1話 君がいる
新作ちゃんスタートですー
時間空いたのは精神の方なんですけど、、
頑張ってやります
遅い」
改札を抜けた瞬間、小さな声がした。
顔を上げると、美月が立っていた。
少しだけ眉を下げて、でも怒っているわけでもなくて、ただいつもの場所で、いつものように待っている。
「ごめん、ゼミ長引いて」
「知ってる」
そう言って、美月は当たり前みたいに俺の鞄を持った。
「重いんちゃう?」
「大丈夫やって」
軽く笑う。
その笑い方が好きだった。
派手じゃないのに、見ていると安心する笑い方だった。
「ほら、電車来るで」
袖を軽く引かれる。
昔からそうだ。
手を繋ぐわけでもなくて、腕を組むわけでもなくて、でも離れない距離で隣にいる。
それが、美月だった。
電車に乗って、並んで立つ。
美月は自然に俺の肩に寄りかかる。
「眠いん?」
「ちょっとだけ」
「昨日遅かった?」
「……うん」
言いながら、美月は俺の袖を掴む。
眠いときの癖だった。
「無理せんでええよ」
静かな声でそう言う。
俺より細い指が、少しだけ力を込める。
「悠真は頑張りすぎやねん」
「別に頑張ってないって」
「頑張ってる人ほどそう言う」
美月は目を閉じたまま言った。
それから少しだけ笑って、
「うちがおるから」
と続けた。
何でもない言葉だった。
でも、そのときの俺にはそれだけで十分だった。
美月がいれば大丈夫だと思っていた。
本当に、そう思っていた。
——あの日までは。
「今日さ」
電車を降りたあと、美月が言った。
少しだけ間があった。
ほんの一瞬。
でも、いつもなら絶対に空かない間だった。
「ご飯、やっぱり無理かもしれへん」
「え?」
「ごめん。ちょっと用事できて」
「そっか」
「ほんまごめん」
美月はちゃんと俺の目を見て言った。
でも、そのあと少しだけ視線を逸らした。
今まで一度もなかったことだった。
「じゃあまた明日」
「うん」
「ちゃんと帰ってな」
「帰るよ」
「連絡して」
「するって」
それでも美月は少しだけ立ち止まっていた。
何か言いかけて、やめたみたいに。
それから、小さく笑って言った。
「……ほなね」
その背中を見送ったとき、
理由もなく思った。
あれ?
って。
何かが、少しだけ違った。
でもそのときの俺は、
それが何なのか分からなかった。
溺愛関西弁っていいよね笑




