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第1話〜鏡の向こうの亡霊

「あの豪雨の夜、脱出艇の中で果てたはずの俺が、なぜ親友の顔で息をしているのか」

かつてハンスと呼ばれた男は、鏡に映るアルトの瞳を見つめながら、暗い海の底に沈んでいった記憶を呼び覚ましていた。あの凄惨な裏切り、炎上する船、そして自分を庇って命を落としたアルトの最期の叫び。

すべてを失った絶望の果てに手に入れたのは、親友の肉体という名の、復讐のための完璧な仮面だった。

かつての己の存在を世界から完全に抹消し、ハンスは今、アルトの声を借りて静かに誓う。神聖なる復讐の幕がいま、切って落とされる。

鏡の向こうの亡霊

鏡の中にいたのは、ハンスであって、ハンスではない男だった。

「これが、俺の新しい器か……」

洗面台の鏡に映るアルトの顔を、ハンスは濡れた手でそっとなぞる。整った眉、見慣れたはずの親友の瞳。だがその奥に宿るのは、底知れない復讐の炎だ。激しい雨に打たれながら脱出艇で生き延びてから1ヶ月。ハンスは完全にアルトの身体に馴染み、同時に、かつての自分という存在をこの世界から抹消していた。

彼は鏡に向かって、アルトの声で静かに微笑んでみせる。完璧な偽装だ。誰も彼がハンスだとは気付かないだろう。

「待たせたな、アルト。お前を奪った奴ら全員に、同じ絶望を味わわせてやる」

親友の肉体という最強の仮面を被り、ハンスの孤独な復讐劇が静かに幕を開ける。

鏡に映る親友の笑顔は、果たして本当に「完璧な偽装」なのでしょうか。

己を消し去り、他人の肉体と同化していく恐怖。そして、ハンスが復讐を果たしたその時、鏡の向こうで微笑んでいるのは一体誰なのか……。

復讐のセレナーデは、まだ調音を始めたばかりです。次話、ハンスの前に「アルトをよく知る人物」が現れます。どうぞお楽しみに。

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