《2日目》なにがあって付き合ったの?
色々あって遅くなりましたすみません
長時間に渡る恵美の説教の後、僕らは寝ることにした。
「覗くなよ……」
「「ハイ!」」
僕と優輝はビシッと姿勢を正して敬礼をした。その様子を見た恵美は怒り疲れたのかそれとも呆れたのか、ため息をつきながら鈴奈と一緒に部屋を出て行った。鈴奈と恵美は別れ際に笑顔で囁いた。
「「おやすみなさい」」
ガチャ、とドアの音がなってしばらく僕らは黙っていた。何故ならすぐに行動を開始するとバレるからだ。
全然懲りてませんね、ハイ。
僕らはケータイをポケットから出してマナーモードにし、メールで会話する。会話の内容を聞かれるとまずいからだ。
しかしただメールで会話していたるだけだと静かすぎて確実に怪しまれる。
そこで僕らは会話を交えながらメールをした。ついでにメールをしながら会話をするのは割と至難の技なので会話の内容は午前中にノートに書いておいた。
準備万端である。
『そろそろ行動開始するかな』
僕はメールを送信した。そして同時にノートを見ながら会話をする。
「バナナの木って実はただの草なんだよ。その証拠に年輪が無いんだ」
優輝から返信が来た。もちろんマナーモードなのでバイブだ。
『そうだな、さてどうやって覗く?』
優輝も器用に喋りながらメールをしていた。
「そうだったのか。そう言えば下剤と下痢止め、同時に飲んだら下剤が勝つらしいぞ。一応言っておくが良い子は絶対真似すんな。どんな副作用が出るか分からないからな」
「これはマジでダメなやつだから悪い子も絶対に真似しないでね」
今回の覗きは難易度が高すぎる。流石に監視カメラを設置するのは犯罪臭が漂うし、なにより罪悪感が半端ない(風呂を覗くのはOKだ。何の問題もない)。
かと言ってトランシーバーは没収された。二人のいる部屋のドアはどうやって開けても音が鳴るのでそこから覗くのはダメ。
僕らの部屋とベランダは繋がっているがカーテンが閉められてるだろうし。そこで僕は覗き見ることを諦めた。
しかしまだ全てを投げ出すには早い。僕には秘策があった。
『今回は見るのではなく聞くことにする。そこでこんなものを用意した』
僕はゴソゴソと机の引き出しに手をつっこみあるものを取り出した。
「実はドラ◯もんってちょっと浮いてるんだよ」
『タッタラタッタッタ〜、紙コップ〜』
優輝は紙コップの使い方が分からなかったみたいで不思議そうな顔をしていた。
「そうだったのか。まああの重さで地面歩いてたら恐ろしい事になりそうだしな。ついでに体重は129.3kgだ」
また優輝からメールが来た。
『ねえスケベえもん、どうやって紙コップを使うんだ?』
『誰がスケベえもんだ。この秘密道具は壁に押し当てることで真価を発揮するんだよ』
僕は耳に紙コップを押し付けてから、女の子二人がいる部屋のある方の壁に紙コップを押し当てた。そうすると壁から声が聞こえて来た。
『あいつら本当に懲りないわね』
『今回が初めてじゃ無いんだ』
『三度目だよ』
『……すごい執念だね』
『一度も見られたこと無いけどね』
そう、これを使うことで隣の部屋の声を聞くことができるのだ。向こうの状況が分かるのでたとえ怪しまれてこちらの部屋に来られても対処可能、まさに完璧な作戦である。ドヤァ。
とりあえず僕らは寝たことにして静かに声を聞くことにした。
「ソロソロネムタクナッテキタナー」
「ソウダナー、ネルカ?」
「ヨシ、ネヨウ」
すごく片言だが壁に耳でも押し付けない限りは会話の内容までは聞き取れないので問題は無いだろう。
じゃあ今までなんでメールで会話をしてたかって? 壁付近に二人がいてわずかでも疑われるとイヤだから、念には念を入れて。
会話の内容が分からないなら寝ることを宣言する必要が無いって?
こまけぇこたぁいいんだよ!!
そんなわけで僕と優輝は壁にひっつきながらガールズトークに耳を傾けた。
『そこまでして見たいものなのかな?全く理解できないわ』
『でも恵美ちゃん胸でかいしね〜』
『そ、そんなこと無いもん! 普通だもん! 鈴奈ちゃんも人のこと言えないぐらいあるじゃん!』
『……ところで向こうの部屋静かすぎない?』
ヤバイ。鈴奈に怪しまれた。やはり眠る宣言は向こうに聞こえてなかった。しかしここはじっと耐える。下手に動けば殺られる。
しばらく僕らが黙っていたら恵美が大きな声を出した。
『誤魔化すな〜!』
『ばれたか〜』
どうやら難を逃れたようだ。そのあとしばらく二人は笑い合いながらドタドタと音をたてながら少しジャレあっていたみたいだ。
『あははっ!』
『くっくすぐったい……よ! キャッ!』
そんな二人の可愛らしい声を聞いていた優輝は歯を食いしばって悔しそうに呟いた。
「くそ、生で見たい! スケベえもん、何か道具は無いのか」
「誰がスケベえもんだ。残念だけどヤカンしか無い」
「なんでポケットにちっさいヤカンが入ってるんだよ!」
「キーホルダーだよ、ガチャガチャで当たった。シッ! なんか喋り出したぞ」
女子二人は笑い疲れたのか、いつの間にかジャレるのをやめていた。
そしてゆっくりと恵美は鈴奈に質問をした。
『そう言えばさ、鈴奈ちゃんはどこで優輝と知り合ったの? それと、その……なにがあって付き合ったの?』
『え? ああ、そう言えばまだ話してなかったね』
よく訊いてくれた。これは僕も興味があったことだった。いつ二人が知り合ったのか、何故付き合ったのか。僕が興味津々で聞いていると優輝が照れ臭そうにしていた。
そんな優輝の様子を知らずに鈴奈は嬉しそうに話し始めた。
『小学五年生の頃なんだけど……』




