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色々あったけれど

夕食の準備を手伝い、賄いを食べ、デザートまで食べ、部屋についているお風呂に入り

就寝の準備をしている。

宿題は今日のノルマを終えているから、寝る。

…寝ようと頑張って居る。

明日もう帰るんだと思うと、何だか寂しい。

可愛い弟に会える楽しみがある筈なのに

ここ数日が充実し過ぎて……

…悪役令嬢が悪役(役?とは)って感じを初めて味わえた気もするし

まぁ即行ざまぁっぽい事されてたけど。

流石に他人の家(別荘だが)で、自由に振る舞い過ぎてたのは駄目だよね。

ってだけで、別にざまぁとかでは無いけれど。


温厚そうな黒井さんが、元…不良?だったって言うのは驚きだけれど、まぁ、人って変われるって事だよね。まぁ、変わるにはそれ相応の努力が必要だろうけれど。あ、いやでも、いつ如何なる時でも簡単に素を見せない努力も必要だとは思うが、仏の顔も三度迄とか言うし…己の為では無く、悠先輩(ご主人様)を思っての事だろうし(邸に異臭を染みつかせない為とは言って居たけれど)

…本当にそろそろ寝ないと明日辛いのに。

眠れない。眠れない時はホットミルクを飲む、羊を数える、難しい本を読む、眠る事を諦める…色々あるけれど手っ取り早いのが呼吸法を変える。

目を閉じてゆっくり息を吸い、吸う時よりもゆっくり時間を掛けて息を吐く。

呼吸に意識を向けて其れ以外は考えない。

そうすると眠れる。


目覚ましアラームで目が覚めるまでぐっすりと眠れていた呼吸法凄い。

身体をゆっくり起こし背伸びをして、軽くストレッチ。

着替えて、朝食のお手伝いに向かう。

その前に手洗いうがい洗顔大事。


…キッチンに行くと、白いご飯が艶々ピカピカして居た。

「おはようございます。今朝は和食ですか?」

黒井さんは振り返り、微笑む。

「おはようございます。はい。焼き魚と葱の味噌汁です」

葱の味噌汁。

葱以外にも具材が入って居る様に見えるけれど葱の味噌汁なんだ…

「私は魚を焼いてきますので、雛川さんは卵焼きをお願いします。」

そう言って串刺しにした魚(鮎)を持って裏庭にへと向かった。

外で焼くのか…バーベキュー的な?

言われた通り卵焼きを作る。

だし巻き卵、砂糖入りの卵焼き、塩味の卵焼き

其々1つずつ。レシピも書いてある。

玉子焼き用のフライパンも出ている。

ボウルに卵を割り、出汁を混ぜる。

泡立てない様に混ぜる。

因みにこの時に使う出汁は色んな種類があるけれど一番簡単なのは麺つゆや市販の白出汁で作る物だったりするが、今回は黒井さんが昆布と鰹節で煮だしてくれているので其れを使う(手書きレシピに書いてある)本来なら、黒井さんが全部やった方が楽なんだろうなぁと思う程、分量通りの材料が全て用意されている。判り易く、塩、砂糖、重曹とラベル迄貼ってある。

重曹を入れるとフワフワの卵焼きになるらしいが分量が面倒臭いし苦くなる場合もあるのでやった事は無いが黒井さんのレシピ通りに作ってみる。

泡立てない様に混ぜる。……って言うのが結構難しい。

テレビや動画で料理研究家や料理人がサラッと言うけれど、泡立てるなって難しい。

混ぜなければ泡立たないけれど、菜箸だろうが何だろうが、混ぜれば泡立つ。

…コツがあるらしいから、その方法も試してみた事があるけれど、結局泡立ったと言うか、慣れない方法はしない方が良いと学んだ。

フライパンを温めて、油を引く。ジュっと音が鳴ったら一層目を焼く、フライパンの中で少し混ぜて、巻く。を何回か続ける。

出汁巻き卵は焦げ目を付けない。

砂糖入りは焦げやすい。

塩味は…作らないから知らないけれど、焦げ目は無い方が良いのかな?

