表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憧れていた異世界転生、転生先はシステムの声!?〜同じく異世界転生した少女とともにこの新世界を生きていく〜  作者: ほさ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/16

新たな特殊スキル

「さっ! 王都まで向かいますか〜!」

ヘインズの重厚な門を背に、鈴音は青空に向かって大きく手を挙げた。

それを見ながら、俺は一抹の、いや、多大なる不安を抱かずにはいられない。

(お前なあ〜……。いくら実力があるからって、右も左も分からない異世界で、徒歩1ヶ月の旅とか本当にできんのか?)

「何を言うんですか! 私、元の世界にいた頃から、動画サイトでキャンプ動画を何度も何度も見てましたからね! イメトレは完璧です!」

ふふんと胸を張る鈴音。

(……はあ)

「なんですか、そのあからさまな溜め息は!」

(……なんでもなーい。ただ、動画を見ただけでリアルキャンプができると思ってる初心者が、どれだけ痛い目を見るかっていう現実を思い出してただけだ)

「むー! あ、そうだ! 溜め息で思い出しましたけど、言い忘れてたことがありました。私、レベルが『5』に上がりました!」

(なにっ!? なんでそれを早く言わないんだ! いつも言ってるだろ、組織の基本はホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)だって!)

「うわっ、急に会社の上司みたいなこと言わないでくださいよ。私、詠太さんと違ってまだピチピチの学生なんですからね」

(はいはい。……で? レベル5になって、何かステータスに変わったところはあるか?)

「いやー、ステータス画面のめぼしい数値には変化なさそうですね〜」

鈴音は歩きながら、俺の共有視界の隅にあるステータスをじっと見つめている。

(そうか……。新しいスキルを覚えたりはしてないのか。まあ、最初から持ってる初期スキルが多すぎるからな、【特殊】以外はな)

「そうですよね〜。他はびっしり埋まってるのに、なぜか【特殊】の項目だけは、詠太さんと意識を入れ替える【操縦交換】一つしかスキルがないんですよね」

鈴音の言う通りだ。あの【特殊】だけは、この世界のシステムとは明らかに異質な、俺たちの「転生構造」そのものに紐づいている気がする。

「……ん?」

不意に、鈴音が歩みを止めて俺のステータス画面を凝視した。

(な、なんだ? 俺の顔(画面)に何か不吉なデバフでもついてるか?)

「なんか……【特殊】のところに【ショートカット】ってスキルが追加されてます……!」

(え? 特殊にか!? 【操縦交換】の下か?)

「は、はい。何でしょう、これ……。お、押してみても大丈夫ですか?」

ウズウズと指を動かしながら、目を輝かせる鈴音。

(お、おう。名前からして危険な爆発系とかではなさそうだし、とりあえずタップしてみろ)

「それじゃあ……そ〜……えいっ!」

視界の中で、鈴音の指が半透明のボタンをタップした。

……。

………。

(ん? 何か起きたか? 身体に変化は?)

「えーと……何も……な、あっ!!」

いきなり耳元で鈴音が大声を上げた。

(心臓に悪いわ! どうしたんだよ!)

「頭の中に直接【ショートカット】の説明が流れてきました……! ええと、戦闘スキルや魔法のスキルを『最大3つまで』なら、ステータス画面を開かなくても脳内で念じるだけで瞬時に発動できるようになるみたいです!」

(なにぃぃ!? そんなめちゃくちゃ便利な戦闘アプデがきたのか!)

「はいっ! これなら、戦闘中にいちいち詠太さん(画面)をタップしに手を伸ばさなくて済みますね! スムーズにカンフーが打てます!」

(だな! タイムラグがなくなるのはデカい。あとは……その3つの枠に、実戦で使うお前の主力スキルを何をセットするかだな)

「やっぱり、【カンフー(武術)】はいつも一番使ってるので確定でセットしたいです!」

(だな。アイリスに貰ったそのチャイナ服の格好にも、見た目的にも一番合ってるしな)

鈴音は今も、あのスリットの深く入った伝統衣装を着ていた。動きやすさの面でも、今の彼女にはこれが最高の戦闘服らしい。

「あとは〜……」

(【魔法】から選ぶか?)

俺が魔法の一覧をズラリと表示すると、鈴音は「んー……」と眉をひそめた。

「どれがどれくらい魔力を消費するのか、いまいち表記が曖昧でわからないんですよね〜」

(だよな〜。ゲームみたいに『消費MP:10』とか書いてくれれば楽なのに。名前的に、初級っぽくて燃費の軽そうなやつはないか?)

「そうですね〜……。【ファイアボール】とか、【ウォーターボール】とか、その辺りの球体魔法ですかね?」

(うわあ。なんだか、テンプレすぎてめちゃくちゃ弱そうだな……)

「ですよね〜……。あっ!」

(ん? また何か実用的なやつ見つけたか?)

「良い魔法見つけました! 【転移】です!」

(【転移】だって!? 空間跳躍かよ、めちゃくちゃ便利だな! それがあれば1ヶ月の王都旅も一瞬……いや、どれくらい転移できるんだそれ)

「ちょっと今、実験がてら使ってみます?」

(うーん、周囲に街道しかなくて魔物の気配もなさそうだし、一発テストしてみるか!)

