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暗黙
瀟洒な教会の傍ら――その庭の隅に老桜が花を開 (さ)かせるのを女は見つけた。 「ああ、今年も咲いた」と、女は春の優しさに出会っ た。
腕一回りはあるかと思われる大木は元来の荒々しさを 積年の生の象徴たる厚い木肌の奥に秘めているようで あり、それを曝け出したものが根を強固にしているの だけは見える。日影に黒ずむ幹を上の方へと目線で 辿っていくと、対照的に花弁が春光に照らされ柔く輝 いていた。
その桜は意外な所にあるためか、それを花見にするも のはあまりいない。図体はでかい癖に儚く咲く。それ をただその女だけが毎年見に来るのである。
学生服とみずみずしい花弁、可憐な少女と老桜がこの 影で出会い干渉する。そうして、無事咲くかの心配を 余所に咲くのを見て彼女は頬を緩めたのであった。




