6、最終章 カエルちゃん達の活躍 青と緑と茶色の狭間で
「あーあ、やっと終わった!
ご迷惑、おかけしました。」
ローン返済終了の書類が届いた時は
本当に嬉しかった。
やっと、終わった…それが、実感だった。
感無量だった。
ダンナに、頭を下げた。
私のローンの事を知りながら
一緒になってくれた。
彼の少ない給料の中から工面した。
私もパートで働いだ。
しかも、後に…
ダメ元で、過払い金の事を弁護士事務所に相談した。
CMで、やっていたのを姉が聞きつけたのだ。
姉は弁護士事務所に電話をし予約までしてくれた。
更に、付き添いまでしてくれたのだ。
ありがたき事この上ない。
もしもと、思っての相談だったが…
ななっ、なんと、返ってきたのだ。
十数万円が…
もちろん、弁護士さんの御手柄なのだが…
姉に心から感謝した。
お金が返ってきた事もあるが
それ以上に愚かな妹を気にして
行動してくれた姉の心根に感謝した。
ありがたいと思った。
そして、私は何故か、財布の小銭入れコーナーを開き
「カエルちゃん!ありがとう!」
…と、こちらにも、思わず、お礼を言ってしまった。
もちろん、カエルちゃん達は
ここで佇んでいただけだ。
良い仕事をしたのは、弁護士の方達と、私の姉だ。
しかーしっ!
この、カエルちゃん達が
このお財布に住み始めた頃から
運気が上向きに急上昇し始めたことは
否めないのだ。
ダンナは、転職先でなんと!
数ヶ月で、主任に、抜擢された。
仲良くなった人の推薦が、ものを言ったらしい。
主任手当も付いた。
基本給自体が一般的企業の、それだったので
経済的にも、安定した。
普通、最低賃金で社員を賄おうなどと
企ててはならないのだ。
それは、あくまでも、目安なのだから…
今は、その最低賃金も随分上がったが
あの頃、よくあれで生活できてたと驚くばかりだ。
貯蓄も、少しずつできるようになった。
以前は必死で、節約しても赤字になったり
中々、お金を貯める方向には行かなかった。
それが、自然に貯まるようになったのだ。
基本給が上がった事も、大きな理由だが、
ボーナスも出るようになった。
これは、相当大きい。
ボーナスで一気に、ジャンプアップできる。
それと、物欲が失せてしまった。
遊び歩いていた友人達も皆、家庭に入り落ち着いた。
夜な夜な出かける事がなくなれば
人の気を引く為のおしゃれ服はいらなくなった。
今、愛用している服は
安くて良いもの系のシンプルなものだ。
ブランド嗜好は一切なくなった。
逆に、気恥ずかしいかも、知れない。
バッグだけブランド物などの着こなしは…
生活スタイル自体が変わったのだ。
コロナ以降、それは、顕著かも、しれない。
ミエを張る事がなくなった。
人の目を気にする事がなくなった。
傍若無人に、振る舞うと言う事では、ない。
自分らしく、生きられるようになったと言う事だ。
人の目や批判を気にして、自身のやりたい事を
躊躇しなくなったと、言う事だ。
それが、オバさんライダーにも、繋がるのだ。
その歳でっ!
危ないわね!
雨の日どうするのよ!
そんな数々の懐疑的な言葉にも…
めげず、動じず、自身の思いを貫けるのは
これが好きだと言う思い….信念があるからだ。
自分が思う面白い!…をやってしまおう。
人の目など、気にせず、やろう!
そんな、思いがあるからだ。
また、コロナなみたいな事が起きて
色々な事が制限された時
結局、自分自身の指針になるのは
自分自身の思いだけだからと悟ったのだ。
やりたい時に、やれる事を、やれるだけやる。
後で、あの時、やっときゃよかった!
…と、後悔しない為、今、それを、やっているのだ。
お土産屋さんで蛙の小物を手に入れてから
カエル系のマスコット人形に
どうしても目がいくようになった。
擬人化したカエル人形など、探したら結構あるのだ。
寝転んだカエルの箸置きとか
バッグに下げるキーホルダー人形とか…
後はガチャポンのリアル系などだが
こちらは、迷彩模様や毒持ち系で
まさに、ドクドクしくてグロテクス…
そちらは、ちょっと苦手だ。
やっぱり、カエルは
雨蛙だよ!
そして、見つけたのだ。百円ショップで…
また、百円かとも、思うが、居たのだよ!
薄緑の雨蛙ちゃんが…しかも、吸盤付きだ。
硬質ビニル系だが
昔CMに出ていたカエルちゃんによく似たヤツだ。
愛嬌が合って、ホントにカワイイ!
こりゃ!嬉しい事、この上ないよ!
通勤のお供が、できたのだ。
この吸盤で、塩ビ風防に付ければ
見事、道連れ、旅の友の完成だ。
それに、こちらのカエルちゃんには
私自身で意味付けをしている。
財布のカエルちゃんは、お金が帰る!…だったが
バイクの風防のカエルちゃんは…
帰るは、かえるでも、
「家に帰る!」
…の、方だ。
無事に家に帰る。その為に見守ってくれているのだ。
脇にピッタリ引っ付いて
私の事を見てくれているのだ。
あの、大きなお目目で…
やはり、乗り物は危険を伴う。
バイクだけでは、ない。
車も、自転車も、同じ事だ。
どんな便利な道具でも、使い方を誤れば
凶器になりかねないのだ。
無理せず、飛ばさず、車間距離。
これは、基本中の基本だ。
私は、それだけは、絶対、守るようにしている。
心掛けている。
車の、後ろにピッタリ引っ付いてるバイクを
たまに見かける。
煽っているのか
抜き去るチャンスを狙っているのか、定かでないが
衝突すれば、絶対、バイクが負けるのだ。
前車が急ブレーキをかければ、一巻の終わりだ。
なのにやってる。
ダサいとしか思えない。
みんな家族は、心配しているのだ。
イメージ的に、バイクは車より危ない!
