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ifルート《あおい空から始まる物語》  作者: 三角
本編《あおかったあの頃の思い出》
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《5日目》鈴奈の家

「鈴奈、ちょっと相談したいことがあるんだけど」


 昼休み、いつもの四人で昼食を食べながら僕は鈴奈に言った。


「ん? 私に相談?」


 鈴奈は黄金のアホ毛を揺らしながら不思議そうに首を傾げていた。ところであのアホ毛はどうにかならなかったのかと僕は今でも思っている。


「《世界》のことでちょっとね」

「なるほどね、分かったよ」


 そこで鈴奈は何かに気づいたようでう〜んと唸った。鈴奈の態度が気になったらしい恵美が言った。


「どうしたの?」

「うん、あんまりおおっぴらに話せる事じゃないしどこで話そうかなって……」

「そんなの相棒の家でいいじゃん」


 僕の家の都合も知らないのに優輝が適当な返事をする。僕の家なんですけどね。


「いや、僕の家は今日は無理だよ」

「どうして?」

「兄が久しぶりに帰ってきてるんだ。疲れてたのか爆睡してるんだよ」

「あ〜それは確かに無理ね」

「諦めよう……勇気と無謀は違う」


 恵美は顔を引きつらして苦笑いを浮かべていた。優輝は少し顔を青くしながらガタガタと震えていた。無理もない。


「……? どうしたの?」


 ただ一人状況が飲み込めていない鈴奈に僕は兄の話をすることにした。


「兄は普段はボケっと人畜無害そうな雰囲気をしてるが寝起きだけは違うんだ。その恐ろしい形相はまさしく鬼……兄を起こしてしまったら最後、その鬼神のような怒号で二時間は叱られる。その怒り様は正直恵美のそれを軽く凌駕している」

「対比対象は私なのか」


 自分が怒ると怖い事は自覚がないらしかった。そりゃそうか。


「二時間……」


 唖然とする鈴奈。さらに恵美が兄の恐ろしさを語る。


「その圧倒的な威圧感と怒号から《鬼神》と呼ばれているわ……」

「二つ名……」


 さらに驚く鈴奈に優輝が《鬼神》の説明を付け加えた。


「特性は《プレッシャー》だ。技を使う時にPPが2減ると言う……」

「それなんてポケ○ン」

「《プレッシャー》を持ってるなんて……もしかして伝説の⁉︎」

「人の兄をポ○モン扱いするなよ。あと伝説以外でも《プレッシャー》持ってるやついるよ。確かに伝説は《プレッシャー》持ってるやつは多いけど……」


 鈴奈と優輝の二人と話してるとどんどん変な方向に話が進んでしまう気がする。二人だけで会話してるところを一度聞いてみたいな。どれだけ話がずれるのだろう。


「で、結局どこで話すの? ついでに私の家は無理ね」

「俺ん家も無理だ〜」


 話の軌道がそれたので恵美が修正した。たしか恵美と優輝の家は無理とのことだった。


「ん〜……じゃあ、その、私の家は……どう?」


 鈴奈が遠慮気味に提案してきた。他の人の家は無理みたいだったのでその提案に乗ることにした。


「お、行けるのか。それじゃあ鈴奈の家にしよう」


 それから放課後、鈴奈の家に行くことになった。メンバーはいつもの四人だ。


「……なんだか彼女の家に行くって感覚じゃないな」

「なんかごめん、優輝」

「いや、そういうつもりで言ったわけじゃないんだ。むしろ変に緊張しなくていいから助かるよ」


 始めて彼女の家にお呼ばれされた理由がコレじゃちょっと残念な気持ちは分かる。


「えへへ〜」


 鈴奈は嬉しそうにニコニコしていた。なぜか彼女の笑顔には周りを明るくするような力があるように感じる。



「嬉しそうだな鈴奈」


 何と無く鈴奈の笑顔の理由が気になったから僕は訪ねてみた。


「家に友達呼ぶの初めてだから、なんとなく嬉しくって」


 鈴奈は中学で引っ越してきたから小学生の頃からの友達がいなかった。いや、確か小学生の時は孤立していたと言っていたか。なんにせよ家に友達を呼ぶ機会が無かっただろうから僕らを家に呼ぼうとした時も遠慮気味だったのだろう。


『小学生の時はともかく今のクラスに鈴奈は馴染めているんだろうか……?』


 自分で言うのもなんだがいつも人の心配ばかりしていた気がするな。もちろん他の人の心配をすることは悪いことでは無いがもっと自分の事も考えたらどうだろうか、とあの頃の自分に言いたい。


「そっか」

「これからはどんどん遊びに行くから覚悟しとけよ」

「うん!」


 元気よく返事をする彼女は嬉しそうに笑った。夢中に喜ぶ鈴奈に恵美は言った。


「ところで……あれ鈴奈ちゃんの家じゃないの?」

「ん? ……あ!」


 恵美が指を指した先には鈴奈の家の表札があった。自分の家を見失うなよ。


「危うく迷うところだった」

「ご、ごめん」


 鈴奈はゴホン、とワザとらしく咳払いをしてから言った。


「ここが私の家だよ」

「へー」


 確か三階建ての屋根が平たいタイプの家だったと思う。駐車場が隣についていて車の種類は…わからないけどナンバープレートが黄色かった気がするから軽自動車じゃなかろうか。そんな事はどうでもいいな。

 僕らをつれて鈴奈は玄関のドアを開けた。


「ただいまー」

「おかえりー」


 返事は若い男の人の明るい声だった。


「お兄ちゃんだ」


 どうやら兄がいたらしい。僕も兄がいたので少し親近感が湧いた。

 しかし鈴奈は兄に対して僕らの家に来ていることを事前に話してなかったみたいだった。そもそも僕の相談に乗るって話をしたのはこの日だったし説明してないのは当たり前のことなんだが。

 そこで鈴奈は僕らの事を鈴奈の兄に伝えた。


「友達来てるからー」

「なに! 本当か!」


 かなり嬉しそうな声で鈴奈の兄は返事をしてくれた。今までに無かったことみたいだし妹に友達ができたことが嬉しかったんだろう。


「あと彼氏もつれて来たー!」


 時々忘れそうになるが優輝は鈴奈の彼氏だったんだよな。全然そんな雰囲気が無かったから忘れそうになっていた。感覚的にはずっと一緒にいた夫婦みたいな感じだったかな。


「なに……? 本当か……?」


 しかしどうやら鈴奈のその言葉は鈴奈の兄には喜ばしいことに聞こえなかったらしい。


「「あっ、コレめんどくさいパターンだ」」


 僕と優輝は口を揃えて言った。

鈴奈の兄は短編『永遠の人生を終わらせる』の主人公です。《別の世界》のですけどね。


だからって特になにも関係ないんですけどね。

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