる鬼軍曹と奴隷を思い出したけど他意はないよ?

弦を引いて矢を生成する。そしてしっかりと狙いを定める。狙いは剣を持ってるゴブリンだ。


ピュゥ、と風切り音。そして断末魔が聞こえてくるかと思いきや、聞こえてきたのは金属と金属のぶつかる音。

剣持ちゴブリンが私へと切っ先を向けてギャイギャイと鳴いていた。位置もバレたみたいだし、弓だと倒せないレベルの敵みたい。

剣持ちゴブリンは動くことなく奴隷扱いされてたゴブリン3体が接近してくる。私は落ち着いて3連射。

眉間、脇腹、右肩。

それぞれに風穴を空けさせる。これで残り2体。弓を仕舞ってランスを取り出す。うぅ、やっぱり片手だけって持ちなれない……。

危うい足取りになってしまったけれどゴブリンの振り下ろしを避け、もう一体の突きをグリーブで蹴って弾く。


刺突はつけなくて良いかな、とりあえずは制御することをメインにランスを突き出す。

肩口を抉ったその一撃を受けてゴブリンが剣を放り出して下がった。……一撃で止めをさせなかったことに少し驚く。

傷ついた仲間を庇うようにして出てきた剣持ちゴブリン2の振り下ろしを一歩横に動いて避け、刺突を放つ。

ゴブリンの腹を貫いたランスを引き抜くと、傷つき、もう戦意も残ってないゴブリンへと向ける。

……はて、なぜだか見たことがある光景だ。

/*幸運判定、成功値59。99、大失敗。コルァ参上!*/

肩を押さえるゴブリンが私に槍を向けられていることなど気にもしないで剣持ちゴブリンへと這い寄る。しかしすでに絶命していた剣持ちは次第に体が薄れ、光の粒となって消えていく。

……ねえ。やっぱりこの光景見たことあるよ。なに?ゴブリンたちは茶番が好きなの?絶対そうでしょ?ねぇ?


「──ッ!?」


咄嗟に避けられたのはきっと、回避スキルの恩恵だ。

突如として空から降ってきた赤い三叉槍(・・・・・)を、私はギリギリの所で回避した。


「ユケ、同胞ヨ。ワレが奴ヲ殺ス……ッ!」


バサリ、と音を立ててそいつは空から降りてきた。それはいつぞやのゴブリンだった。

私の目の前で進化してくれちゃって、一番最初に死を覚悟して戦った相手だ。当時始まりの森で防御力だけでごり押ししていた私にダメージを負わせられた相手で、私が命からがら逃げ切った相手。

あと付け加えるならば、髪留めの仇でもある。


ランスを構え直す。勝てるかどうかは分からない。けれど、確実に敵意を向けてくる羽の生えたゴブリン──通称、羽リンは地面からその三叉槍を引っこ抜き、私へと向けてきた。


テストが近づいてきたので更新速度が落ちますが……その分、質を上げたいと思います。

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