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光ある概念の終日  作者: 茶三朗
巻き込まれの護衛任務
23/217

夜明けは過ぎて陽射し入る 7

河原毛と黒鹿毛の馬2頭は馬車を引き、屋敷へ向け駆ける

フェーナーは窓から頭を出し、走る方向とは反対を、2人の身を案じるも届かず、願うことしかできない


「モトキを案ずる必要はない、なかなかしぶといからな。勝ちはしなくても死にはしない、だが向こうがまだ追いかけてくるならば、俺の腰を上げないと。お嬢様は頭を窓から出さず、屋敷に着くまで・・・」


馬車が揺れた。フェーナーと同じ方を向き、屋根に座っていたタイガは落下、置いてかれてしまう

お嬢様はびっくりした顔でソレンダの名を呼び、指をさす頃には落ちたタイガは起き上がり、猛スピードで走り向かってきていた

馬車に追いつき、屋根へ再び跳び乗るとまた走る方向とは反対を向き胡座をかく。何事も無かった振る舞いの顔


「あははは・・・」


気が楽になった。彼の言葉を信じ、2人を信じよう

最初は父がジョーカーの手紙に記されていた推薦者を信じて、自分もそれを信じてから始まったのだから

ソレンダの膝を借り、横になる、鎧が硬い


「っ!!」


タイガだけ異変に気づいた。立ち上がり、馬車が走る同じ方へ体を振り向かせると映った光景は炎、同時に御者が叫ぶ

燃えて火があがるのはエトワリング家の屋敷

御者は馬車を停止させてしまうが、ソレンダがすぐに窓から頭を出し怒鳴った。焦りの覗く手綱捌きで馬車は進む

ソレンダは冷静に、目的地であった燃える屋敷が目に映ろうとも、屋敷が燃えているとは慌てず、口にはしない


(モトキ、こちらは任せろだがお前は無事でいてくれ)


フリスティンは無言、馬車の急停止とソレンダの怒鳴りに興味と疑問を抱かず

フェーナーはソレンダに問う。彼女は一度深呼吸をし、間を置いてからエトワリング親子に屋敷が燃えていることを告げた

しゃっくり混じりのような声を漏らしはしたが、怖がる様子を見せず何も言わず、主であるフリスティンはやはりまったく動じず


「残してきた使用人達は無事であるように・・・」


馬車は屋敷に近づかせず、離れた位置に停められた

フリスティンとフェーナーを馬車から降りさせはせず、更に馬車から離れここにいるように申すとソレンダに2人の護衛を任せタイガは屋敷へ

一番高い位置にある窓から飛び込み、燃え盛る屋敷内で悲鳴、助けを呼ぶ叫び、人が残っていないかを確認の為、耳を澄ませたり「誰かいるか?」と大声で

返事はなかったが、気を失い倒れている可能性もあるので部屋を一室ずつ回ろうとする。その前に床に手を当て、屋敷を包む炎を一瞬にして鎮火させた


「よし、ではお邪魔しまーす」


最初の部屋から焦げた扉のドアノブに手をかけるがタイガは動かなくなる

頭の中では火の出所と誰が点けたのかが巡っていた

ゆっくりとドアノブを回し、扉を開くが狭く、物が一つも置かれていない部屋、人もいない

捜すまでもなく、次の部屋へ行こうにも足取りは遅い。火を点けた犯人は博物館に現れた2人だとするならばモトキとミナールはやられてしまったのか、逃したのか


(遠くから魔法か火の属性で?2人だけじゃないのかもな・・・使用人達はとっくに避難したことにして戻る選択がいいのか?)


扉の前でドアノブに手をかけた次の瞬間、自分が屋敷に入る際に耳にした窓ガラスが割れる音。火災で割れたかもしれないが、念の為音のした場所へ

フリスティンの書斎室であった。扉を隙間だけ開き、覗くと朝にいた席に誰か座っている、誰かいる


「そこにいないで入ってきたらどうですか?」


言葉に覗くのをやめ扉を蹴り破った

一体何者だと警戒の顔から拍子抜けながらも、驚愕の顔へ

エトワリング家の主であるフリスティンがそこに


「フリスティン・・・さん?いや声だ、声が違う・・・」


すぐに違いに気づき投げかけてみた。彼は俯き笑う

不気味な笑い声は徐々にフリスティン本人の声へ、また徐々に違う声へと、そしてまたフリスティンの声へ


「これでいかがですか?納得していただきご理解を」


手にしたガラスの破片を首に突き刺さすも、血が出ることはなく、喉の傷から皮膚を摘みプレゼントの包装を破く子供のように剥がしていった

フリスティンの顔からにっこり笑顔の青年へと変貌

申し訳なさそうな照れ笑い、変わることのないにっこり笑顔


「はじめまして、貴殿がタイガ様ですね」


握手を求めてきたが手を差し出さない、当たり前である

自分の名を知っているとうことは博物館の二人と同じくジョーカーの命で訪れたのだろう


「手を差し出してくださりませんか、二度と顔を合わせることなどない一期一会かもしれませんのに」


にっこり笑顔の瞳を閉じたままながらも、寂しそうな顔はすぐに戻り、手にしていたガラスの破片を手と手で挟むと白鳩に

白鳩は手から飛び立つも嘴から小さな雨の雫となり青年の手へ

一粒だけ口へ運び、舌でじっくり味わう


「この家の主、フリスティンさんは?」


「フリスティン・・・あははー、御人ならば一週間も前にワイバーンの餌にさせていただきましたよ。あ、でもジョーカー様のことだから贈り物の肉と間違えてお口になさっていらっしゃるかも。ちゃんと獣餌用ですと手紙を添えておけばよかったですね。帰ったら謝罪を述べましょう」


タイガは言葉が出なかった。ジョーカーからの手紙が届いた日よりも前にこいつは、つまり、ここへ訪れてからも博物館でも馬車でも全てこいつだったという真実

ただのジョーカーによるお遊び、それに付き合った3人。相手をさせられた5人


「あははははははは!あははははははは!楽しいねー。エトワリング家の御令嬢誘拐なんてどうでもいいのですよ!ジョーカー様には失敗したと告げましょう」


「告げさせるかよ。お前をここで・・・」


右掌をそっと向けるが彼の周りを青糸が出現し、全身に巻きつかせ姿を見えなくしてから圧縮

小さくなっていき、やがて完全に消えてしまった

ほんの瞬間のできごと、タイガは悔しがりもせず手をコートの右ポケットへ





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