《1日目》青い瞳
優しい人。
それは傷つきやすいから優しいのか。
あるいは傷つけた事を知ったから優しいのか。
痛みを知ったから優しいのか……
傷ついた事がない人はいないし、傷つけた事がない人もいない。逆説的かもしれないけど、人は皆優しくなれると私は信じたい。
きっとその対象が違うだけ。
家族、友人、親戚、知人、知らない人、自分。
全てに優しくなるのは無理だけど、誰かに優しい人は別の誰かにも優しくできるだろう。
金曜日の朝。ルーシーはこの日から数えて7日間だと優輝を待っている間に教えてくれた。
『やっぱり《ifルート》でも優輝のギリギリに登校する癖は治らないのか……』
「わりい! 遅れた!」
「ハイハイ、さっさと行こう」
そんなわけで相変わらず寝癖全開の親友、優輝といつものようにダッシュで教室まで走って行った。
『もしかしたら変わらない日常、とかが僕の願いかもな』
いつもより早く(それでも割とギリギリだが)教室についてからそんな事を考えていた。自分の席に着き、ボケ〜っとしていたら黒髪ロングのもう一人の親友、恵美が話しかけてきた。
「おはよう。昨日の電話、一体なんだったの?」
「あー、うん……なんでもない……よ?」
「怪しい……」
自慢じゃないが嘘は下手な方だ。僕が恵美に追い詰められていると優輝がそれに気づき近づいてきた。
「漢には漢にしかわからんことがあんのよ、なあ相棒?」
「うんうん」
優輝が助け船を出してくれたので乗っかることにした。
「でも優輝がどうとかって……」
「エっ?」
優輝が変な声を出した。優輝は僕と恵美の電話の内容を知らないので何のことか分からないのだ。ボロがでるかもしれない。そう考えたが優輝は僕の予想外の反応をした。
「お前バラしたのか?」
「なにをだ?」
「分かってんだろ……」
僕は本当に優輝の言っている事が分からなかった。これが《ifルート》の優輝と僕が共有している秘密なら《元の世界》出身の僕に分かるはずもない。
「いや、別に恵美にはなにも言ってないぞ」
「ならいいんだけど。そもそもまだお前にも事の顛末を教えてないし」
『ふぅ、なんとかボロを出さずにすんだか……』
「二人だけズルい……」
唇を尖らしてブーブー文句を垂らす恵美。普通に可愛かった。
そんな恵美の背後からヌッと人が出てきた。
「悩みがあるなら先生に相談してみなさい。力になるわ」
「音もなく背後に立たないでください。大魔王」
「昇格してる!」
魔王改め大魔王が恵美の可愛さに釣られてきた。
「で? どんな悩み?」
「いや、別に悩んでませんよ」
「そ、ならいいわ」
今回はすぐに引き下がった。不思議に思った僕は何かの視線を感じて廊下側の窓を見た。
「なるほど……」
なんとそこには1時間目の先生(通称神)が大魔王を睨んでいた。どんだけ警戒されてるんだ、うちの担任は。
『ちっ! いつか出し抜いて必ず優輝に女装させてやる……』
「いや、先生声に出てますよ!」
「えっ! まさか恵美にメイド服を着せることも?」
「「なん……だと……」」
「やめてください、本当に……」
ここでつい想像してしまった事はどうか許して欲しい。僕も優輝も男だ。
一瞬誘惑に負けそうだったがここは先生を止めておこうとした。
「それはさすがにまずいですよ」
「メイド服が許せない? ならば戦争だ」
「メイド服とかそうゆうことじゃなくて……」
「じゃあなんならいい?」
「せめて学校で着ても不自然じゃないものとか」
「ブルマか? ブルマなのか?」
「今は不自然でしょう、それ」
「確かに不自然だ」
いつの間にか先生と恵美のコスプレを何にするか?という話になってしまった。これが男の性か。約一名女がいるが。
「なんで止めるはずの二人が一緒になって話してんのよ! バカ!」
「他校の制服ならどう?いつもと違った雰囲気を楽しめるし違和感もない!」
「スク水なら水泳部員も普通に着てる! しかも今は夏だ! これを着せないてはないだろう!」
「ブルマだって一昔前はみんな履いてたんだ! 昔の良き時代の習慣を取り戻すチャンスじゃないか!」
何故かどのコスプレさせるかを口論してしまった。誰がどの台詞を言ったのかはご想像にお任せします。
「神様、どうかこのバカどもの暴走を止めてください……」
大魔王の策略により裏切りった2人の勇者。暴走した大魔王、絶体絶命の姫、そして、またも奇跡が起きた。
「お前たち!」
「「「ハッ!」」」
こうして大魔王と裏切りの勇者は神の裁きを受けた。これが後に語り継がれる《裏切りの勇者》である。なんの話だコレ。
「必ず……必ずやこの野望、成し遂げて見せるぞ!」
「もっと偉大な野望いだいてください」
お呼びだしをくらった僕と優輝はキッチリと反省し、無事釈放された。
「もう! 次は許さないから!」
「「ごめんなさい」」
恵美に誠心誠意を込めて謝りながら校門に向かった。校門の近ずくと人影が見えた。誰かを待っているようだった。
「おそ〜い」
校門前にいる誰かが呼びかけてきた。髪の毛は長く金髪でアホ毛が立っている女の子だった。声をかけられたことに気付いた優輝は小走りで女の子に向かって行った。
「ごめん。待たしちゃったな。先生に呼び出しをくらっちゃって」
「む〜」
優輝を待っていたみたいだった。僕と恵美はどういう状況か分からなかったので僕は優輝に説明を求めた。
「どちら様?」
「えっと、二人とも会うのは初めてだったか」
優輝がどう説明するか迷っていると女の子は一歩前に出て答えた。
「私の名前は鈴奈。テル君の、優輝君の彼女です」
鈴奈と名乗る彼女の青い瞳はどこかの神様を連想させた。




