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我が家に落ちてきた侵略宇宙人が、日本の〇〇に屈服した件について  作者: 紺木羽ノ歌


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3/3

時給1,100円の血搾契約に屈服


「サクラ! 朗報だ! 私の卓越した頭脳とカリスマを惜しみなく注ぎ込んだ『至高の契約書』が完成したぞ……っ!」

四畳半のこたつで、アシュさんが毛筆で書かれた白紙の用紙——コンビニの履歴書を誇らしげに掲げた。

灰色ジャージの袖から覗くその手首が無駄に美しく、流れるような毛筆の達筆さが無駄に神々しい。

「……どれどれ? 『志望動機:全銀河を統べる資金源の確保、ならびに壊滅した室外機の弁償金および100円玉の無制限召喚』……って、落ちる気ですか!?」

「フッ、馬鹿め。我が才能を隠す必要などない。明日、近所の『メガストップ』なる補給拠点の最高権力者(店長)と面談を行う!」

「面接に行く服装、それ(ジャージ)で大丈夫ですか……?」

翌日。アパートの目と先にあるコンビニ『メガストップ』の事務所で、店長(50代・優しそうなおじさん)は震えていた。

目の前に座るのは、ダサい灰色ジャージを着ているにもかかわらず、尋常じゃないオーラとダダ漏れの色気を放つ超絶美青年。

「え、えーっと……アシュタロト……さん? 履歴書の『職歴』欄の『銀河帝国十三艦隊・総司令官』というのは……?」

「文字通りの意味だ、店長とやら。私を雇えば、この拠点の物流と売上は3日以内に全銀河規模へと拡張されるだろう」

「あ、はぁ……。じゃあ、まずは『レジ打ち』と『接客』からやってもらおうかな……」

アシュさんの無駄すぎる顔の良さと、圧倒的な威圧感(※本人は超真剣)に気圧された店長は、なぜかその場で採用を決めてしまったのだった。


説明しよう!

コンビニのレジ、それは時給1,100円という対価と引き換えに、地球の無数の物資を瞬時に決済・管理する『漆黒の自動精算機』である!そして、バーコードのスキャン、ホットスナックの調理、宅配便の手配から公共料金の決済まで、秒単位で押し寄せるマルチタスクの嵐である!


全銀河を統率した天才司令官アシュさんにとっても、この過酷な労働環境はまさに血を搾り取られるほどの血搾契約(バイト)であった!

「い、いらっしゃいませ……! 地球の一般市民よ、我が陣地へようこそ……っ!」

レジカウンターに立つアシュさん。

客が差し出してきた1本30gの『うんまいぼう』に対し、アシュさんは慎重に手元の光線銃(バーコードリーダー)を構えた。

(ピッ♪)

「〜〜〜〜〜ッッ!? なんだこの光線銃は……ッ!? 物体の表面に印字された暗号(バーコード)を一瞬で読み取り、上のディスプレイに『12円』と瞬時に表示させたぞ……!? 帝国技術局の会計AIより処理速度が早いだと……っ!?」

「アシュさん! 感動してないで『12円になります』って言ってください!」

「む、むう……っ! じゅう、12円……になります……っ!」

客がお釣りなしで100円玉を1枚差し出す。

アシュさんは震える手で100円玉を受け取り、自動精算機に投入した。

(チャリン……ジャラジャラッ! 88円)

「な……なにぃぃぃぃっっ!? 機械が勝手に硬貨の金額を計算し、正確な釣銭を吐き出しただと……っ!? なんという精密な自動演算システム……っ! 地球人は会計の計算すら機械に任せ、己の脳を使わぬというのか……っ! 恐ろしい……恐ろしすぎる文明だ……っ!!」

「アシュさん、レジの前で悶絶しないで! お客さん困ってますから!」

さらに、次々に訪れる地球人(客)たちの容赦ない要求がアシュさんを襲う。

「温めてください」

「なっ……!? 『温め』だと!? このプラスチック容器に入った米と肉を、あちらの箱(電子レンジ)に入れ、マイクロ波で分子を振動させて加熱しろというのか!? わずか1分でホットミールを錬成するだと……っ!?」

「メガチキ1個」

「メガチキ……!? 什器の中で黄金色に輝くあの高カロリー肉片か……! 待て、油の香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる……ッ! 喰いたい……今すぐ私がこれを喰いたい……っ! なぜ売る側の私が指を咥えて見ていなければならんのだぁぁぁ……っ!!」

「アシュさん! 耐えて! それ商品だから!」

(数時間後)

「……う……ううっ……」

バイト初日を終え、四畳半の我が家に帰宅したアシュさんは、こたつの中に崩れ落ちて号泣していた。

「お疲れ様です、アシュさん。はい、今日の時給4,000円分と、メガストップの店長から『初日お疲れ様』ってもらった廃棄のメガチキ(ホントはダメ)です」

「サ……サクラぁぁぁ……っ!!」

アシュさんは涙目でメガチキの袋を抱きしめ、ガバッと顔を上げた。

「労働とは……時給1,100円を得るということは、これほどまでに精神と肉体を削る『血搾りの契約』だったのか……っ! 1分ごとに『いらっしゃいませ』と頭を下げ、目の前の美味しそうな肉を耐え忍び、精算機の『ピッ』という電子音に支配される……っ!」

「まあ、バイトってそういうものですからね」

「だが……(ハミッ)……んおおおおっ!?? この『メガチキ』という肉……衣がサクサクで、中から溢れ出す肉汁が凄まじい……っ! 自らの労働によって勝ち取った食糧は、なぜこれほどまでに美味いのだぁぁぁ……っ!!(涙)」

泣きながらメガチキを頬張り、1,000円札4枚と100円玉4枚(※室外機の修理代とガチャ代)を大事そうに胸に抱きしめる元・覇王。

「……サクラ」

「何ですか?」

「私は明日もあの『メガストップ』へ赴く……! 漆黒の自動精算機を完璧に使いこなし、時給1,100円を貪り尽くして見せる……っ! これもすべて、黄金のヘラクレスオオカブト(ガチャ)を手に入れるためだ……っ!!」

「結局ガチャのためかい!」

こうして、地球の労働システム(時給1,100円)に完全敗入・屈服した元・覇王アシュさんは、立派な「アルバイト店員」としての第一歩を踏み出したのだった。


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