第66話 コラボ予定
「次いつ行く?」
葵が机に頬杖をついている。
「また行きたいですよねー」
桃もすぐに乗る。
「そう何度も魔装金属を取りに行けないですよ」
茜が苦笑する。
「行くなら、次はプライベートですかね」
「俺は行かないぞ」
「えー」
「ケチ」
「ケチではない」
なんで休みまで付き合う前提なんだ。
「仕事しろ」
「昨日ちゃんとしましたよー」
「今日は今日だ」
「厳しいですね」
「普通だろ」
葵がこっちを見る。
「ボス周回したい」
「休みに行け」
「いちじょーも」
「行かない」
不満そうな顔をするな。
「こんにちはー」
詩が何枚かの資料を持って入ってきた。
「何の話してるんです?」
「またダンジョン行きたいって話です」
「昨日行ったばっかりじゃないですか」
「だから次の話をしてるんですよ」
どんだけ好きなんだ、ダンジョン。
「ちょうどよかったです。ダンジョンの仕事を持ってきました」
「え?」
桃と葵が同時に詩を見る。
「コラボの件です。会社で確認が終わりました」
「決まったんですか?」
「はい。今回は三組とコラボすることになりました」
「三組も?」
「週一回くらいなら回せそうなので」
「毎週行ける」
「コラボだからね?」
「分かってる」
本当か?
「日程は?」
「これから先方と調整です」
「どことやるんです?」
詩が一枚目の資料を出す。
「まずは黎明です」
「黎明……あ、この人たち知ってます!」
「知ってるのか?」
「はい。最近、10階層辺りでよく配信してますよ」
桃が資料を見る。
「あ、この剣、初心者シリーズですよね?」
「そうです。盾も使ってくれてます」
「おおー」
「普段から使ってるなら、使い心地も聞けそうだな」
「一条さん、そこ気になるんですね」
「作ったんだから気になるだろ」
「悪いところも聞きたいですね」
「茜さんまで」
「直せるところがあるなら直したいですし」
桃が自分の剣を見る。
「ボロクソ言われたらどうします?」
「そこまで悪かったら使ってないだろ」
嫌なら別の武器を選ぶはずだ。
「次」
葵が二枚目を指す。
「黒鉄です」
「強い?」
「私じゃ判断できないですけど」
詩が資料に目を落とす。
「15階層から18階層辺りで活動してます」
「いい」
「何がいいんだよ」
「18階層」
「まだ行くって決まってないぞ」
「行ってみたいですけどねー」
桃まで乗ってくる。
「新しい階層はワクワクするじゃないですか」
「昨日17階層まで行っただろ」
「採掘しただけじゃないですか」
「ほとんど壁しか見てませんよ」
それはそうだな。
「最後は風花さんです」
「あっ!」
明らかに声のトーンが上がったな。
「有名なのか?」
「有名ですよ! この前も同接すごかったんですよ。コメント拾うのも上手いし、企画も面白くて」
早口すぎるだろ。
「随分詳しいな」
「何回か見てますから。配信の参考にもしてます」
「参考にしてるだけにしては、目が輝きすぎだろ」
「輝いてないです」
「輝いてる」
「気のせいです」
気のせいじゃないだろうな、これは。
「活動階層は10階層から15階層辺りですね」
「楽しみだなー」
桃が資料を眺める。
「桃ちゃん、風花さんのファンなんですね」
「ファンっていうか、よく見てるだけですよ」
「一番楽しみなのは?」
「風花さんです」
ファンだろ。
「順番はまだ決まってません。日程が合うところからになります」
「じゃあ黒鉄から」
「葵ちゃんが決めることじゃないからね?」
「希望」
「希望としては聞いておきます」
「第一希望」
「増やしても同じです」
詩も扱いに慣れてきたな。
「じゃあ、日程が決まったらまた来ますね」
「お願いしまーす」
「早め」
「先方にも予定がありますから」
「今日」
「無理です」
「明日」
「だから無理です」
諦めろ。
「それじゃ、戻りますね」
「お疲れさまでーす」
詩が出ていった。
「コラボ中は普通に探索ですね」
茜が資料を見ながら言う。
「あの方法は使えないですもんね」
「当たり前だろ」
「魔石もちゃんと持ち帰る」
葵も分かってるみたいだな。
「じゃあ、増やすなら別の日ですねー」
「そうなるな」
桃が少し考える。
「じゃあ三人で行きましょうか」
茜が予定を確認する。
「私は土曜日なら大丈夫です」
「私も空いてます!」
「行く」
決まるの早いな。
「15階層ですよね?」
「そうですね」
「ボス周回」
葵が即答する。
「まあ、それが一番効率いいですもんね」
桃も普通に納得している。
「昨日より武器にも慣れてますし、三人でも大丈夫そうですね」
「無理はするなよ」
「分かってます」
「ちゃんと休憩も入れますから」
茜がいるなら大丈夫か。
「じゃあ朝から行きます?」
「早い方がいっぱい回れます!」
「朝から」
三人ともやる気だな。
「お昼どうします?」
「途中で戻るのも面倒ですし、お弁当持っていきましょうか」
「いいですね!」
桃が楽しそうに頷く。
「なんかピクニックみたいですねー」
ダンジョンをなんだと思ってるんだ。
「じゃあ私、おにぎり作っていきます」
「私も何か持っていきますね」
葵が少し考える。
「肉」
「葵ちゃんは食べたいもの言ってるだけだよね?」
「必要」
自分で作れよ。
「一条さんは何が食べたいです?」
「なんで俺の分もあるんだよ」
三人がこっちを見る。
「え?」
「行かないぞ」
「そうでしたっけ?」
「最初に言っただろ」
桃が首を傾げる。
「でも、お弁当あった方が楽ですよ?」
「そういう問題じゃない」
「何がいい?」
「注文取るな」
いつの間に参加することになってるんだ。
「じゃあ一条さんの分は適当にしますね」
「作るな」
「余ったら困りますし」
「最初から三人分作れ」
話を聞け。
「土曜日、朝何時にします?」
「だから俺に聞くな」
完全にメンバーに入れられてるな。




