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夢幻泡影 ─むげんほうよう─  作者: まみや ろも
9/17

能力

 津村の持つ紐は真っ直ぐに声の方向。

 つまり、津村の背後に立っている、長く黒い髪の少女へ伸びていきます。


 その紐の先端が少女の身体を捕らえようとした時、突然目の前に。

 流と津村の立つ丁度真ん中に黒髪の少女が、一瞬にして現れたのです。


「つまらん真似しよって!!『紳士的な狩猟(キャッチ・アンド・リリース)』」


 津村は大きく腕を振り、左右から少女を捕らえようとします。

 紐は、まるで意志があるかのように少女の身体に巻き付き絡めとります。


「ま、ええわ。いい加減トークも飽きてきたところやし。あんたが何者か知らんが、そろそろバトルシーンと行こか」


 かなりの強さで絞められているかに見える少女ですが、それでも彼女は表情ひとつ変えず。それどころか、うっすらと微笑んでさえいます。


「申し訳ないけれど、もう少しお話しを続けさせていただくわ」


 その声も、恐らくは普段の通り。

 そして、信じられない事に、先ほどと同じく津村の背後から聞こえたのです。


「もういいわよ。『もうひとりのわたし(ドッペルゲンガー)』」


 その一言で、紐に捕らえられた少女の姿がぐにゃりと歪み、ふっと消えてしまいました。


「なんや、そういう事かいな」


 獲物が消え、地に落ちた紐を見て、津村は諦めたように両手を降ろします。


「降参や、降参。トークでもなんでもしてやるわ」


「理解が早くて助かります。ついでに、敵意が無いことも分かっていただけますよね?」


「わかっとる。本体の方を囮にするとか、とんでもない女やわ」


 このあたりでやっと、流の頭が追いついたようです。


「つまりあれですか?最初に声をかけたのが本体で、攻撃される寸前にもう一人を出したって事ですか?」


「いや、今更そんな事言われてももう遅いわ」

「相変わらずのんびりしてるのね、流くんは」


「え?なんで俺の名前を? ……って、あなたはクラス委員の天ノ河(あまのがわ) 織姫(おりひめ)さんじゃないですか!!」


「『もうひとりのわたし(ドッペルゲンガー)』」


 叫んだ途端、流の後ろに現れたもう一人の天ノ河 織姫さんによって、後頭部が凄い音を立てて殴られました。

 叩くとかいうレベルではありません。

 文字通り、力いっぱい殴られました。


「何度も言いますが、流くん。私の事は委員長と呼ぶようにと何度も言っているはずです。あと、そこの貴方、気の毒そうな目で見たいでいただけます?別に私はこの名前が嫌いな訳では全然ないんですのよ」


「いや、なんて言うか」


 そこまで言いかけて、賢明にも津村は何も言わない事にしたようです。

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