帰郷332
「救助はしないんですか?」
「今の状況じゃあ「する」も「しない」も判断出来無い。落下していく鳥かごは、物理的に止められない。出来るのは落下してからの救助、落下ポイントを事前に制圧するとかだな」
「鳥かごは、落下ポイントは制御出来ないんスか?」
「鳥かごは浮いてるは浮いてるんだけどな……宇宙にある鳥かごを吊っている物体が、遠心力で外に飛び出そうとしているのを地球の重力が……バイクレーサーがカーブでバイクを横に倒しても、重量と重力に引っ張られて倒れないだろ。バイクが直進する前への力と、下へと引っ張る重力が均衡して進むんだ。それで浮いてる「状況」を造っているのが鳥かごだ。鳥かご自体には浮かぶ能力は無い。最終的には、宇宙に浮いている物体から数十年単位でワイヤーを伸ばして地上に降ろすから、落下ポイントの制御というのは、ほぼ不可能だ」
「……そうなると、敵が降りる速度を決められるという事ですか」
「あぁ、中の人間が死んで良くて、施設も壊れて良いのなら、すぐにでも地上に降ろせる」
鳥かごには自立して空を飛ぶ機能は無い、襲撃を受けて鳥かごを吊り上げている物体を掌握されてしまったのだろう。
「敵がどう考えているかは分からないが、止めるにしても、いきなり紐を握るようには出来無い。数ヶ月掛けて落下を止めないといけない……鳥の中がどうなっているかは分からねぇが、戦場になっているんだろうな」
「でも……僕達は一時的とはいえ勝ったじゃないですか?何でそんな事に?」
「勝った……確かに私達はな。だが全体で見た時、私達の勝利というのは局地的な勝利の可能性がある。今回の件は、世界中で勃発している。やられる所は出るだろうな」
地上での戦いは火内と初実、D兵器があったからこそ早期決着が成す事が出来たが、全てがそう、上手くいく訳では無い。