それは、払拭し難いものがあるのだ。
ならば、その事を、必死で、説明するより
毎日、無事で帰る事。
それを、貫き、家族を安心させる事。
それしか、ないのだ。
それが、一番大事な事なのだ。
レース気分のライダーよ!
公道はレースコースじゃないよ!
ほどほどにしておくれ!
私は巻き込まれたくないよ!
事故にも、ライダーへの冷たい視線にも…
一緒くたに、されたくないんだよ!
だから、私は、車だけじゃない!
アンタら暴走ライダーとも
距離を取りたいんだ。
果てしない車間距離観をねっ!
よろしく頼むよ!
私は、出掛ける時に、玄関で脱いだスリッパを
玄関ドアと反対方向につま先を向けて置く。
スリッパ立て、などと言うお上品な物はないので
綺麗に揃えて壁際に寄せて置く。
帰宅した時に、スリッパを履きやすいと言う
利点だけではない。これは…
「私は、ちゃんと、帰ってきますよ!」
…と、言う意思表示だ。宣言だ。
出掛ける時点で
「きっと、帰ってくるから…
無事に帰ってくるから…」
…と、願掛けしている訳だ。
これが、毎朝のルーティンだが
何となく始めた事ではない。
初めから、そう言う思いで始めた事だ。
家族の事を思い、娘の健やかな成長を願う。
そうなれば
私は、絶対、無事に帰ってこなければならない。
そんな、切実な思いで始めた事だ。
単なる思い込みかもしれないが
もし、これをやめたり、怠ったりして
帰ってこれなかったら
事故にあったり、災害に見舞われたら
そんな事を思うと…
怖くて、やっぱり、これは、やめられない。
だって、無事故無違反で
今まで、やってこれたんだよ!
ゴールド免許だよ。
ペーパードライバーじゃないのに…だよ!
毎日、あくせく働いて
通勤の為にバイクを走らせている。
それでも、違反もなけりゃあ…
事故も起こしてないのだ。
ただ、とばっちりを喰らうのだけは、嫌だよ!
いきなり目の前を右折するヤツ!
脇道から飛び出してくるヤツ!
こっちが急ブレーキ掛けな、いかんような
運転だけは、やめとくれ!
わかってる?一昨日の朝のアンタだよ!
ちなみに、スリッパの色も緑だ。
以前は、好きな色は?と聞かれたら
青!と、答えていたが
今は、緑だ。
残念ながら、カエルちゃんの影響ではない。
これは、某神社の近くの苔寺と称されるお寺の
庭園を拝見してからの変化だ。
これも、あの神社繋がりだ。
ここの庭園は自然の景観のようでありながら
人が創り上げ配置した。
樹木、石、土、白い砂の妙。
そこに、自然が、手を加え、織りなすハーモニーが
完璧に両立、調和している空間だ。
私達家族は、お参りの度に、ここを訪れる。
縁側の手すりにもたれて、庭一面だけでなく
木々や庭石まで、びっしり生えた苔を眺めて
うっとり佇むのだ。
完璧、完全な癒やし空間が
だだっ広い箱庭のような、この場所に存在するのだ。
今は、ここも、見物客が増えて、
あの頃のように、ゆっくり、まったりなど
できなくなってしまったが
この、心に、しっかり脳裏に焼きついてますよ!
あの、鮮やかな緑。
でも、目に優しい抹茶色みどり。
あの、苔の微妙な緑の色彩は見事としか言えない。
庭園の一番奥は
林が、なだらかな山のようになっている。
これも、土地の傾斜をそのまま生かしたものだ。
それが、日中の多くを、日陰にしてくれる事で
この、苔の生育を助け、繁栄させ、
生かし続けている要因なのだ。
しかし、今は、茶色が好きと言う節操のなさだ。
ダンナには言えんが、私は結構、浮気性なのだ。
いつも、新鮮な感覚を欲している。
飽きっぽいし、目移りばかりしている。
一度、気にいったら、長く愛でるが
そんな気持ちも、時と共に褪せてくる。
恋愛感情と似たようなもんだな。
青は天性から好きな色だ。
緑は苔庭が、きっかけで好きになった。
茶色は緑に飽きて、ふと気づいて
ああ、茶色も良いじゃん!と、浮気した色だ。
しかし、緑は服からバックまで
アンタはカッパか!雨蛙か!と、言われる程
全身、緑だらけだったのだ。
そりゃまあ。いつかは飽きるでしょう。
空と海の青と、木々や草原の緑
そして大地の土色の茶色。
自然の三大色を好きなのだ。
まあ、良いのじゃないですか!
明日も、バイクを走らせる。
きっと、帰ってくるよ!
カエルちゃんに見守られて!
安全運転第一!
その意識、あってのお守りだ!
終わり