「はいっ! じゃあ……【転移】!」

鈴音が画面の該当魔法をタップした瞬間――ピイイイン! と彼女の全身が青白い光に包まれ、次の瞬間、パッ! とその場から鈴音の姿が消失した。

――ピイイイン!

消失した時と全く同じ音がして、鈴音の身体が再び出現する。

「おっ? 成功しました! 浮遊感すごいです!」

(おお、成功だな! で、距離は……あれ?)

俺が周囲の景色を確認すると、鈴音が元いた場所から、わずか【10メートル近く】しか進んでいなかった。歩いても数歩の距離だ。

「こ、これだけですか……」

鈴音がガックリと肩を落とす。

(一応聞くけど、狙ってもっと遠くに行こうとしたんだよな?)

「は、はい。一応、王都の方向を見据えて『行けるだけ一番遠く!』って強く念じながら発動したんですが……」

(なるほどな。レベル5の魔力量じゃ、さすがに長距離のワープは無理ってことか。……だが鈴音、がっかりするな。その魔法、ショートカットの2つ目にセットするんだ)

「え? こんな短距離ワープをですか?」

(ああ。戦闘において、たった10メートルでも『相手の死角に一瞬で回り込める魔法』なんて、文字通りのバケモノ技だ。さっきのゼノン戦みたいな乱戦で、めちゃくちゃ重宝するぞ!)

「あ……! たしかに、攻撃を避けた瞬間に相手の後ろに転移してカウンターとか、ラノベの強キャラっぽくて憧れます! わかりました、じゃあ2つ目は【転移】で!」

(よし。残るはあと1つか。無難に【回復】系にするか?)

「回復! 旅先で怪我した時に使えたら便利ですよね!」

鈴音が俺の視界をスクロールしていく。

「あっ、これとかどうですか? 【ミニヒール】です!」

(おお、名前の頭に『ミニ』ってついてるし、魔力もほとんど使わなさそうだな。いいんじゃないか?)

「じゃあこれで3つ目登録完了です! よおし! これで王都までの冒険、頑張るぞお!」

拳を掲げてやる気満々の鈴音に、俺は少し声を低くして話しかけた。

(ところで、鈴音。さっきからずっと喋りながら歩いてきたけど……気づいてるか?)

「……ふふ、もちろん気づいてますよ。【探索】はバックグラウンドで常に脳内に流してますからね。……魔物でしょうか? 完全に囲まれてますね」

(ああ。かなり低級な足音だが、じわじわと距離を詰めてきてるな)

「……どうします?」

鈴音が小声で尋ねる。

(あっちから仕掛けてきてからでいいだろ。無駄な戦闘は極力避けて進みたいしな)

「……わかりました。……ん? 待ってください」

(どうした?)

「ここからかなり先、街道を外れたところに……人の集団の反応があります。……村? ですかね」

(村だって? 街道沿いにそんなのあったか。……おい、このままこの背後の魔物たちを引き連れてその村に駆け込んだら、不味くないか?)

「いや、違うんです。どうにも、その村? のほうにも、すでに別の魔物の反応が出てるんです。それも、かなりの数です……!」

鈴音の声が緊張に強張る。

(何? もしかして……)

「……村が、今まさに襲撃されてるかもしれません!」

(……よし、急ごう!)

「……わかりました!」

鈴音は地面を強く蹴り、街道を外れて森の奥へと走り出した。

「――わっ、なんか、体がすごく軽いです! 私、足が速くなったかもしれません!」

リュックを背負ったまま、風を切るようなスピードで疾走しながら鈴音が叫ぶ。

(おそらく、レベルが上がって身体能力の基本値が上がったんだな。荷物を持っててそのスピードは完全に超人だぞ)

「後ろの奴ら、必死に追ってきてますね! このまま村まで引きつけて、まとめて殲滅します!」

(おう! 初アプデの性能テストだ、ハデにやれ!)

木の隙間をすり抜けながら少し走ると、やがて粗末な柵に囲まれた小さな集落が見えてきた。

「あっ! 見えてきました!」

(ああ、それと同時に……前方の奴らのお仲間もお出迎えだな!)

集落を取り囲む頼りない木の塀。その壊れた入り口から、棍棒や錆びた短剣を持った醜悪な緑の肌の魔物――【ゴブリン】たちが、ゾロゾロと這い出てくる。

鈴音がそのゴブリンたちの前に立ちはだかると同時に、背後の森からも、追ってきたゴブリンたちがゾロゾロと姿を現し、退路を断つように包囲網を形成した。

前後に数十匹。囲まれた集落の奥からは、人間の悲鳴も微かに聞こえてくる。

(絶好のテストステージだな。――じゃあ、新スキル【ショートカット】の力、見せてもらいましょうか!)

「はいっ! ――いきます!」

チャイナ服の裾を翻し、鈴音は新しくセットした脳内のコマンドへと意識を集中させた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