夜明けは過ぎて陽射し入る 6
広場に仰向けで倒れ、蒼天を眺めてみる。ただ瞬間だけ
左腕にジンとくる痛みと、熱さに、やらなきゃよかったの念は微塵もない
蒼天から次に眺めることになったのは両手剣を手に、顔が影に隠れたノレムであった
博物館を突き破り広場まで飛ばされてから時間の経過はあまりなく。だが、長く眺めていたような気がしてしまう
陽と青を遮る自分と同年代ぐらいの少年は闇に染まった剣でモトキに斬り掛かるが、一瞬にして背後に回られ、肘で背を打ち叩きつけられた
(こいつ・・・)
砕けた広場に埋もれ、起き上がりに髪へ紛れた小さく細かい瓦礫を払い落とす。また剣で攻撃してこなかったことへの苛立ち
「館内時でといい、剣でも刺しさえすればいいものを。使っていた光を撃ち込んで良いものを!それとも光には限界があるのか?」
「剣で戦い、討つことが全てじゃないだろ。俺の勝手だ、好きにさせろ。お前は、もしかしたらそれに気づいていなかったかもしれない俺にわざわざ伝えてどうする」
盾を投げてきた。防御に用いるだけでは留まらせない彼の盾による攻撃
剣を交えてわかった彼の利腕は右、その手で盾を持つことは普通ならば生存を主に置く事となるが平気で盾を投げ、手離す行為
ちゃんとした攻撃の一法ができる武器であること
盾だけでの戦闘法は存在するが、利き手でない左に剣を持つのは珍しい
剣刃で回転を加え迫る盾を防御。回転は止まらず火花を散らせ、持ち主が直接手に持ち、力を加えているわけでもないのに強い押しは緩むことなく増していく
力押しに勝ったのはノレムである。一層に火花を散らさせ叩きつけるよう弾き、盾は地に刺さる
これで終わらない、盾を投げてからモトキが向かってきていた
地に叩きつけた盾は消え、彼の右手に戻り、一度きりもみを加え左手の剣で斬る
ノレムの持つ剣の刃先は斜め下を向いていた。振り上げで下からモトキの剣刃へ撃ち込む
(さっきどうして剣で刺さなかったと、倒すチャンスかもしれなかったを逃し舐められているようで苛立ったが。なーんだ、ちゃんと殺すつもりの眼をしているじゃないか)
今度はモトキの剣による攻撃が開始される
大胆な大振り。その隙を狙って己も剣で仕掛けるも、速く次の攻撃へと移り、重い一撃と更に連続しての攻撃
盾が消えた。光の属性エネルギーを握った右拳へと纏わせ、速度も光となり放たれる拳
彼は闇を塗りたくったような左手の平で受け止め、その拳を握りるが光と闇は互いに色を失わず
その状態から、ノレムは頭突きをモトキへ
だが、右手に持つ剣から伝わっていたモトキの剣の感触が無くなってしまう
剣は消え盾へと持ち替えられており、頭突きに対しモトキも頭突きで両者の額がぶつかり合った直後に盾の面による突きと光の波動を
次の瞬間には、ノレムはモトキの目の前から消え身体が宙を舞っていた。飛び立つ光の波動と共に
「うおっ!」
噛みしめた歯、隙間から血が覗き溢れていた
絶えない威力ある光の中、剣を地に突き立て無理矢理に吹き飛ぶ身体を止める。歯の隙間から溢れる血は微々たるだが増えていく
モトキを睨む。彼もただノレムを最初とは違う瞳で睨みを返すだけ
口筋から垂れる血を拭い、一度刃に纏う闇を消すが再度刃こぼれと錆の付いた剣に再び闇を戻す。気の切り替えではないがなんとなくだけでもない
剣先を地に付け引きずりから始まり、走りも徐々に速くなり剣先は天へ向きを変え
モトキは右足を一歩後ろへ、足底より風を。風は右足周りだけを削り、迫る跳び両手剣を脳天へ振り下ろしてきたノレムへ回し蹴りを放つ
左脇腹から撃ち込まれ蹴りの軌道には風が吹き拡がり、撃ち込まれて更に目に見える強大な風が右足より吹き荒れる
声をあげる間すらなく、崩壊した博物館を越えミナールと妹、瓦礫となった馬車も抜け関係のない建物へと激突
博物館と同じく突き抜け、建物内へと入ることはなく、壁を這いずり落ちた
ダメージは蹴りの分だけでよい
「お兄様!!」
ミナールとの戦闘を切り上げ、地に開いた闇の穴へと入り、横たわる兄の近くで再び闇の穴が開かれ彼を掴み引きずりこむと穴は消えてしまう
まだいるかもしれないとミナールは警戒したが、2人は現れることも、気配もなくなってしまっていた
「生きてるな、お互い」
左腕から血を流しミナールの所へ。彼女は痛々しい彼の左腕に目をやり、申し訳なさそうな顔
モトキは察したのかシャツ上に着ているジレで左腕を隠し一言
「どちらかだったなら、こちらになっただけだ」
気にするな、気にしたって仕方ない。あのまま繋がって戦うより良かったのは確かなのだから
痛い目にあったのは自分だけ、それでいい
「お嬢様は、エトワリング家の主人様は・・・タイガがいるから安心はできるだろうけど」
「一応にしないで急いで向かいましょ」