作った卵焼きを種類ごとに皿に乗せ、砂糖、塩、出汁巻きと書いてある旗を立てておく。

…お子様ランチ感。いっそプレートに盛り付けたら楽しそう。

…でも今日は和食か。そして、プレートにすると皆足りないんだろうな、量が。


家に帰ったら、類に作ってあげようかなお子様ランチ。

…いや、やっぱり足りないか。男の子だもんね…

自分用に作ってみるかな(お子様ランチが作りたくなった人)


朝食の準備を終えたら、部屋の片付けをして、最終確認をして、私服に着替えて

…は!今着て居るメイド服(お仕着せ服が正式?名称らしい)どうすれば良いんだろう。

焼かれた鮎を持って、黒井さんが戻って来る。

「卵焼き、完璧ですね」

ニコニコと微笑みながら、黒井さんは私の卵焼きを褒めてくれる。

謙遜をしたくなるところだけれど、此の卵焼きは黒井さんのレシピ通りに作った物だから此処で謙遜は駄目だと思うから

「お褒め頂き光栄です。黒井さんのレシピのお陰です」

と言っておこう。

黒井さんは、焼き鮎を長方形の皿に乗せ、独りずつ用の御盆に置きながら

「いえ、レシピ通りだとしても、凄い事ですよ。レシピに書いてある事だけをして居る筈なのに焦がしたり形が崩れたり暗黒物質(ダークマター)を作ったり…色んな人が居ますから」

…焦がすのとダークマターは別?

…深くは考えない様にしよう。


ダイニングに朝食を運ぶと、悠様が既に居た。

「お早う御座います」

黒井さんが、悠様に声を掛ける。

「お早う、黒井、雛川さん」

朝から王子様スマイルは眩しすぎる。

「お早う御座います、悠様」

雇われている側の挨拶が遅くなってしまった…

けれど、貴族社会の事はよく解らないけれど、身分が下の物は身分が上の物より先に口を開いてはならないみたいな決まりがあった気がする(今迄、気にして居なかった気もするが、そもそも先に話し掛けていない気もするから、おざなりになって居た気もする)総じて貴族文化面倒臭い(口には出さないが)

「悠様、此方の卵焼きは、雛川さんが1人で作られた物なのですよ」

「黒井さんのレシピに従って作った物です!私だけの力じゃないです」

「そうだとしても凄いよ。黒井が料理始めたばかりの頃なんて、炭が出来上がって居たから」

炭…さっきのダークマターって自分の作り上げた物の話だったんだ…

「仕方ないでしょう?料理をした事が無かったのですから、火加減とか判らなかったんですよ。」

…黒井さんが悠様に仕えて何年経過して居るかは判らないけれど、今ではプロ並み…凄い。


テーブルに料理を並べて行くと、まだリビングに来ていなかった人達が集まって来た。

きちんと着替えを済ませ、髪に寝ぐせも無い。貴族凄い(貴族どうこうは関係ない)

皆それぞれ、自由奔放だけれど、箸の持ち方、姿勢、食べ方全てが綺麗なのは流石だなと思う。

貴族と言うのは最低限では無くマナーを完璧に叩き込まれているだけでは無く、完璧に習得し使いこなしている。付け焼刃では無く、それこそ、他の方法を出来ない程に体に染みついているんだろうと思う。


こういう完璧なものを見てしまうと、自分自身の姿勢や箸の持ち方が不安になって来る。

幼い頃、母親に箸の持ち方は厳しく教えられたから、其れなりに綺麗な方だとは思うけれど、彼等の元々持って居る優雅さや、輝きを見てしまうと、粗末な物では無いかと感じてしまう。

まあ、そもそも、彼等は私が箸を使いだす前から血のにじむような努力をしてきたのだろうから比べても仕方のない事だとは思う。


全員食べ終わるのを待って、食器を片付ける。

各々帰る為の片付けとかをするらしく今日は、大人しく(?)部屋に戻って行った。

(会話はしているので、大人しくと言うのは少し違う気もする)

「雛川さん、我々も食事を済ませ、食器を片付けたら帰る準備をしましょう」

…帰る準備は終えてますとは何となく言い出しづらい雰囲気。

「今着ている仕着せ服はどうしたら良いですか?」

そう訊くと

「此方で持ち帰り、クリーニングに出しますから大丈夫ですよ」

…恐らく今日迄着た全ての仕着せ服をクリーニングに出すんだろうなぁ…と思う。

クリーニング代が気になる平民思考だけれど、訊いてはいけない。

絶対桁が違う気がする。

もう一つ気になる事がある。

姫花はどうするんだろう。

向こうの家の誰かが迎えに来ている可能性もあるが、来た時は一緒だったから、その辺どうなのかなと。

貴族の階級的な物は置いといて、勝手に追い出したような物だし、その辺色々問題になったりしないのだろうか。

貴族難しい。


とか考えながら、七輪で焼かれた鮎を食べる。

美味しい。炭火焼最強。ご飯も美味しい。

…いや、自宅で食べるご飯も美味しい。美味しい物が食べられる幸せ。

玉子焼きも美味しい流石、黒井さんのレシピ、最高。

葱の味噌汁も美味しい。葱以外も入って居るけれど葱が美味しい。

薬味のくせに(貶している訳では無い)

