第9話〜どちらが勝つのか?
完璧な「無能」を演じていた男・ハンスが落とした、国家機密級の警備配置図。
あまりにも出来過ぎたその状況に、ディートリヒ公爵家の令嬢・エレナは直感する――これは、私を真実から遠ざけるための精巧な「偽の餌」であると。
敵の真の狙いは二日後の建国記念夜会、そして父の命。
孤立を狙う敵の謀略に対し、エレナはあえてそのシナリオ通りに踊らされるフリをしながら、背後の本命を引きずり出す決意を固める。
私設騎士団を動かし、張り巡らされた罠のさらに裏をかく、命懸けの心理戦。
公爵家の誇りをかけた、緊迫の二日間が幕を開ける
「――仕掛けてきたわね」
自室に戻ったエレナは、窓外の中庭を見下ろしながら、先ほどハンスが落とした紙片の記憶を脳裏で反芻していた。
あまりにも出来過ぎたタイミング。完璧な無能を演じていた男が、私の視線に怯えた拍子に国家機密級の警備配置図を落とすなど、笑い話にもならない。あれは私を本物の計画から遠ざけるための、精巧な「偽の餌」だ。
しかし、私の直感が囁いている。あの男――ハンスの本命は、二日後の建国記念夜会、父様の首一つ。
「私を孤立させ、揺さぶるつもりでしょう。……いいわ、その誘いに乗ってあげる」
あえて男の描いたシナリオ通りに動かされてやる。泳がされているフリをしながら、その背後にある本当の狙いを引きずり出す。それが、ディートリヒ公爵家を継ぐ者としての私の戦い方だ。
エレナは呼び鈴を鳴らし、私設騎士団の長を呼び出すべく冷徹な声を響かせた。緊迫の二日間が、今始まる。
本作をお読みいただき、誠にありがとうございました。
完璧な「無能」を演じる男・ハンスが落とした一枚の配置図。それがすべての引き金となり、エレナの孤独で熾烈な二日間の頭脳戦が幕を開けました。騙されたフリをしながら敵の裏をかく、彼女の凛とした強さと公爵家としての誇りを感じていただけていれば幸いです。
華やかな建国記念夜会の裏で、ハンスの真の目的は何なのか、そしてエレナは父の命を守り抜くことができるのか――。張り巡らされた伏線が回収される緊迫の結末まで、一気にお楽しみいただければこれ以上の喜びはありません。
次なる展開もどうぞご期待ください




