帰郷319
「子供と言っても、軍学校に通っている学生ですからね。規律はしっかりしています」
「そのようなご謙遜を、リディ様の教育の賜物と拝見します」
「本人達が優秀なだけですよ」
子供達が戸惑わずにいられるのは、リディが入れ知恵したからと突いてくるが、当の本人であるリディは眉一つ動かさない。
ちょっとした会話の中で、小癪にフックとアッパーを織り交ぜて攻めて来たが、リディの想定範囲内だった。
「少々長話をしてしまいました。皆様をご案内致しますので付いて来て下さい」
初老の男性が踵を返して先を歩き出す。
「忘れるな火内、お前はドラゴンになれる。いざとなれば一個師団の兵力になり、何処にだって行ける……強さは余裕になる。怯えも戸惑いすらもお前には無力だ」
「はい」
相手のペースには乗らなかったが、付いて行かない訳にはいかない。
付いていくだけの行為だが、相手に主導権を握られているのは間違いないが、リディは火内に、心の余裕を持たせる為に今一度、魔法の言葉を投げ掛ける。
幼い子供に手練手管の会話術は難しい、普通の幼い子供なら、大人というだけで言い包められてしまうだろうが、火内の圧倒的な力を前にすれば、どれだけ偉い大人であろうと身を震わせる。
「さぁ、行きな」
「はい」
火内を前にして、リディが後に着く。
それは火内自身が前を歩かないといけない事を教え、それと同時に後盾に自分が付いていると示唆している。
初老の男性に連れられてフライマンタの外に出ると、男性達が談笑をしていたのだが、
「君が、核露君かね」
「我々は、核露君の事を待っていたのだよ」
核露を見た途端に、談笑で歪んだ笑みが核露に向けられる。
「こらこら、彼を「核露」君と呼ばずに「火内」君と呼びなさい」
「どういう事ですか?」
「悪ふざけをして申し訳無かったね。私も彼等と同じ狢の穴だよ」
自分の事を案内してくれた初老の男性が、談笑していた男達の輪の中に混ざる。
(とんだ狸だ……たばかりやがって……)
欺かれたリディが内心で笑う、自分の頬にフックがヒットした事に。