…此処に来てから食べ物の感想しか言って居ない気もする。

………食べてばかりだった気もする。

勉強もして居たけれど、あれ?色々何の進展も無い。

(伊織ちゃんに頬に口付けされたけれど、其れだけ。アレは挨拶)


……?進展ってなんだ?私は何を期待して居たんだろう?

此処はゲームでは無い。私はヒロインでは無い。

本来なら雲の上の存在の人達と約三日間共に生活しただけでさえも夢の様な時間なのに

私は何を求めていた?いつからこんなに我が儘になってしまったんだろう?

大好きだったゲームの中に転生したって気付いた時?

それも愛されるだけのヒロインだと気付いた時?

確かにゲームのヒロインは愛されるだけでチヤホヤされるだけで良かっただろうけれど

現実はそうはならない。

其れを理解して居た筈なのに。

駄目、駄目、駄目、我が儘に成ったら、(わら)われる。

なんて考えていたらぼーっとして居たらしい。

ぼーっとしながらもご飯は完食して居て、心配そうな表情の黒井さんと目が合う。

「大丈夫…ですか?」

「あ!済みません!ええと、今日もう帰るんだなって思ったら、寂しくなって。」

慌てて笑顔を取り繕う。(…笑えている?引き攣って居ない?)

そう言うと、黒井さんは安心したような表情をする。

「短期間でも寂しいと思って頂けて光栄です」

「美味しいご飯を頂いているのに考え事をしていたなんて失礼ですよね」

「そうですね。」

……ソウデスネ?

「そんな表情、悠様に見せない様に家に帰る迄は、無理矢理にでも笑って居て下さい」

最後の最後に辛辣だな、この人。

まぁ、自身の仕える人が一番大事だから、その手を煩わせない範囲では、穏やかに接するけど、主に気を遣わせるようなら、容赦しませんよって言う圧か。

「…はい。気を付けます」

そう言うしか出来なかった。

急いで食事を終え、無言で片付けをする。

自室として与えられた部屋に戻り、早々に仕着せ服から自分の服に着替える。

仕着せ服をハンガーに掛け、透明なカバーに入れる。

忘れ物が無いか最後の確認を済ませ、階段を下る。

すると、悠さ…先輩の声がする。(使用人の役割は終わったので、脳内での呼び方を戻してみる)

「確かに、使用人の先輩として、色々教えてあげてって言ったけれど、言い過ぎだよ?」

「そう言われましても、自分はアレよりもっと厳しい事を言われ、指導されてきましたよ。」

「君は元々の素行の悪さからだろう?」

「まあ、そうですね。其処は認めます。お言葉ですが、悠様は、彼女に対して優しすぎます。」

「優しい?そうかな?」

「そうですよ。わざわざ仕事を作って迄、此処で働かせて差し上げるなど…普段は此処での事は全てご自分でなさるのに其れを任せるなんて、優しすぎます。」

「……優しくは無いよ。本来なら、彼女が働きたかった店で働かせてあげるのが、一番の優しさだからね。此処で使用人をして貰う事になったのは、僕のエゴだよ。」


出て行き辛い事を聞いてしまったなぁ…

でも戻る訳にはいかないし…

「黒井さん、仕着せ服のクリーニングお願いします」

渡そうと思ったが、こう言うのは自分で車に運んでおくべきだなと考える。

「全員の荷物と一緒に運んでおきますね」

そう言って廊下に置かれている荷物と共に車に運び込む。

ちらりと様子を見ると、黒井さんは苦笑いをしていた。

思うんだけれど、何で全部終わって、帰宅して、訊かれて困る人が居なくなってから話すって事をしないのだろう?

こう言う所はゲーム(や漫画)あるある。

現実になっても其処はそのままなんだなぁ…

なんて考えてしまうからやっぱり私はゲーム脳なんだな。

荷物を運び終え、各々の部屋に忘れ物が無いか確認と共に軽く掃除を済ませる。

…そう言えば姫花が持って来た虫、何処に行ったんだろう。

態々見えない場所に運んでいてくれたのなら、やっぱり、悠先輩は優しすぎると思う。


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