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第19話 ミーヴ

 



 生命神の元に赴き、魂気操作のコツもなんとなく掴めた翌日。


 俺は魂気操作を極めようとしていた。


 小屋の向こう側は、シュゼとヌィンダが修行中。

 木刀と木槍の打ち付け合う音が聞こえる。




「アルタ、すごいね。今朝言ったばっかりなのに......」


「あー、あぁ、ミーヴが教えてくれたおかげだ」


 隣で魂術の特訓をするミーヴが呆気に取られた顔をして言う。


 ミーヴは今朝、ずっと考えてくれていたのか

 魂気の操作について教えてくれた。


 と言ってもやはり魂の専門家(生命神)には敵わなかったらしい。


 そこまで分かりやすくはなかった。

 でもずっと考えてくれていたのは嬉しい。


 ミーヴのおかげってことにしておこう。




 ▶▷▶▷▶▷




 ヌィンダは師匠としてはそこそこである。


 もちろん基礎的なトレーニングもしてくれるし、

 言えば模擬戦もしてくれる。


 的確なアドバイスもしてくれるし、それはしっかり俺たちの成長に繋がっている。


 しかし、しかしだ。師匠としては致命的な欠陥があるのだ。


 それは......




「アルタ、ヌィンダのやつカジノ行っちまったし、オレたちだけで模擬戦してようぜ」


 修行中にも関わらずカジノに行くことがある、

 という点だった。


 俺たち3人の資金には手を出さないからいいようなものの、やっぱり修行中に行かれるのは困る。



「あぁ、分かった。やろう」


 まぁいないものは仕方ないので、シュゼと模擬戦をすることにする。


 2人で反対の位置に立って向き合う。


 短い金髪、青い瞳、キッとしたつり目が俺を見ている。


 数回木刀を振ってから俺に向ける。

 静かな構えだ。


 その静かさはヌィンダに教えて貰ったのだろう。





「やろうって言ったけどさ、いいのか?」


「は?」


 俺の問いかけにシュゼが首を傾げる。


「いや、その、シュゼって女だろ? 何か殴るのは気が引けるっていうか......」


 そうだ、そもそも俺がシュゼの攻撃をずっと避けてたのは、シュゼを殴るかどうか迷っていたからだ。


 同年代の女子を殴ったことは無い。

 父さんも『女の子には優しくしろ』って言ってたし、気が引ける。




 しかしそんな俺の考えとは対極に、シュゼは淡々と答える。


「別に気にしなくていい。ほら、お前もさっさと構えろ」


 木刀を手にシュゼが構える。


「ミーヴ、お前が審判でいいな?」


「う、うんっ、いいよ」


 横を見ると、離れた場所にミーヴがいた。

 その場の空気に圧倒されてるのか、少し怖じ気づいている。


 シュゼは完全にやる気だ。

 青い瞳が俺を貫き続けている。


 まだ迷う所はあるが、仕方ない。

 俺も足を開いて片手を突き出し、構える。




 ▶▷▶▷▶▷



 ―ミーヴ―



 アルタとシュゼは強い。

 きっといつまでも、私より上を行き続ける。


 目の前で行われている模擬戦はシュゼが優勢。


 体術のことも、刃術についても分からないけど、

 思考を止めることが敗北を意味するんだと思う。


 シュゼはいつも通りの状態で。

 アルタは体術と魂気の2つのことを考えて戦っている。


 アルタが10ならシュゼは9ってヌィンダさんも言ってたし、アルタが状況次第では全然シュゼが勝つんだろう。




「ごふっ!」


「よっし、1本取ったぞ!」


 予想通り、シュゼが勝った。

 アルタは魂気の操作が間に合わなかったのか、

 打ち付けられた左手をさすってる。


「し、シュゼの勝ち!」


 私は審判だ、シュゼの勝ちを宣言する。

 同時にアルタに駆け寄って腕を治す。


 シュゼは強い。

 防御できなかったとなれば、放置したらアザになるだろう。


「魂術『治癒現象ヒーリング』」


 魂気を反応させて、アルタの怪我を治す。

 力強く、ほんの少しだけ幼さの残る手。



 私はこの手に助けられた。


 羽が無いのがバレていじめられ始めた頃、

 アルタと出会った。


 私と同じように羽が無い。

 それでいて強くて、それを気にする素振りも見せない。悪魔が出たときも命を張って守ろうとしてくれた。


 羽の無いことを恥じて、心に蓋をしていた自分が恥ずかしくなった。


 それからなんだろうか。


 私がアルタを好きになったのは。




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